【完結】奴隷商人に転生したので、奴隷商人をやめた俺。美少女たちに優しくすると、俺の家から誰も出て行ってくれない。

昼寝部

第1話 ウチらはご主人の近くにいれるだけで幸せなのに

 俺『風早礼央かぜはやれお』は、死後の世界で神様に会い、神様からのお願いで、地球ではない異世界に転生した。


 そして、奴隷商人として数々の悪行を重ねてきた『レオナルド•ザーク』として生活することとなった。


 ちなみに、神様の手で、レオナルド•ザークは肉体ごと消されたため、地球で過ごしていた俺の体で生活している。


 そのため、レオナルドの太った体型を、痩せ型の俺が誤魔化せるか不安だったが、「ダイエットした」との言葉で問題なく過ごせている。




「なんか暇だなぁ」


 俺はリビングのソファーに腰掛けて独り言を呟く。


「レオくんには、目の前で山積みになっている書類が見えないのかしら?」


「あー、うんうん。見える見える」


 現実逃避していた俺を現実へと引き戻したのは、胸元が大胆に開いた忍者装束を着ているルビア。


 目がキリッとした美少女で、赤い髪を腰まで伸ばしている。胸がとても大きいため、目のやり場に困っている。


 俺がルビアの言葉に対して雑に返答していると…


「ご主人様。少し休憩されてはいかがでしょうか?」


 そう言って、メイド服を着た女の子がテーブルにお茶を準備してくれる。


「おぉ、ありがとうリリィ」


「いえ、ご主人様のメイドとして当然のことをしたまでです」


 俺にお茶を準備してくれたのはリリィという名の女の子。


 白い髪をツインテールにしており、頭からは猫耳が、お尻からは尻尾が生えている。可愛らしい美少女で、この世界では珍しい猫耳族だ。


 俺がお茶を飲んで一息ついていると…


「ご主人!疲れたなら、ウチが癒してあげます!」


 そう言って、リリィではないメイド服を着た女の子が、俺の肩を揉んでくれる。


「ありがとう、ミュア」


「ご主人は気にしなくていいですよ!これはメイドの仕事ですから!」


 俺の肩を揉んでいるのがミュアという名の女の子。


 リリィの双子の妹で、白い髪をショートカットにしている。リリィと同じく猫耳と尻尾が生えており、可愛らしい美少女だ。


 もともと3人は奴隷となるため、レオナルド•ザークの元に連れて来られたが、俺は本物のレオナルド•ザークでないことを説明して、奴隷にせず、自由に生きていいこと勧めた。しかし、なぜか3人とも俺の家に残ることを選んだ。


(まぁ、いきなり「自由に生きて」と言われても、住むところとかがなくなるから、俺の元から出て行きにくいよなぁ)


 そう思ったため、俺は、3人が良きご主人と本当の奴隷契約を行い、なに不自由なく暮らすことのできる場所を確保できるよう、頑張っているところだ。


 俺はメイド2人に癒してもらい、目の前にある山積みの書類に目を通す。


 この書類には、奴隷を買いたいと言ってきた人たちの素性が書かれている。


(お!この人は良さそうだ。家柄が良くてお金もある。性格も問題なく、何より友達や家族を大切にするって点がいいな。この人なら奴隷を大切にしてくれるだろう!)


「みんな!この人なら良いご主人様になれると思うんだけど、どうかな?」


 俺はそう言ってみんなの反応を確認すると…


「ついにこの日が来てしまったのですね。奴隷になる運命から救ってくださったご主人様へ、少しでも恩返しができればと思っておりましたが……私はご主人様のメイドを務めるのに相応しくないのですね」


「ご主人……ウチも要らない子……ですか?ご、ご主人のところにいられるのなら、エ、エッチなことも頑張ります。なので、捨てないでください」


 リリィとミュアの猫耳と尻尾に元気がなくなる。


「レオくんがそう言うなら、私はレオくんの元から去るわ。その人のところには行かず、どこかの森で死ぬことになるけど」


 ルビアはいつも通り、クールな口調で言うが、表情から残念なことが窺える。


 俺は3人の様子を見て…


「ご、ごめんね、みんな。今のは冗談だから安心して」


 冗談だと伝える。


 俺の言葉を聞いた3人は…


「ホントですか!良かったです!私、これからも誠心誠意、ご主人様に尽くして参ります!」


「ウチもご主人のお役に立てるよう頑張ります!」


「ま、まぁ、レオくんが私たちのことを見捨てるとは思ってなかったわ」


 猫耳と尻尾に元気が戻るリリィとミュア、そしてホッとした表情になるルビア。


(はぁ……この方法もダメか。どうやったら3人とも俺の元からいなくなってくれるんだろう。絶対、俺の家にいるより、いい生活ができると思うんだけどなぁ)


 俺はそんなことを思いながら項垂れる。


 そのため…


「危なかったですね。また、ご主人様が私たちを他の方に引き渡そうとしてました。まぁ、今回もこの方法で乗り切ることができましたが」


「ホントだよ。ウチらはご主人の近くにいれるだけで幸せなのに」


「えぇ、その通りだわ。ホント、いつになったら私たちがレオくんから離れる気がないって気づくのかしら?」


 3人の会話は、俺の耳に届かなかった。


(俺、神様からのお願いを引き受けない方が良かったのかな?)


 そんなことを思いながら、なぜ俺がこの世界に転生し、レオナルド•ザークとして奴隷商人をすることになったかを振り返った。

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