第4話 Clock-3

 翌日の土曜日。

 玄関を出たところで、安藤美緒に見つかった。


「あ!英治兄ちゃん、今日暇だから一緒にゲームしようよ!」

 兵から身を乗り出して、満面の笑みで手を振ってくる。


「ごめん、今日はちょっと用事があるからダメなんだ」

「え~~!!ケチ~~!」

「ごめんごめん、じゃあ出かけてくるから」

「じゃあ、帰って来てからね!」

「はいはい、わかったよ」

「約束だからね!」


 むくれている美緒をなんとかなだめ、駅に向かう。


 電車に乗って、40分ほど。秋葉原にやってきた。

 秋葉原にはもう何度もやってきている。


 使えそうな部品がないかと店を回る。パーツショップやPCショップ。

 いろいろ使えそうなものはあるが、値段が張るものもある。


 まずは、もともと考えていた目当ての部品・・・ヒートシンクを購入することにした。数百円程度で買えるので、試してみるつもりだ。

 とあるパーツショップに入り、いくつかのヒートシンクを手に取る。大きすぎても取り付けられないだろうし、小さすぎると放熱効率が悪い。

 スマホの大きさを考え、3種類のヒートシンクを選びプラスチックの小さな箱に入れてレジに持って行った。

 お会計を済ませると店員は部品を茶色の紙袋に入れて渡してくれた。それを受け取って、レジを離れる。


 店内は結構な数のお客さんで混み合い始めていた。

 だが、ほとんどは年配の客が多いようである。英治くらいの若者で電子部品を買うような趣味の人は少ないのかもしれない。

 どうりで、学校で話の合う友達ができないわけだ・・・


 パーツショップを出る。

 そろそろ空腹を感じてきた。そろそろお昼時だ。

 昼ご飯はどうするか思案する。秋葉原近辺だとどこも混んでいるだろう。

 どうせ一人だし、お茶の水まで歩いて行ってご飯にしよう・・ついでに本屋も覗いていこう・・・。

 英治は駅と反対の方向に向かって歩き出した。




 英治が自宅に戻ってきたのは3時過ぎであった。

 早速、安藤美緒に見つかる。


「あ~~!英治兄ちゃん遅い!」

「ああ、美緒ちゃんただいま」

「約束だよ!ゲームしよ!早く!早く!」

「わかったから、服を引っ張らないで。また伸びるから・・・ちょっと待てって」


 自宅の玄関を開け、荷物をほ織り込んだらすぐ施錠。美緒に引っ張られるまま、隣家に連れられて行った。



 美緒とゲームをして、そのままの流れで夕食をごちそうになる。

 TVでニュース番組が流れている。

 サッカーのチャンピョンシップ大会のニュースに変わる。

 試合のダイジェストが流れる・・・そして、字幕に”激闘の末**が3度目の優勝!!”の文字。

 スコアは、昨日見たニュースサイトと同じであった。


「ん?英治兄ちゃん、サッカーに興味あったんだっけ?」

「ん?いや、そういうわけじゃないんだけど・・」


 ふと気になって、普段使っているスマホでニュースサイトを見てみる。

 そこに表示されている画面は・・・昨日見た・・・改造したスマホに表示されていた画面と全く同じであった。




 夕食後、自宅に戻ってきた英治はすぐに勉強机に向かい、引き出しの中から昨日改造したスマホを取り出した。

 試しに、昨日取り付けた部品を剝がそうと引っ張ってみる。

 しかし、メインチップにしっかりと張り付いていて取れそうもない。

「いったい、こいつは何なんだ・・・」


 PCを起動して、部品を購入したサイト・・・おそらくは東欧のものと思われるWebサイトにアクセスしようとした。


「え・・・?」

 確かに部品を購入したサイトのアドレスのはずだった。

 だが、すでにそのページはアクセスできなくなっているようであった。


 そして、購入した際に説明書が送られてきたメールを探したが、見つからなくなっている。

「いったい、なんなんだ・・・」


 まったく理解できないことが続いている。だが、考えていても仕方がない。

 まずは買ってきたヒートシンクを取り付けてみることにした。


 大きさを変えて3種類買ってきたが、一番大きなものでもなんとか取り付けられそうであった。

 熱伝導両面テープを貼って、ヒートシンクを張り付ける。それだけの作業である。

 早速、スマホの電源を入れて確認してみる。

 スマホの上部に表示された日時を確認してみる。


 時間は、普段使っているスマホと同じく20:38だった。

 だが・・・日付が違っていた。

 改造したスマホには、明日の日付が表示されていた。


「マジか・・・本当に・・・未来の情報なのか?」


 昨日と同じように、ニュースサイトを開いてみる。


 そして、そこに表示された情報に英治は驚愕した。

「そ・・・そんな馬鹿な・・」

 リンクを飛んで、さらに詳しい情報がないか調べる。

「そんな・・まさか・・・」


 その時、英治の指がヒートシンクに触れた。


「あち!!」


 指先の痛みで英治は我に返った。


 ほんの数分起動しただけなのに、ヒートシンクはかなりの高温になっている。

 このままだと、壊れる可能性が高い。

 仕方なく、英治はスマホの電源を切った。


「そ・・・そんな・・・」


 英治はため息をつき、勉強机から離れ、ベッドに横になった。

 脳裏には、先ほどスマホを見た情報。


「ど・・・どうしよう・・どうしろって言うんだ・・・」


 英治は布団に潜り込み、丸くなる。そして頭を抱えた。

 その体は・・・小刻みに震えていた。

 



 


 



 

 


 

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