偏重世界の音楽家~記憶さえ失った僕に残されたのは音だけだった~

矛盾ピエロ

序章 始まりの音

第1話 ここはどこ?ぼくはだれ?

 柔らかな光に瞼を撫でられて意識が覚醒へと向かっていく。

もう少し寝ていたいと思う惰性をどうにかこうにかやり過ごしつつ、ショボショボとした目を擦り大きく伸びをして、


 さぁ今日も1日頑張るぞ、とはっきりと覚醒した目を開けると見知らぬ部屋だった。


(...あれ?此処どこだ?)


 辺りを見渡しても部屋は静寂に包まれたまま。自分の体に目をやると入院中に患者が着るような検診衣を着てベッドに座っていた。


(なんで病院?どこか怪我とかしてたっけ?確か昨日は...ん?昨日?というか、あれ?えぇ...?)


自分が病院にいる理由を思い出そうと頭をひねっているとそれ以上に重大な問題があることに気づいた。


(そもそも僕の名前ってなんだっけ?)


自分の名前すら知らなかった。


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