つらつらの2 日本人の賃金が上がらぬのは日本人が勤勉だからかも 之巻

 失われた三十年ですよ……。

 和暦にあてはめると、平成はマルっと失われたわけですね。

 令和になっても、現状維持のようです。

 失われた四十年に向けて順調にスコアを積み上げているわけですな。


 さて、ここでは「経済はこうあるべきだ」とか、「政府や雇う側はこうするべきだ」というような事は言いません。

 高校三年生で突然に経済的ボッチになってしまった僕が、思う事、感じた事をつらつらと呟いてみたいと思います。


 僕は学がないので、偉い先生方のように数値や理論を示すことはできません。

 ただ、無責任に肌で感じたことを示すのみです。


 それでもよろしければ、是非、お立ち寄りください。

 二十歳以上の方は、軽くお酒でも嗜みながらどうぞ。



♢♢♢



 ではでは、今回は日本人の平均給与額が変わらないよねぇって事でつらつらしてみたいと思います。



 いきなり結論!


【給与を増やしたければ、働くのをやめよう】



——以下蛇足——



 僕が中・高生くらいの時、ちょうど失われた三十年が始まったあたりですね。この頃の日本人の労働対価は世界水準で見てもかなり高かったと記憶しています。


 当時は日本国内では人件費が高すぎるから、周辺国に仕事の下請けを頼むとか、国内で作るとコストが高くなるから、国外に工場を作ってコストを抑えるなんて話が流行していたことを覚えています。


 因みに、今ではエビの皮剥きの仕事は輸入元の東南アジアでやるより、日本国内でやった方が人件費が安いのだとか……時代は変わったものです



——コストの中で一番高いものが人件費だ——

——人件費をどう抑えるかがコスト削減の肝だ——


 当時、地方の中小零細の社長さんでも知っていたこの呪文。ジンケンヒサクゲン。

 事の是非は別として、この呪文の効果は唱える人のイメージによって変わります。

 まさにマホー!


 マホーの使い手が持つイメージとしては以下に大別されると思われます。

 ①限られた人員を最大効率で動かすにはどうするか。

 ②人に関係する経費をどのように抑えるか。


 マホーの使い手が①をイメージしたなら、概ね問題はありません……はじめのうちはですが。


 問題は②だった場合、暗黒面に堕ちていくのはほぼ確定でしょう。

 ②のイメージで放たれたこの呪文は様々な効果を内包しています。使い手によっては一度のマホー行使で複数の効果を発現できます。


 効果の例は以下のとおり、サービス残業、サービス出勤、派遣召喚と派遣切り、リストラ、etc.……。


 まあ、今の時代、社員は自動修復機能付きの機械ですからね。壊れたら交換すればよいのでしょう。


 家電品なんかでよく聞く「ああ、これは修理した方が高いっすよ~。交換をおススメしま~す」ってやつですね。


 嫌な時代になったものです。



 ①の件に行く前に、チョイと寄り道します。


 社会保険の件です。

 体面上、会社が払ったことになっている社会保険の半分ですが、アレも経費と考えれば実質的に払ってるのは社員本人ですよ?


 例えば、僕が親に騙クラかされて入った会社での話です。

 入社前は各種保険込み手取り四十万で約束していた給与が、入社してみたら、各種保険無し総支給額二十四万になっていました。

 会社にその件を確認したついでに、社会保険に入れてもらえるように要求したところ、翌月の給与明細では社会保険のみ加入で、手取りは二十万になっていたのは、今では悪い思い出です。


 つまり、会社としては社員一人を雇う時に出ていく経費を引いたうえで支給額を決めています。

 手順としては、まず、社員一人に払う金額の上限が決まります。次にそこから会社が国などに払う金額を引きます。余った金額から社員本人の税金を引いた額が手取り額となります。

 はんぶんこ♡とか、会社も負担してるよ♡なんて事はあり得ないって訳ですな。



 さて、①を選んだ場合は大丈夫でしょうか?

 もちろん、①についても危険は付きまといます。


 ありそうな例として、納期がカツカツの品物を作るラインで欠員が出たとします。

 社員は納期をズラせないことを理解しているので、無理をしてなんとか納期に間に合わせました。


 さあ、ここからですよ。


 この件について、会社がどう思うか……なのですが。

 

 ①ー①社員が頑張ってくれたおかげで納期に間に合った。ありがたい。

 ①ー②なるほど! このくらいの仕事量なら許容範囲か、まだ余裕があるのだな。

 ①ー③なんだ、人が少なくてもやれんじゃん……あいつらサボってやがったな!


 もう分かりますよね?


