第12話 『校長永遠にグッナイ大作戦』

「えー、ではただいまよりー、『校長永遠にグッナイ大作戦』を始めまーす」

「いや、ちょっと快眠させるだけですよ部長。それじゃ永眠です」

「部長の考えた作戦に何か文句でもあるのか?」

 これ以上構ってられるか。とりあえず無視だ無視。ここで乗っかかると、また話が進まなくなる。ただでさえ時間がないというのに、これ以上を無駄にするわけにはいかない。

「……とにかく、校長にぐっすりと寝てもらう方法ってあるんですか?」

「んー……そうだなぁ」

 ガサゴソと、部長は自身のベッド周りを探る。発明品やらぬいぐるみやらが散らばっているせいか、彼女自身でもどこに何があるのかわかっていないように見える。

「お、これだ」

 しばらくして、部長が一つの小瓶を見つけた。ガラス製で、中身は見えてるんだけど、どうにも怪しい。青い。ブルーハワイのシロップみたいに青い。自然由来の液体には見えない。

 そんな得体のしれないものを、部長はこれ見よがしに見せつけてくる。

「それは?」

「いやー、面倒だからさ。スパッと眠りにつく薬でいいかなって」

「スパッと」

「そう、スパッと」

 ハッキリとは言っていないけれど、絶対にダメな薬だということだけはわかった。が、こんなものばかりが部長のベッドにはわんさか眠っているのだろう。改めて恐ろしい。

「もっと、なんかこう……優しいものとかないですか」

「んー、そうだなぁ」

 またしても、宝物庫きけんちたいから何かを掘り出そうとしている。正攻法でなんとかしたいところなのだが、側近君がこの場にいる時点で部長の発明品を利用することは確定しているだろう。「部長の発明が役立たずとでも言うのか!?」とか言って暴れだしそうだし。

「おー、これとかは?」

「飴……ですか?」

 取り出したのは、ソーダ味の飴にそっくりな何かだった。だがしかし、部長が出してくる時点でそれはない。

「そー、睡眠を促進する成分ぎっしりだからすぐ寝れるはず」

「確認しますけど、それって危なくはないですよね?」

「……」

「ねぇ!?」

 却下だ却下。部長と側近君が許しても、俺が通さない。それで校長に何かあったら退学どころの騒ぎでは済まなくなる可能性だってある。こんな巻き込まれる形で社会からも追放なんて死んでもごめんだ。

「もぉ、わがままだなぁ……」

「わがままでもいいですよ……」

 反論するのも疲れる。今は余計なことにはツッコまないように心がけよう。

 そう思った時だった。妹ちゃんが何かを思いついたかのように手をたたく。

「……睡眠と催眠って似てませんか!?」

「……それだ」

 何を言っているのかさっぱりわからん。姉妹で勝手に納得しはじめたし、側近君はノーリアクションだし。これは俺が一度止めたほうがいいのか?

 それにしては会心のアイデアと言わんばかりのドヤ顔なんだけど。

「よし、それじゃここをこうして……」

 口をはさむ間もなく、部長は自分の世界に入ってしまった。こうなってしまっては、ひと段落するまでは何があっても動かない。諦めて、姉妹の案に乗っかるしかないということだ。

「それじゃ、ここは部長に任せて俺たちは寝よう」

「おー!」

「いいのかそれで……」

「それしかできんだろう。部長を信じるんだ、いいな!」

「お、おー」

 なんか言いくるめられたような気がしなくもないけど、まぁ仕方ない。寝れるうちに寝ておいたほうがいいだろう。一人部長を残し、俺たちは夢の中へと旅立っていった。

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