22日目(月曜日 仮)白い部屋の午後「キラキラ」 




 私は、てっきり、次の日曜日に黒井さんが持ってきてくれるんだろうと思い込んでいたから、意外な誤算で、嬉しくなった。


 私は、早速、丸まっている障子紙を1mくらい伸ばして、50cm定規を当てて切り、筆ペンのフリーハンドでカレンダーのような表を書いた。

 今日で、此処に来てから22日目。推定、月曜日。

 私がこの部屋に来たのが何月何日かは不明だが、任意に「〇月1日 月曜日」としてしまってカレンダー表に記し、22日まで書いた。明日からは、目覚めたら、このカレンダーに数字を書いていけばよい。そして、31日まで来たら、次の月のカレンダー表を書けばいいわけだ。これで、もう、キッチンに置いていた米粒は不要になった。



 私は、昼食後の白い部屋へは、マクシム・ゴーリキー全集ではなく、黒井さんが届けてくれた書初めに使うような毛筆と、障子紙と定規を持って行った。

 22日間、結局、何も手を付けてこなかった、あの青いペンキを使う時がようやく来たのだ。


 白いバケツの中の青いペンキを久しぶりにまじまじと見ると、表面が乾いて、膜のようになっていた。さすがに、そりゃそうだろうと思ったが、筆をペンキに少し突っ込んでゆっくりかき回すと膜が破れて下の水分を含んだペンキと混じり合ってくれた。

 すでに、青く染まった筆からペンキが十分にしたたり落ちたのを確認してからバケツの内側に毛を擦り付け、少し出した障子紙の上に置いた。

 

 


「キラキラ」


一枚だけ残った木の葉に雪帽子


人待ち顔に気がついて


見上げた雲の隙間から現れるおひさま


冷たいままの透明な風が粉雪を舞い上げ

キラキラ


冷たいままの透明な風が粉雪を舞い上げ

キラキラ


さっきまで淀んでいた僕の心も キラキラ


さっきまで淀んでいた僕の心も キラキラ




 私は、横に伸ばして広げた障子紙に、縦書きでそう書いて、最後にDと付け加えた。





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