条件その2

「私は人間です」

机の傍の椅子に座るマリアが言った。机にはフレンチトーストとコーヒー。どちらも男の大好物だ。今日は休日。いつもより遅く起床するという人も多いだろう。だが男は違う。平日も休日も男の起床時間は変わらない。

男はパジャマ姿でテレビを見ながらフレンチトーストをほおばる。起きたばかり、寝ぼけまなこである。

「私は人間です。私は言語を用いてあなたとコミュニケーションをとることができます。使用できる言語は豊富です。日本語、英語、中国語、フランス語・・・。その他にも点字や手話も使用可能です。私はあなたの発言に対して言語を用いて適切な応答をすることができます」

 男は相変わらずテレビを見ている。

「いいや、お前はオレとコミュニケーションをとれていない」

男は眠たそうに言った。

「休日はもっと遅くまで寝ていたいと言っているのに、お前は平日と同じ時間にオレを起こす」

 しばしの沈黙の後、マリアが答える。

「以前、ご友人の相田様がいらっしゃった際にあなたは次のような発言をされています」

マリアが男の口調を真似て言った

『休日の起床時間が遅くなると体内時時計がくるって月曜日からの仕事に支障がでるもんだ。オレみたいな優秀な人間はそんなバカなことはしない』

「バカなことはしない、という発言と、遅くまで寝ていたい、という発言は矛盾します。どちらの発言が正しいのでしょうか?」


 形勢不利。男はそう感じた。巻き返すことは可能。だがいかんせんまだ眠い。

 まとまらない思考。

 どれほどの時間が経っただろうか?

 男はマリアから掃除のために立ち退きを命じれらた。男はしぶしぶ着替えて外に出て行った。

季節は冬。男は寒さに体を縮めるのであった。



終わり

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