第14話 桜庭拓人を観察します

 遅くなりました🙇‍♀️

 今回は、2人の学校生活の話です。少しだけ2人の本来の性格というか、素の部分が出ます。

 私事ですが、考査詰みました。ピエン。






 私と私の恋人の拓人がデートした日から、1週間後。

 私は、以前考えていた「"桜庭拓人"の日常を観察する」を実行しようとしていた。


(……まあ、拓人はそんなに交友関係が広いはずはないから、観察しやすいかな?)


 拓人にはちょっとだけ悪いけど事実だからね?、と勝手に自身の恋人に対して言い訳をしておく。そこまで考えると、授業の予習を進めていた手を止め、ベットに寝転がった。仰向けのまま、天井を見上げると、

白く塗られた天井が移り、その視界に拓人の姿が見えてきてしまう。


(あ〜、もう!なんで拓人の顔ばかり浮かぶの!!)


こんなふうに勝手に怒ってはいるが、実は件のデートの日以降、こんな感じの日が続いているのだ。本人には見せないようにしているが。

 こんなだが、まだ自分は彼のことは好きではない、と言い切れる。なぜなら、自分は彼氏がいたことがなく、その影響でただ自分の感情が、昂っているだけだと自覚しているからである。

 やっとのことで拓人の幻影を振り払い、気分転換のためにシャワー浴びる準備をする。

 そんな感じで、春川陽菜という女子高生の夜は更けていった。



 



「さて、観察を始めますか!」


意気揚々と今日の目標を大声で言った。

傍から見たらストーカーにも思えるようなことを言っているが、彼女自身の部屋なので問題は無い。だからといって、そんなことを言うのは控えた方が良いが。




 まず、朝。

 元々、付き合う以前から時折、通学路で見かけていたのだが、今日はそうではなかった。

 学校に着くと、予想していた通り、彼の親友の寺門遥輝という男子とたわいない会話をしていた。朝に彼がその男子と話していない日を見たことがないため、これがクラスにとっての日常だった。


(あ、拓人笑ってる……珍し。やっぱ遥輝くんとは仲良いんだろうなぁ。少し羨まし。デートの時はいつもと同じで無愛想だったし…………少しだけだけどデートは楽しかったからいっか!)


勝手に遥輝に小さい嫉妬を覚え、この間のことを思い出しては忘れようと頭をブンブンと振った。


「ぉ〜す、朝のHR始めるぞ〜」

「「「は〜い」」」


うちの担任は、薄い簡単なメイクだけを施した、毎日家に帰って風呂に入ったあとはマンガを読む、みたいな感じの女性だ。ていうか、本人が自己紹介の時に言ってた。

 彼女は、どこかだらけた雰囲気ながらも、授業の内容は分かりやすく、面白い話も途中で挟んでくれるため、うちの担任は人気がある。また、男子と女子両方に変わらない態度で接するので、特に誰からも疎まれてはいないだろう。そんな担任の声を受けて、クラス全体が明るく返事をする。

 終始そんな雰囲気でHR、その後1時限目へと移っていく。

 




 1時限目が終わった。

 授業の間、拓人は幾度となく挙手と発言を繰り返し、その度にクラス中から様々な意志を含んだ視線を浴びていた。


(またかよ……)

(……チッ)

(ここまで来るとすげぇわ)

(頭良っ!)

(脳みそ分けてくんねぇかな)


 一学期初期に比べると、悪意を含んだものの他に、そうではないものも含まれているため、少しだけなら拓人に対する改善しているだろう。

 まあ、彼が何か行動をしているわけではないだろうが。


「(周りから疎まれるようなマネしなきゃいいのに)」


その様子を見て、ため息をつきながらそう思う。何度そう思ったことか。ちなみに、10分休みは特に席から動いていない。2・3時限目も同じような感じだった。




 4時限目は体育だった。うちの高校は一学期中間考査の前に体育祭があり、それが終わったため、しばらくの間は基本的に男子はバスケやソフトボール、女子はバドミントンやバレーなどを中心に自由な競技をしている。

 

