2次会 泡波、八海山、久保田、獺祭

 全国品評会が終わっても、酒姫部の部活動は続いている。

 たとえ酒姫になれたとしても、日々練習をして、より良いパフォーマンスを実現するために。


「どうぞ、八海さん。飲み物です」

「すまない。いつも助かる」


 八海さんのキリっとしたたたずまい。

 白小路さんは、とろんとした目で八海さんを見つめているようだった。


 大会をきっかけにして、さらに2人の親密度は増したようであった。

 この3人の恋の行方、結局、白小路さんとくっついたのは、八海さんだったのかと納得した部分もあった。


 全国品評会の後も、推し活部も酒姫部の練習に混ぜてもらうこともあり、今日は合同で練習が行われていた。

 体育館で、また見学の日々であった。


 白小路さんは、今度は泡波さんに飲み物を届けてあげていた。

「レイ、はいどうぞ!」

「ありがと」


 八海さんと白小路さんも良いのだが、泡波さんと一緒にいても、白小路さんにはお似合いに見える。


 こちらも特にギスギスした関係になっていないようで……。

 結局どうなったんだろう、恋の行方は……。


 白小路さんが泡波さんに何気なく会話を振っている。

「練習終わったらどこ行きたい、レイは?」



 泡波さんが悩むようにして答えた。

「……うーん。八海さんにも聞いてみよう。3人とも、みんなが行きたい場所がいいよ!」



 ……!?

 ……泡波さんが八海さんのことを考えている!?



「そうだね。いっつも私の行きたいところに合わせてもらっちゃってるもんね。八海さんに聞いてみよう」



 ……これは、この3人はどういう関係なのだろう……。


「八海さん、どこ行きたい?」

「そういうレイは、どこ行きたい?」


 ……!?!?

 ……八海さんが泡波さんのことを考えている!?!?



 何だろう、八海さんと泡波さんが2人でしている会話。目線。

 なんだろう、恋する乙女の目をしている気がする。


「二人とも譲り合って決まらないじゃん。また私が決めるのは嫌だからね?」


 白小路さんも会話に混ざり、3人が3人共に頬を赤らめていた。

 当人たちにしか分からない関係というものがあるのだろう。

 ……気にしたら負けな気がする。そっとしておこう……。



 そんな中で、白州先生の檄が飛んでくる。

「そこの3人! 練習まだ終わってないからな!ちゃんとやれ!」


「はい!」



 酒姫部マネージャたちは、そんな3人の関係をうらやんでいるようで、小声が聞こえてきた。

「……残るは久保田さんだけかしら」

「……白小路さんがうらやましい。2人ともゲットなんてうらやましい!」



 そういうことですよね、やっぱり……。

 僕には分からない世界だと思った。


 そんな中で、獺さんが頬を赤らめてる3人に向かって行った。

「私も入れてくれよー! どこか美味しいお店行くなら一緒に行こう! 久保田もいけるらしいから! ‌な? ‌みんなで行こう!」


「ちょっと……、勝手に獺さん、私と2人でお買い物しましょうと言ってたじゃないですか……」

 久保田さんも話に混ざり、何やらこちらでもピンク色の空気が感じられた。


「久保田は、私と2人きりか良かったのか? 他のメンバーが入らない方が良いのか?」


「ち、違いますよー!」


「最近男から相手にされなくなったそうじゃないか」

「誰のせいだと思ってるんですか!」


「まぁ、そうは言っても恋愛禁止だからな。私たちで我慢するんだ。私は久保田の気持ち、真剣に受け入れるぞ!」



 獺さんの態度に、マネージャーたちがこそこそと話し出した。

「獺さんの言う通りかも知れない。酒姫になったってことは、男の人が寄ってこないし、公式で久保田さんを狙っても許されるわ! ‌女同士なら酒姫でも許される!」

「これは、チャンスしかないわね!」


 マネージャーたちは意を決して獺さん久保田さんの方へと向かっていった。

「私たちも一緒に遊びに行かせてくださーい」


「あはは。久保田が望んでたハーレムたぞ? ‌やったな!」

「全部女の子じゃないですか。私が求めるのはそうじゃないんですよー!」


 酒姫部が怖い世界ということは聞いていたけど、やっぱり怖いものだと思った。


 部長は、そんなやり取りは気にせず、ぽやぽやと茜さんを眺めて悦に浸っていた。


「やっと、茜氏が酒姫になれたねぇ……」

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