老兵うさぎは人間には勝てないのか

へびはら

第1話


 時間をかけて守ってきたつぎはぎの城に、大きな大きな穴が開いた。突然降って来た砲弾が、ただでさえ脆い城をたやすく壊した。


 人間は、平然と立っている。


 その姿を見ていた私は、唐突に理解してしまった。私という男は、このはりぼての城を守る事しか知らなかった。女王様の見栄と虚像で作り上げられたこの城を、守っていかなければならないと思い込んでいた。


 本当はもう随分と前から、この城は息苦しかった。

 けれど愛していたから。


 (だけど――もう作り直せない)

 いっそ壊してしまおうか、脳裏を過る。


 私は老兵だ。長い間女王様に仕えてきた。幸せだったと思う。ただもう、考える事は止めてしまっていたけれど。


 女王様はどうだろう。

 女王様は、私よりずっと前から女王様だったから、こんなはりぼての城でも居心地が良かったんだろうか。


 (やはり私には、もう無理かもしれない)


 私はもう。

 彼女が作る世界の一部である事に、酷く疲れてしまっていた。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る