「(遥輝君は他の男子に交じってバスケで無双してるけど、拓人は独りでシュート練習してる。……あ、入った。)」


 これも、予想通りというか、やはりぼっちの拓人だった。

 時折、女子や他の男子の方からボールが転がってきて、その度にボールを真っ先に取りに行って手渡しで返している。男子に対しては投げていることが多いが。

 彼のシュート練習を見ていると、意外に成功率が高い。


(そういえば、デートの時に運動神経は良い、みたいなこと言ってたな)


そこまで言って、彼の顔に躊躇なく触ったこと、彼の髪を上げた時の素顔がいつもより格好よく見えたことを思い出し、少しだが、頬に紅が差す。と、


「春川さん、大丈夫?運動して少し疲れた?座ってていいよ。頬少し赤いよ?」


クラスメイトの女子生徒が1人、そんなことを言ってきた。

 どうやら本当に赤面していたらしい。しかも見られた…。


「あ、いや、これは別のことだから大丈夫だよ。心配してくれてありがとね〜」


「別のこと?」


「あ、こっちのこと」


「そう」


「うん」


やっぱスキンシップ激しかったかな……


「(てか、やっぱり拓人ってイケメンだよね?本人は中の上とこって言ってた気がするけど……少なくともクラスの中じゃ上じゃない?)」


途中からボールを持ったまま立ち尽くすわたしだった。

……私は何してたのかって?考え事しながら体育は危ないからね?ぼっちで壁にボール転がしてはぶつけを繰り返してたよ……



「春川さん…一心不乱に壁にボール転がしてるぞ?なんかあったのか?」

「知らん」

「相変わらず淡白だなお前」

「どうも」

「褒めてはいないが」


このくだり、もはや現実でも2次元の世界でも、誰もが知っているであろう、テッパンのネタである(テッパンだぞ。TOPPA○ではない)。「クレ○ンしんちゃん」でも、齢5歳の男児が友人と会話の中で繰り返しているほどである。


「俺のどうもには意味は無いぞ」

「だろうな。あったらマジでヤバいやつだろ。そいつ。」


ここはなんとなく、適当に変な返しを入れてみるか。俺は、たまにこういう思いつきをする。それで、遥輝の反応を見ることを密かな楽しみとしている。


「は?」


俺は基本、気ままに生きるだけだからな。そうしたからと言って、俺の未来は何ら変わりはしないだろうし、誰の迷惑にもならない範疇でやっているから別にいいのだ。


「……は?」


同じ言葉を返された。まあ、そうだよな。突然意味がわからないことを言われたら、誰だってそうなる


「冗談だ。」

「……くだらな……」


ここまでが俺と遥輝の基本的な会話の一般的なケースである。正直、俺もくだらないとは思う。




このような流れで、交際関係にある男女は、お互いの存在を意識しながらも積極的に関わろうとはしないのであった。




……まあ、陽菜の方は、自分の彼氏とその親友に訝しげられていたのに気づいていなかったのではあるのだが。











チャイムが鳴り、教室に移動したあと。弁当を食べる時間になったが、


「拓人。お前、今日もコンビニのおにぎり1個だけか?しかもツナって。意外に子供みたいな舌だよな」


「うるせぇ。」


「俺の卵焼きあげちゃる!お前、甘い味付けの方好きだろ?」


「ちゃるってなんだよ。まあ、甘いものが好きなのはそうだが。どちらかといえば甘党だからな、俺は」


(ふーん……甘いものが好きなんだ)


私の席は拓人より後ろの方の横列の席だから、観察しやすい。さすがに前の方だったら授業中は観察できない。後ろをじーっと見てるただのヤバいやつになるからね。


ツナおにぎりと親友からの具を食べ終わったあと、彼はどこかに歩いていった。


「あ、ちょ、ちょっと待って」


バレないように気をつけながらも、急いで拓人の後を追いかける。

 観察していて思っていたが、やはり歩くのが早くて、少し小走りっぽくなってしまう。それを考えると、デートの時、彼は歩く速度を私に合わせてくれていたのだろう。やはり優しい。

 拓人の行先は図書室だった。扉の辺りから中を伺おうとしたその時、


「なにやってんだ?」

「……え?」


自分が朝から観察していた拓人が扉から若干離れた位置からこちらを呆れたような目で見ていた。


まさかバレた?


