第6話俺のケツから魔法の杖がでりゅううう!
俺は思いの丈を込めて、彼女に語りかける。
「いいか!よく聞け!お前がしたいことを強く想いながら手を入れるんだ!強い想いほど強い杖が出てくる!」
「おしりを振りながら近づいてくるな。わたしの魔力量じゃ手のひらに乗るくらいの物しか変身できないわよ」
輝くケツ!美少女に向けてじりじりとケツを近づけていく様は悪夢だ。世が世なら捕まる。おれなら、即刻処刑する。
「大丈夫だ!俺の杖は特別性だからな☆」
安心出来るよう優しいイケボで話しかける。
「何やってんすか!!切り札あるならさっさとしてくれっす!!」
俺だってしたくはないわ!神が無理やり押し付けた力。「ケツから魔法の杖を出す力」おしりにある謎の光は異空間に繋がってる。そこには魔法の杖が存在している。何回か試していく内に気づいたことがいくつかある。杖は唯一無二で、強さも性能もバラバラ。ただ、ものを動かすだけの杖、1国を滅ぼすほどの杖。適当に杖をつかむことはできる。魔力のない俺自身 では杖を使うことができない。1度世に出た杖は元に戻せない?あとは、引き出した者の意志が強ければ強いほど、その想いを色濃く受けた杖が出てくる。だからこそ。
「いま、お前がお姉ちゃんに会いたい気持ちが呼び寄せるんだ!お前だけの杖を」
「わたしだけの杖…。って、おしりを動かしながらにじり寄らないでよ!」
「しかたねーだろ!拘束されてるんだから」
拘束され、半ケツ丸出しの未成年。警察も真っ青なこの状況。
「くっ、はやくしろっす!!!もぅ!もたないっすぅ!!!」
ピキピキと氷の盾が音をたてて剥がれ落ちていく。
「もう、やけくそだああああ!」
カリンは思いっきし、俺のケツに手をつっこんだ。
ずぽっ
光の中は冷たいような暖かいような水中にあるみたいだった。眩い光故に中の様子は分からないが、指先に固いものがふれ、いくつもあることを感じ取れた。まるで、宙に浮いているようだった。
「おっふ!」
「変な声出さないでよ!」
「しかたねぇだろ!こちとら内蔵掻き回されてるような感覚なんだから!それよか集中しろ!お前の杖をさがせ!」
わたしがしたいこと、ああ、水浴びしたい。最近王都で出来た熱いお湯の出る水浴びなるものを体験したい。木の実や訳の分からない雑草じゃなくて、お腹いっぱいにご飯食べたい。そうだな、とろーりとしたチーズを柔らかなパンに乗せて、暖炉でじっくり焼いたのとか、猪を塊肉で炭の上で丹念に焼いたステーキとか。
「おい!飯食いたいとか考えるなよ?」
「え?じゅるり!こんな切羽詰まった状況でじゅるり!考えるわけじゅるり!」
「分かったからよだれをふけ!」
姉様に会いたい。姉様に会いたい。謝りたいことがいっぱいある。話したいことがいっぱいある。だから、もう一度!お姉ちゃんに会いたい!会うための力を私に!無力な私がこの広い大陸からお姉ちゃんのもとに帰れるだけの力がほしい。水中の中を何かが向かってくる振動を指先で感じる。それに、この変態を元の世界に帰してあげたい。お姉ちゃんに言いよるクソ害虫だと思っていたけど。ケツ光らせるド変態野郎だと思っていたけど。わたしを村に返そうと一人旅の方が絶対にいいはずなのに、見捨てずにいてくれた。もし力が手に入るというのなら。私たちが家路につく力を!!これじゃない、これでもない、…これだ!!手のひらに収まったそれを引き抜く。
「どぅりゃああああああ!!」
「で、でりゅうううう!」
「あんたら何をしてるっすか?!」
必死に守ってるのが、アホらしくなるような艷声に思わずガブコは振り向いた。
すぽんっという子気味良い音と共に引き抜いた杖。カリンが握る杖は彼女の背丈ほどあるとても長い杖だった。杖の先端にはクリスタル。とても強い魔力を感じる。杖が熱く脈打つのを指先で感じる。そして、何故かかえるがちょこんと杖の上にくっついていた。
「はぁ、はぁ、…『オウチニカエル』」
「『オウチニカエル』?」
「その杖の名だ」
引き抜かれた杖の大まかな力と名前が頭に流れてくる。
「なんかダサいからほかに名前つけて」
「んー。『ブジカエル』とか?」
「却下」
「家に帰る…道標…『ポラリス』ってのはどうだ?」
「『ポラリス』?」
「あぁ、俺のいた世界で、北極星ポラリスって星があって、そいつが旅人たちの道標になっていたんだ」
「『ポラリス』かぁ!『ポラリス』!!」
中々に気に入ってくれたみたいで、小躍りしてやがる。
「名前とかあとにしてくれないっすか!!早く何とかしてくれっす!ぬわぁ!」
最後の1枚の氷の壁が崩れる。蜂の巣にされる5秒前。
後に振り返るとこの時の名付けで運命の分かれ道だったと思う。
「『光の精霊よ力をお借りします。我が姿を思いのままに変えよ!『道標の星ポラリス』』」
クリスタルは光を放ち、村娘を明るく照らす。光のベールが溢れ出し、カリンの身体を包み姿を変える。そしてしがない村呪い師の娘をみるみるうちに巨大な姿へと変貌させた。
「おいおいまじかよ」
「ば、ばけものぉ!」
「撃て!撃てえええ!」
魔法のガトリング砲は突然現れたその巨人に標準を変えて撃ちまくる。数多の魔弾が雨のごとく降り注ぐ。
「いやあああ!!」
「カリン!!!」
「ち、間に合わないっす!」
容赦なく撃たれる村娘。氷の盾も間に合わず、容赦なく弾丸が注がれる。
「ん?あれ?痛くない?…あぁ、そういうことか!だったら、がおおお!食べちゃうぞぉ!!」
でかくなって痛みを感じにくいのか?いや、全然無傷なのは何かおかしい。
「撃て撃て撃て!!」
「がっはっはっは!食べちゃうぞぉ!」
なんだこりゃ。村娘を見上げる。この日の彼女の服装はスカート。つまり。おおおお!!!
「こ、これは、パンツ穿いて、、、痛て!」
「どこ見てんのよ!!」
グーパンで殴られた。殴った相手は顔を真っ赤にしたカリンだった巨大な村娘と自分を殴った村娘を見比べる。
「あれは幻影。細部までこだわれなかったの!!まったく凄いわねこの杖。No.97の私がこれだけの幻術をつくれるなんて…。早くこの場からはなれるわよ!」
「とりあえず助かったっす」
ガトリング砲が巨人に向いている隙に、その場を離脱した。
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