烏鷺/黒白(20221207~

詞梳記(ことばとき)

彼方とは

漂泊の疑似餌

濃淡を吸い込む前触れ 夜 海上に浮かぶモノクロの、過去のある地点に、星のあかりを大まかに素描する、足早に過ぎ去る東雲とずるけるだけの鶏鳴とを丸天井に見つめている、羽根を伸ばした千里眼の、一望を舐めるように、しみったれた成れの果てが、みすぼらしい素の息遣いが、ただしろくこみ上げるだけの。これもまた狡賢い、漂泊の疑似餌。逃避の眺望とはまた乙なもの。亡き砂の浜を雪月花が躍る、この幽微な見晴らしは知らない土地の香りがした。擬い物の白魔がすっぽりとくるまれる。無色透明の躰で丸めて、渦巻く火の手から、不死鳥だと曝している。四方を囲われ、器からはみ出したものが、余裕もなく継ぎ足されるのを、呑み下して相殺する。そこから見上げる秘色、薄氷であったなら。穴を塞ぐように、嗚咽だけが溢れてはそれがごおごおと、ほとぼりが冷めるまで惰性のように、面影が揺曳ようえいする。

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