第7話 女王蜂様 真のアイドルオタクをばらす

「ま、『まいまい』だけでも感激なのに、『あかあお』までも」

「こんな至近距離で生ライブなんて、なんて奇跡!?」


 のぼり坂くだり坂ま坂46フォーティシックスツートップ爆誕に1年8組の盛り上がりは最高潮に達した。


「うんうん。これはもうこの狭い教室だけでやってるのはもったいないねー。みんな行っくよー」


 蜂野先生が右手首をくるりと回せば、飛び出したのは先の尖った真っ黒な槍。あ、蜂の針って訳ですね。


 蜂野先生、針をバトン代わりに高々と差し上げると一言「さあ、みんな、こんな狭いとこ飛び出して、校庭で生ライブだよっ」


「おおーっ」


 それからは、先頭に針を持った蜂野先生、続いて、「まいまい」(粕川先生)に「あかあお」(鬼熊先生)、後は、一年八組の生徒に、見に来た他のクラスの生徒たち。


 のぼり坂くだり坂ま坂46フォーティシックスのヒット曲「ネガティブマインド ポイッ ポジテブマインド ゴー」を大合唱し、校庭に向かって行進。


「♪どうせ生っきるなら~ 楽しいほうがいいじゃないっ やぁなこと思うより~ 楽しいことを考えよぉ~」


 気が付けば、僕も一緒になって合唱してるし。


 ふと思って、紗季未の方を振り向けば、楽しそうに歌ってる。うん。よかったよかった。


 そしたら、あっ、視線が合った。真っ赤な顔してうつむいている。うんうん。可愛いやつめ。


 ◇◇◇


「はっ、蜂野先生。これは一体何の騒ぎで?」

 唖然としている校長先生。


「あんらあ~。校長先生ぇ~」

 満面の笑顔で答える蜂野先生。


「は・た・ら・き・か・た・か・い・か・く」


「?」


「のっ、断行ですぅ~」


「へ? ななな、なんですか~? それ?」


「あ~、もう、メンドくさいっ。校長先生も自分が一番やりたい仕事をすればいいんですぅ~」

 蜂野先生が魔法のバトンならぬ針をクルリと振れば、たちまちまばゆい光に包まれて……


「わー、校長先生も変身したぁ~」

「誰? あの娘? 可愛いけど、ちょっと地味な感じ……」 

「うん。あの娘……」

「のぼり坂くだり坂ま坂46フォーティシックスの中でもちょっと地味系の」

「『なゆたん』こと城東菜由じょうとうなゆ

「すげえ。校長先生。マニアック」

「本物のアイドルオタクだっ!」

「粕川先生や鬼熊先生を超える真のアイドルオタクだっ!」

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