第10話 A{6,156}シナン 決断の時……

――TIMES_A{6,156}――

 2024年9月22日(日)16:27


 蘇った。

 道端にいた。


 スマホを出して時間を確認する。


 9月の22日、日曜日、16:27


 6日前に戻った。

 ステータス欄を確認する。


 現在の龍玉は4個……。


 水曜日と、金曜日で、3個稼いで、あと一回だけ使えるけど、たぶんもう……終わりだ……。


 どうしたらいいんだ……。



 とっ、ここはどこだろう。

 色々必死で頭が回らないし、前の日曜日のこの時間何してたなんて覚えてないし……。


 あれ、ここは、宇佐美の寮の近くだ。


 やつはいるのか……。


 寮の中にやがった。

 バカでかい気だ。


 逃げるか。

 それとも一か八か奇襲を……。


 あれ、もう一人の気を感じるぞ。

 これは……つっちゃん……。


 動揺して、もごもごしてると、寮から二人ともが出てきた。


 名残惜しいように、さよならをする様子で別れる二人。

 宇佐美は寮の中へと戻っていく……。


 なんだろう微妙につっちゃんの服が乱れてるような……。

 一回服を脱いで、また着た感じだ…………。


 あれ、なんだろう……。

 ワタシのこの感情……。


 そして、ワタシは、宇佐美の住んでいる寮から帰るであろう、つっちゃんの後を付ける。

 ワタシの心の中に何かどす黒いものが発生したような気がする……。


 つっちゃんが人気のない所へ来た時に、後ろから腕を掴んだ。


「つっちゃん、どういう!?」


 あっ、やば、つっちゃんに触れちゃった。

 頭に何か入ってくる…………。


「きゃっ。なんですの? 東野先輩……。シナちゃん? あっ…………ワタクシに触ってしまったの……ですの……」


 つっちゃんとバイパスの繋がっているワタシは、触れてしまうと、ワタシの記憶はつっちゃんに流れ込み、つっちゃんの記憶はワタシに流れ込んで来る…………。


 大量の情報が頭の中に入って来て、気持ち悪い……。


 えっ、宇佐美は、タイムリーパー??


 その情報記憶(きおく)の中にとんでもない情報が紛れ込んでいた。


 目の前には、少し、ぼーっとしてるつっちやんがいる。

 驚きのあまり、つっちゃんを見つめた。


 つっちゃんも、意識が混濁してるのだろうか。


 ワタシの記憶が流れ込んだんだものね。

 死に戻りしてるワタシの記憶が……。


「ウサ先輩が……、シナちゃんを……。 なんで……」


 つっちゃんはそのまま気絶してしまった。


 ワタシは意識が少し朦朧とするが、魔法少女に変身をしてつっちゃんを背負しょって自分の家へと帰っていった。


 背負っている間にも互いに互いの記憶が流れ込む……。


 つっちゃんの中に、宇佐美からつっちゃんに伝わった記憶がある。

 それがワタシに流れ込む。


 新鮮さが少ないが、異相イソウさんの記憶もある。

 それもワタシに流れ込む。


 他人の記憶をつっちゃんを経由して受け取る……。

 感情までは分からない。

 記憶が伝わってくる……。


 家につき、ベットにつっちゃんを寝かせる。

 ここで、ある問題に気付いた……。

 

 ワタシの記憶がつっちゃんに入っている……。

 宇佐美の記憶がワタシに伝わったように、宇佐美と、つっちゃんが触れ合えば、ワタシの記憶――ワタシが死に戻りをしていることが宇佐美に伝わってしまう……。


 さらに、今は死に戻りすらできず、水曜日と金曜日に沸くエグゼキューショナーを倒さなければ龍玉が溜まらないので出来ない……。


 もし、龍玉が溜まるまでに、宇佐美がワタシの秘密を知ってしまったらどうなるか……。

 つっちゃんから、伝わってきた断片的な宇佐美の記憶によると、宇佐美はまだ木剣を入手してない。


 土曜日までのどこかで入手するのだろう。


 なので、龍玉が溜まり、死に戻りができるようになる金曜日まで、つっちゃんと宇佐美を会わせるわけにはいかない……。


 もし、ワタシが死に戻りできない状態で、ワタシの情報が宇佐美に知れてしまったら、



 そして、ワタシの勝因が見えた……。

 つっちゃんから伝わって来た記憶により、宇佐美の秘密を握った。

 もう一度、死に戻りができれば………………。


 9月21日 の 土曜日の14時20分…………。


 それで……、問題はどのように宇佐美とつっちゃんを合わせないようにするかだけど、宇佐美には相手を探しだす能力がある。


 おそらくだが、地球上のどこにいても探せるのだろう。

 そのうえ、ぶっ飛んだ移動力。

 どんなスキルを使えばあのようなことができるのか……。


 ポルトガルにすら、やって来て、部屋の中にいたワタシを……。


 正直、つっちゃんを探しに来た宇佐美からつっちゃんを隠す方法が思いつかない……。


 ならばいっそのこと…………。

 そんなこと…………ワタシに…………。


 つっちゃん……………………。

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