5.私の決意

そして、とうとうあの女がうちに戻ってきた。

私とお兄ちゃんはあの時以来少し気まずい雰囲気。

全部あの女の所為だ。あの女がいなければ、お兄ちゃんは私を選んでくれたはず。


今日から1週間、お兄ちゃんは部活の合宿で家にいない。私はあの女と2人きり。本当に吐き気がする。ナユカの家に泊めてもらうことを考えたけどやめた。

この女を私とお兄ちゃんの家に1人にすると何するかわからない。お兄ちゃんがいない間、私がこの家を守らなきゃいけないの。それならナユカに来てもらうのはどうかと考えたが、それもやめた。私はそれよりもっといい事を思いついたから。



「それじゃ、行ってきます。」


朝早く、お兄ちゃんは家を出た。

お兄ちゃんを見送り、キッチンに戻る私とあの女。


「メルちゃん、今日から1週間、よろしくね。」


相変わらず良い人ぶってて本当にウザイ。

こんな奴に私の大事なお兄ちゃんは渡さない。

付き合ってようが何だろうが結婚なんてさせない。

私からお兄ちゃんを盗ったことを後悔させてやる。


私はキッチンから、椅子に座っているあの女に初めて自分から話しかけた。


「あ、あの…お腹…すきませんか?」


「?あ、そうだね。確かに!」


私に話しかけられて嬉しそうに答える女。

私…お前の事認めたわけじゃないからな?

イライラするけど顔に出さないようにする私。


「私、料理しますね。えと…


お肉…好きですか?」


「うん。大好き!私も手伝うよ。」


そう言ってキッチンに入ってくる女。

長い髪をまとめてポニーテールにしている。

…助かるなぁ…


「…あれ?買っておいたはずのお肉がない…」


冷蔵庫を覗きながら困った声で言う私。


「え、そう?じゃあ私買ってくるよ…」


女が言いかけた時、


「あ、あったぁ〜♪」


私は女の方をまっすぐ見て、そして、隠し持っていた包丁を振り上げた。

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