タヌキの子が絵を描いて、いじめられたりもするけれどやっぱり絵を描くのを辞められない話

澄ノ字 蒼

第1話 始まり始まり、タヌキの子くんとカラスくん

 タヌキの子は鳥獣学校に通っています。茶色いもさもさとした黒っぽい毛並み。眠たそうな目。60センチくらいの小さい背丈。それでいてたくさん食べて大きく育ったお腹。そんなタヌキがタヌキの子です。



鳥獣小学校は公立小学校でこの間、建立50周年記念祭を行ったばかりの古い学校です。玄関の脇にはこの小学校を建てたとされるカラスノスケの銅像が建っています。カラスノスケがたくさんのマキを背負い、書物を読んで歩いている姿の本の一ページが銅像の姿になっています。カラスノスケは昼にマキを運ぶ仕事を行い、夜はろうそくの火を灯し、書物を読み勉強していたのだそうです。そして村がききんになったときに、その書物の知識をもとに蓄積した能力で村を救ったのだそうです。



ここでカラスノスケは教育の大切さを実感しました。とまあ、それで基金を募って建てたのがこの鳥獣小学校です。



 今は初夏の季節。桜の花々が散り終わり、若いうす緑色の若葉が生えそろう。少しずつ気温が暖かくなり眠気を誘います。



 その一室ではいつもの通り授業が行われていました。


「110足す120は?」


 教壇に立った初老の茶色っぽい毛並みをしてつぶらなひとみをもった、イタチ先生が教科書を片手に持って周りを見渡します。ぱたぱたとしっぽをゆっくりと振っています。ぐるりと見渡すと一人の生徒を当てました。

「カラスくん。解けますか?」

「はい。230です」

 イタチ先生はパチパチと手をたたきます。

「正解です」

 周りの生徒たちからも

「すげえ」

「やったね」

 カラスくんは両手でブイの形を作って、

「へへへっ」

 と笑います。カラスくんは真っ黒い羽毛をはやして目は挑戦的にするどい目をしています。全体的に小柄ですがぴょんぴょん飛び回ってリーダーシップをとる。そんな子供です。イタチ先生はほほえましくその様子を見ていましたが、今度は、



「タヌキの子くん!」



 タヌキの子は机で何かを描いています。



「タヌキの子くん!」



 タヌキの子は先生に呼ばれたのに気づいてふぁっと声をあげます。そうして、

「はい!」

 イタチ先生は、

「また漫画を描いていたのですか!」

「いえ・・・・・・」

「その前にまず立ちなさい」

タヌキの子は椅子を後ろにずらして立ち上がります。椅子ががたがたと音を立てます。イタチ先生がなおも問い詰めます。

「じゃあ何をしていたのですか?」

「漫画を描いていました」

 周りがはははと笑います。

「まったく、漫画ばかり描いていないで勉強もしなさい」

「すみません」

「じゃあ、座ってよし」

 タヌキの子は半笑いの泣きそうな顔をしながら

「すみません」

 と言いながら座りました。

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