けーちゃんが あらわれた!

 おはようございます。先日、珍しく来客があったので張り切ってドレスで持て成した結果、OP、即ち『おしゃれ・ポイント』が尽きたので、今後三か月はジャージしか着る気が無い今年度のベストジャージスト系美女、即ち余です。

 え? ジャージとは余にとって『何』ですか? ふふっ。そう、ですね……一言で表すなら……情熱パッション、ですかね?

 と、そんな風にジャージスト賞受賞時のコメントを考えつつ、ちゃぶ台の上で万年筆をかりかりかり。我が魔王軍最高戦力でありながら、同時にリーダーでもある余の主な仕事は書類業務だったりするのです。


「あ~……肩こるー」


 言いながら背伸びを一発してみれば、パキパキと軋んで鳴る身体。最近、以前にも増して肩凝りが酷い気がする。

 おっぱいのせいか? おっぱいのせいなのだろうか? 揉むと大きくなるという都市伝説は本当だったのか? 余のわがままボディはゆーくんの手によりGuレートな次元を超えて更にHiな次元に至ってしまったのだろうかッ!


「……かたが、こおるぅー」


 と、ちゃぶ台の向かい側から可愛らしい声が聞こえて来た。

 クレヨン片手に余の真似をして背伸びをしながら微妙に間違った言葉を発しているのは、けーちゃん。


「お絵描きとは珍しいですね、けーちゃん。皆は鬼ごっこしてるみたいだけど、一緒にやらなくても良いのかの?」


 栗色の髪を二つに結んだけーちゃんの眼は余と同じで左右で瞳の色が違っていた。魔女種である証だ。種族的に魔道と相性が良く、身体能力は余り高く無い……はずなのだが……。


「……ゆーも、せんも、とうも、あし、おそいから」


 あんな雑魚どもを追いかけまわしてもつまらない。そうのたまうお嬢様の身体能力は四人の中で一番だった。それで良いのか、ボーイズ。特に、鬼種で戦士なボーイ。

 そして、それ以上に戦士を超える身体能力を持っていて良いのか、賢き者よ。


「だから、きょうは、えを、かくの」


 言って、クレヨン握って、ぐるーっと丸を一つ。そのまま、何やらお絵描き開始。その真剣な様子に思わず笑みが浮かんでしまう。


「さて、と……」


 余も頑張りますか!


 ――そして三十分がたったころ。


「まおー、みて! みて! みて!」

「はいはい、どうしまし――うぁう! な、何それ? え? 触手? 何の触手?」


 ぺしぺし、とちゃぶ台を叩くけーちゃんに呼ばれてみれば、謎の触手がちゃぶ台から生えてけーちゃんと一緒になってちゃぶ台をぺしぺししていた。イビルアイの貧相な奴とは違って太くて、硬くて、脈うっている。……やだ、余ったら卑猥!


「えーかいてたら、でてきたの。すごい?」

「うん、すごい怖い! って違います! え? 何? 何で? 飛び出す絵本でも、もう少し控えめだからね! 何したの? 召喚の魔法陣描いちゃったのかの、けーちゃん?」

「しらーん」


 けーちゃん、楽しそうに、バンザーイ!


「知っていて!」


 自分が何を召還したのかを!


「かって、いい、かな?」

「アレを飼うのかの⁉」

「めが、かわいい」

「目はありませんけれどもっ!」

「ちゃんと、せわ、するよ?」

「ダメです! 元の世界ばしょに還してらっしゃい!」


 ぎゃーぎゃーぎゃいぎゃい。

 そんな感じで言い合う魔王城の美少女トップツー。と、言うか余とけーちゃん。


「ん? いや、ちょっと待って下さいな。召還の魔法陣って内容理解してないと発動しないはずなのに、なんで発動してるんですか? え? けーちゃん、ほんとは理解できてるの?」

「なんとなくー」


 けーちゃん、もう一回、楽しそうに、バンザーイ!


「すげぇや、さすがは賢き者っ! で、アレは何ですか?」

「……ジョセフィーヌ?」

「違う! 余が聞きたいのはそうじゃない! って言うか名前を付けないで!」


 それも優雅エレガントな奴を!


「けー、ちゃんと、さんぽもいくよ?」

「ダメです! どうせ最終的には余かイビルアイお母さんが行く羽目になるんですから!」


 世のお母さま方のそんな悲哀。余は知っているんですからね!


「……じゃぁ、もう、いいよ。でも、けー、かえせないよ? どうするの?」

「ふっ、ならば仕方がないです。――行くぞ、触手生物っ! うおぉぉぉぉぉぉっ!」


 余の勇気と拳が世界とかを救うと信じてッ――!

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