第6話 ペースメーカー

友人が心臓の手術をした。

元々は人工弁を入れる為の手術だったらしいが、手術後の調子が良くなかったためペースメーカーを入れたらしいのだ。

そんな手術も1週間前に終わり、今日は彼の退院日だ。

医師から激しい運動と電子機器に気を付けて貰えれば日常生活を送る分には支障が無いらしい。

せっかくなので僕の家で退院祝いをすることとなった。

「いやぁ〜、ごめんねわざわざありがとう」

割と大きな手術をしたとは思えない程に溌剌としている彼に呆れながら。

簡易コンロを取り出し鍋に火をかける。

「ヘェ〜君のところIHなんだね。珍しい」

「まあ、汚れが落ちやすいから」

僕の家にあるコンロがIHだと言うことを知らなかった様だ。

まあ彼が入院してから借りたものだししょうがないだろう。

鍋に湯気が立ち具材に火が通ったところで食べ始める。

病院の食事が不味かったとこ愚痴りながら鍋を美味しそうに食べる彼は先日まで副作用の幻覚で苦しんでいた人とは思えない。

「はぁ〜美味かった〜。また作ってくれよ」

「機会があったらな」

満足そうに食べ終えた彼と片付けをし彼の発案でゲームをすることになった。

学生の時の様に笑い合いながらゲームをする。

結果は僕の全敗、昔から何をやってもこいつには勝てなかった。

「飲み物とってくる」

「うん。ありがと…グッ…」

「!!」

お礼を言いかけた彼が突然倒れる、僕は一瞬固まってしまったが直ぐに彼に駆け寄った。

彼は胸を押さえて蹲っていた。

もしかして先日入れたペースメーカーが?と思い救急車を呼ぶ。

彼はその間も苦しそうにしていた。

僕はそばに居るだけでなにもできない自分が歯痒かった、

暫くして救急車が到着する。事情を説明して彼が救急車に運ばれて行く。

僕は親族では無いからとついていけなかった。

家に一人で無力感に苛まれていると家のチャイムが鳴る。

ドアを開けるとIHコンロを貸してくれた友人がいた。

「お試しのIHコンロどうだった?ってどうしたんだその顔!」

そんなに酷い顔をしていたのだろうか?

友人を中に招き事情を話す。

友人は慰めてくれた。

1時間くらいだろうか夜も遅くなってしまったので友人は帰って行った。

そして3日後、彼の親から連絡が来た。

彼が死んだと、原因はペースメーカーが上手く作動しなかったらしい。

電話越しの知らせを受けて僕は膝から崩れ落ちた。

「やっと終わった…」


後書き

今回も意味が分かると怖い話です。

解説は次の回で書こうと思っております。

祖母が心臓にペースメーカーを入れた際の注意点から思いついたお話。

祖母の体験談から引用させて頂きました。

祖母には出来るだけ長生きしてほしい物です。

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