 悲しいことに①ー①は絶滅危惧種です。こんな感想を持つ奴は、現代を生きるマネージャーさん達からは甘い奴だとの誹りを受けること必至です。


 概ね①ー②と①ー③の考えが大半でしょうね。

 なぜなら、そのように考えた方が、ジンケンヒサクゲンマホーの効果をより高められるから。

 ①ー②と①ー②の違いは、現場に負荷が増えていくスピードが早いか遅いかです。

 マホー風に言うと、発動時間の違いですね。


 結果は変わりません。


 つまり、社員は会社のために頑張れば頑張るほど自分の首を締めるリスクが増すわけです。



 二十年ぐらい前の話ですかね。

 僕は勤めていた会社が倒産して転職しました。


 その事業所にはパソコンが一台しかなく、大抵の書面は手書きとFAXで処理されていました。


 先に言っておきます。この先の話について、僕は事の善悪を論じるつもりは一切ありません。


 さて、思い出話に戻ります。


 ただでさえ、深夜二時出勤、夕方六時退勤の年休二日の仕事です。

 なるべく効率を上げようと、社内で一台のパソコンで帳票や物品の移動履歴を作っていた時の事でした。


 僕の上司が僕に言いました。


「みんな、お前みたいな事ができる奴ばかりじゃないんだ。能力をひけらかすようなことはするな。できない奴のことも考えろ」


 もちろん、パソコンを使用する時は、上司に目的と用途を説明して許可をとった上で行っていましたし、パソコンの使用も自分の業務が滞らない程度に自分の仕事の合間を縫っていました。


 幸い僕は喫煙者ではなかったので、喫煙者特有の長い休憩時間を取る口実がありませんでした。パソコンをいじるのが好きだったので、たまにできる隙間時間の消費には今後のための資料作りがちょうどよかったとも言えます。


 もちろん、その時は謝罪して、以後、会社のパソコンには触りませんでしたし、資料も自分の必要な分だけ作って同僚の分は作りませんでした。


 当時の僕は彼らに対して、やる気のない集団だなと思ったものです。

 しかし、今思えばこのような姿勢も現場の自己防衛の一環だったのではないかとも思えるのです……意図的なのか自然発生なのか、はたまた、先を見ているのかサボりたいだけなのかは別として……。



 さて、人件費が経費であるのは疑いようのない事実です。

 事実は一つです! 真実はたくさんありますがね……。


 ……すいません。言ってみたかっただけです。


 日本人のもったいない精神の発露は多岐にわたります。

 これが、ある方向に向かっていかんなく発揮されると、経営者側にとって現場のゆとりの部分が全て損に見えてきます。


 もったいない精神が、職場に潜在的に存在している時間と能力、つまり、職場のポテンシャルの全てを活用しきって利益に変えたい欲求に変換されたわけです。


 技術職の方……特にメカニックやシステム関係をされている方なら、いわゆるバッファやあそびの重要性を理解して頂けると思います。


 事務仕事であろうとライン仕事であろうと、その現場の最大仕事量を全ての余裕を排した状態に設定して運用し続ける事は不可能です。


 それでも、真面目で勤勉な日本人は何とかしようと努力してしまいます。

 もしくは、真面目で勤勉な方に負荷が集中します。


 そして、力尽きた彼らが社会から消費されていきます。


 あなたの身近なところで、勤勉で真面目な日本人の乱獲が行われていませんか?


 

 たまに悟り世代が指摘されている、自己中心的な側面はそんな日本人が今の社会の中で生き残っていくために進化した形かもしれません。


 もしかしたら、こういう方が現場に増えれば、仕事の量と質が変わってくるかもしれません。


 なぜなら、彼らの行動の可否を決める基準は御恩と奉公ではなく、ペイとリターンのバランスやコストパフォーマンスにあるのですから。



 知り合いの社会労務士事務所の年末最終日前日にこんな事がありました。


 給与関連の年末進行が予定通り終わり、翌日の年内最終日は半日勤務にして大掃除を行うことが社長より発表されました。年末はどこの会社でもよくある話ですね。


 そこで、普段からの悟り世代ムーブに定評があるパートの方が、こう提案します。


「大掃除にこの事務所の全員は必要はないと思うので、私は休みでいいですよね?」


 これ、この感覚です。


 普段、なんとなく他人とのかかわりを重視するあまり、損をしがちな方にはこの気概こそが必要でしょう。



 本来は割に合わない仕事から働き手が離れていく事が普通なのです。


 こういった事を防ぐために日本的な柵やジョーシキが見えないバイアスになっています。


 しかし、そういった強制力が効かない人間が増えればどうなるでしょう?


 案外、労働価格が適正値に戻るかもしれません。



 労働市場から労働者しょうひんが無くなればどうなるのか? 

 需要と供給ですね。簡単な事です。



 世襲二代目マネージャーや、タイイク会系出身マネージャーから聞こえるマホーの言葉。


 「甘えるな」


 はたして、甘えているのは現場サイドなのか? マネージャーサイドなのか?


 この際、無理に働くのをやめてみませんか?


 みんなが困るからと頑張ったところで、上も周りも交換可能部品くらいしか思ってませんよ?


 会社にしがみつくのではなく、自分が切れるカードを増やす方向を模索してみてもいいのでは?


 社会に役立つ人間と、会社に役立つ人間は違うのです。




 というわけで、言いたい事は言ったので、今回も投げっ放しで終わろうと思います。



 とりとめのない話にお付き合い頂き、ありがとうございます。

 できましたら、この一庶民の妄言が、頭の良い方や力のある方に対しての何かしらの刺激になれていれば幸いです。




♢♢♢



メカと魔法で話を作りたくて、細々と小説を書いてます。

なかなか話が進まないのが目下の悩みです。


こちらも覗いていただければ僥倖です。

拙著に感想など頂ければ、作者は嬉しくて踊りだすことでしょう。


https://kakuyomu.jp/works/16817330650335084652

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