第4話 基礎魔法

「ワクワク!」

「ワクワク?」

「マグ拳ファイターの歩き方! 基礎魔法編!」


 ドンドンパフパフ!


 とアキラは腰のポーチから玩具のラッパを取り出した。と思ったらそそくさとそれを仕舞う。恥ずかしいならしなきゃいいのに。


「ええ、基礎魔法の説明をします」


 アキラの説明によると、基礎魔法は五種類に分類される。


1 パス いわゆるテレパシー。人や物など、自分とそれ以外とを魔力の回線で繋ぐ。

2 バフ 人や物の力や特性を強化したり、逆に弱化させる(デバフ)。

3 エフェクト 人や物の特性を変化させる。

4 マテリアル 潜在魔力を物質として顕現させる。

5 ディメンション 時間や空間に干渉する。


 これらがアキラから聞いた五つの基礎魔法の分け方だ。


「まあ、分からないことだらけだろうけど、おいおい分かってくるから気にするな」


 そういうもんだろうか?


「魔法っていうより超能力っぽいよな。テレパシーとかあるし」

「この世界じゃ一応魔法に分類してるってだけ。この世界なんでもありだから。魔力にしたってプレイヤーによっては、気とかオーラとか、フォースとかマナとか勝手に色々呼んでるし、何ならオリジナルの名前付けてるやつもいるよ。そっちの方が威力が出るとか言って」


 ホントになんでもありなんだな。


「超能力みたいなら、呪文とかいらないのか?」

「いらん。雰囲気出すために詠唱している奴はたまにいるけどな」


 気持ちは分かる。カッコいい呪文言いたいもん。オレに考える才能無いけど。


「よし、まずはパスの練習からだ。これができなきゃ話にならん。このゲームはパスから始まりパスに終わると言われるほどだ」


 中華料理のチャーハンみたいだな。なんて思っていると頭の中に声が響く。


『おーい、リン聴こえるか?』

「うおっ、き、聴こえる。聴こえるぞ」

『これがパスの基本、テレパシーだ』


 凄い。アキラは喋ってないのに聴こえてくる。もし腹話術じゃないとしたら凄いことだ。いや待て。今オレはHMDを被ってゲームをしてるんだよな? じゃ今までの会話はどうなってる? 少女やアキラと話した会話、もしかして口に出して喋ってたのか? だとしたらヤバい! いつもなら大丈夫でも、今日は家に父がいるんだ。一人しかいない部屋から声が聞こえてきたら不気味過ぎる! もし部屋の中でも覗かれようものなら…


「大丈夫かリン!? 顔真っ青だぞ!?」



 アキラに事情を説明したら大笑いされた。

 アキラの説明によるとオレは今眠っている状態に近くて、夢の中でアキラに会っているようなものなんだそうだ。だから大丈夫だとアキラは言っていたが、オレはそれでも不安だ。もしオレが寝言を言うタイプだったらどうする。次にこのゲームをやる時にはレコーダーをセットしておこう。


 テレパシーは簡単に覚えられた。絶対に必要な魔法だから簡単に覚えられるようになっているそうだ。

 相手や物に向かって意識を集中する。そうすると何かが繋がった感覚が得られるので、そこで頭の中で話し掛けると、アキラと会話ができた。物とは会話できなかったが、繋がった感覚は得られた。

 よし。これで次のバフってやつだな。


「じゃ、あとは好きにやってくれ」


え?

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