第5話 エルフちゃんとクラスへ向かう

 手をつないだまま校門を通過。――県立埼台東高校。


 俺はなんで手をつないだままここまで来てしまったのか。

 それは魔性のおっぱいが腕に当たっているのから逃げるのを忘れたからだ。

 手を離したら当然この感触も離れてしまう。惜しいと思ってしまったのだ。


「おはようございます」

「おはよう」

「おはようございます、え、誰」

「うわぁ美少女、すげえ」

「金髪碧眼だと」


 校門前で挨拶運動とかいうのをしている生徒会の人が呟いた。

 でも誰も知らないのだろう。


 彼女もなんなら外務省の人が手続きとか手伝ってくれたらしいので、今日初登校らしいし。


「四月上旬だったらサクラが咲いてて綺麗なんだけどね」

「はいっ、あの動画で見ました。サクラ……すごく綺麗で、私憧れちゃって」

「そっか」

「来年、楽しみにしていますね。一緒に見ましょうね」

「おお」


 来年か。もう来年のことなんか考えていると鬼に笑われてしまいそうだけど。

 そっか、ずっと一緒にいてくれるってすでに思ってるんだ。

 なんだかそれだけでもうれしくてニヤついてしまいそう。


「あ、玄関あれ靴箱まだ割り当てられてないから」

「上靴なら持ってきましたぁ」

「そっか、なら適当に履き替えようか」

「えへへ、ちゃんとスーパーの袋もあるので靴入れて持っていきますね」

「準備いいね」

「はいっ。外務省の人結構親切で。というか国際問題が怖いみたいで」

「あはは」


 エルフの最重要人物だもんな。

 他の国は自国が火種になるのを恐れてどの国も受け入れを拒否したというのに。

 永世中立国でさえ怖がったっていうくらいだから相当のはず。


 引っ張りダコということも考えられるが逆なんだな。

 彼女は火種になる。どういう意味か分からないけど、やっかいごとをわざわざ自国へ呼び込みたい国などいなかったと。


 うっ、靴を履き替える彼女を見守っていたんだけど、下向いて戻すと胸がぼいーんって揺れてすごい。

 こういうついうっかり運動するところを見ると、ばるんばるんするから侮れない。


 エルフだけど貧乳じゃないんだよな。

 俺はどっち派かというと難しいな。ちっぱいにはちっぱいの良さがあると思っているし。

 大きいのは大きくて破壊力がすごい。

 どちらも並べて乳比べしたい。


 さてよこしまなことを考えているうちに靴を履き替えた。


「んじゃいくか」

「はい」


 俺のクラスって決まっているらしい。

 普通はどのクラスになるかは抽選みたいなところがあるが、国際問題になる特例で俺と一緒ということだ。


「一年二組だね」

「一年二組、ですね」

「そそ」


 階段を上がりクラスを一組から順番に見て二番目の教室に入る。

 ガラガラ。


 引き戸のドアを開けると中から視線が集まってくる。二度見してくる生徒たち。


「おい、山女やまめ、どういうことだ。金髪碧眼巨乳とか卑怯だろ」

「だよな。そーだーそーだ。山女、おまえ卑怯だぞ」

「ぱつきんちゃん、おはよう、仲良くしてね」

「というかなんか耳が尖ってませんか。え、エルフとか言わないよね」


 教室内が一気に騒がしくなる。

 質問は順番にしてくれ。


「はいっ、今度、このクラスでお世話になるエルフ族のラーラミン・ハイッペロット・トワイライトです。ララって呼んでほしいですぅ」

「ララちゃん。めっちゃくぁわいいい」

「……結婚したい」

「ララちゃんね。よろしくー」


 男女とも興味津々だ。


「エルフ族って言っていいんだっけ」

「あっエルフ族っていうのは秘密で、あの、その、アルクメニスタンからの留学生ということで。秘密ですからね。言っちゃダメですよ。ううぅぅ」

「分かった、分かったよ」


 ばれてーら。エルフなのがソッコー、バレる。

 クラス中が苦笑で溢れかえった。

 こういうときはみんないいやつらばっかりで助かる。


「金髪碧眼なのは遺伝ということで。あの耳はですね、突然変異ということで、一つ」

「了解、分かったよララちゃん」


 そういうことにしておいてくれ。


 席がすでに増えていたのでそこへララちゃんが座る。

 南側で一番左奥だ。いわゆるベランダのドアがある席。

 その右隣はなんと俺という。


 先週の席替えで今度はいい席になったなと思っていたが、うむ。

 これ、操作されてるんだろうな。

 座席はランダムですとは言わなかったし、誰と誰は離しておくとかあるんだよね。

 高校生でも仲が悪かったり、逆に仲が良くてうるさい奴らとかは離される。


「起立、礼。おはようございます」

「「「おはようございます」」」

「わっ、わっ、お、おはようございましゅ」

「「あははは」」


 ララちゃんが遅れて挨拶すると、その高くて可愛い声が教室内に響いた。

 みんなちょっと笑うけど、別に嘲笑しているわけではない。

 なんだか温かい雰囲気になってよかった。


「はい。今日からなんだっけアルクメニスタンからの留学生のララちゃんが一緒に勉強します。仲良くしてね」

「「「はーい」」」

「はいララちゃん前に出てきて一言よろしく」


 小学生みたいに元気に返事をする高校生たちを見て先生も満足そうに頷いた。

 ちなみに先生は二十四歳の女の先生だ。

 茶髪のセミロングで童顔なので人気がある。話し方も優しい。

 ママにしたい先生ランキング一位である。


 ララちゃんが一番後ろの席から前に出てくる。


「はいっ、よろしくお願いしますっ」


 ララちゃんが元気よく挨拶して頭を下げる。

 そうするとおっぱいがぼいんと揺れて、男子たちがざわめいた。

 女子たちもしょうがないな男子はというふうに思ったようで呆れ顔だ。


 まああのおっぱいには誰も勝てない。

 なんだかんだおっぱいに助けられているんだよな。

 エルフの物珍しさを全部おっぱいが持っていってしまうので、エルフだからって変な目で見る暇がないというか。


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