「あ、……いや〜、ちょっと借りたい本があってさ?」

「じゃあなんで中を伺うようにそんな縮こまってるんだ?」

「……それは、ちゃんとカウンターに人がいるかな〜って思ってさ」

「朝から俺を見てたのは?」

「……」


…………どうやらバレてたらしい。


「ハイハイ、そうです!拓人のこと追いかけてました!ついでに言うと観察してました!なんか文句ある!?」

「なんで逆ギレする?」

「してません。私あなたの彼女なのでストーカー行為しても問題ないです。」

「なぜ敬語?キレたら敬語でまくし立てるタイプか?」

「違う!」

「それと、彼女だからってストーカー行為したら俺じゃなくても引くぞ、さすがに」

「うっ…」

「で?なんでストーカー行為してた?」

「……」

「なんで」

「……た…がどん………たし…たから…」

「……なんて?」

「だから、拓人がどんな人で、どんな日を送ってるのか確かめたくなった……から」

「……」

「何?なんで何も言わないの?」

「いや、春川にしてはちゃんとした理由だなと」


なんだコイツ?彼女になんて言い草だ(陽菜)


「私にしてはってどゆこと?」

「春川は春川だからな」

「答えになってない」

「真面目に答えてないからな」

「ちゃんと答えて」

「めんどい」

「自分から話を展開しといて"めんどい"!?」

「あぁ」

「うわ」

「俺は気分で生きてるからな。妹と遥輝関係以外のことはな」

「……ハァ」


なんていうか、腹立ってきたけど、呆れて何も言えなくなってしまった。


「もういい」

「そうか」

「うん」

「じゃあ、俺をストーカーしようと思った理由は?」

「人の質問に答えないくせには自分は質問するの?」

「まぁな」

「うわ、ヤバいまではいかないけど、拓人ってすごい面倒な人だね。……ただ拓人に思ったより興味がでてきたから」

「その理由は?」

「ねえ。さっきから"理由は?"ばっかでウザイ」


ほんとになんだコイツ?


「ソーリー」

「ふざけてる?」


聞かなくても分かる。コイツはふざけてる。


「いや、真面目だ」

「なおさら悪いね」

「そうだな」


……ホントに呆れる。でも……


「やっぱり思ったより人間っぽいね」

「俺の事AIだと思ってたのか?」

「てっきりドラ○ンボールに出てくる人○人間16号タイプかと」

「アニメ見るのか、。あまり見ないタイプかと。確かに自然は好きだな。そいつ死んだけども」

「そうなんだ。アニメ見たのは昔だけだけど」

「ふーん」


思ったより会話が長引いた。ただストーカーしてのがバレただけだったのに。

 腹は立ったけど、やっぱ彼との会話は気兼ねなく話せるから楽しい。他の男子は下心丸出しでこっちの出方を伺ってくるような行動しかしてこないから。そういう面で見ると、本当に彼との会話はとても新鮮だ。


キーーィンコーーォンカーーン


「チャイムなった。戻る。羽崎さん、申し訳ないけど、本運ぶの放課後になった」

「ン。大丈夫。今週末までだから。むしろ手伝ってくれるだけでありがたい」


ん?カウンターに誰かいたっけか?


「そうか」

「ン」


うん、やっぱいるね。会話してるし。身長は私より少し低い、かな?ボブカットで眼鏡をかけた女子だった。多分他クラスだろう。うちのクラスにはいなかった……ハズ……


「春川のせいで出来なかったから手伝えよ?」

「え?私?」

「間違えた。俺と春川の責任だからな」

「あ、はい。ごめんね(存在に気づかなかったのと、仕事遅らせて)、羽崎さん?」

「ン、大丈夫。(……グッ)」


 彼女は、右手をこっちに向けて、親指を立ててきた。なんか可愛い。



ということで、私の恋人に対するスト…間違えた、観察は他の人に迷惑をかけて幕を閉じた。それと、羽崎さん、ごめんなさい。

 あ、放課後にすることになった仕事の内容は、廃棄処分になった本の在庫処理だった。なんでこんなに溜め込んだんだって言うくらい多くて、思わぬ重労働だった。私の恋人はたんたんと機械みたいに動いてたけど。






________________________


ちなみに、羽崎さんはその場で出したキャラです。その割には結構好きなキャラになりそうです。ことある毎に出そうかな

 執筆していて思ったけど、なんか文の書き方変わった?自分だと分からない……

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