第27話 太陽が登る山④
「ナリさん、もしかして最初から吸い込んでいれば解決したのでは?」
「結果論だよ! コツコツやろうという発想がなければきっとこの結果は出なかった!」
「す、すごい自信だ! 確かにそうかもしれない気がしてきました」
でしょー。
トムの疑念を一瞬で晴らす私。
じゃあいつものを行ってみよう。
「吸引!」
キュイイイイイイイインッ!
◯お腹の中
あられ×たくさん
まばゆい銀の光
光
おやあ……?
あられしか無いのだが……?
私の見つめる先では、あられが吸い込まれた跡に顔を出した残骸と、再びそれを覆い隠すようにザラザラと崩れてくる、あられが見える。
「だ、だめだこれ。あられが多すぎる。あられをどうにかしないと……!!」
吸い込んだあられを使って、あられをどうにかするものを錬成する……。
私はちょっと考え込む。
そして、ポンと手を打った。
「壁、作ろう!」
◯レシピ
あられウォール
ピカッと光った私のお腹から、あられを組み合わせた壁が出現した。
これを残骸の右横に設置。
不思議な力が働き、あられウォールはあられをかき分け、あられの中に設置された。
もうあられだらけでゲシュタルト崩壊を起こしそうだ。
だけど、ちゃんとあられウォールは右側からのあられ雪崩を受け止めている。
これをあと三回繰り返すだけだ!
「吸引!」
キュイイイイイインッ!
「錬成!」
設置!
「吸引!」
キュイイイイイインッ!
「錬成!」
設置!
「吸引!」
キュイイイイイインッ!
「錬成!」
設置!
私と残骸が、四方をあられウォールに囲まれた状態になった。
既に、足元にあられは無い。
「ふう……やっとここまで来たか」
「ナリさんが自分を閉じ込めましたよ!」
『スイスイ』
外で男子たちが私の奇行にやいのやいの言っている。
真に重要な行いは、途中から見ると奇行に見えたりするものなのだ。たぶん。
「改めて、吸引!」
キュイイイイイイインッ!
◯お腹の中
操作盤の残骸
まばゆい銀の光
光
◯レシピ
赤き太陽の道の操作盤
よし、来た!
「じゃあ、錬成!」
光が生まれ、吸い込まれた残骸が元の姿に再構成され、出現する。
あられウォールを解くと、またあられがなだれ込んできて、あられの勢いで操作盤が壊れるかもしれないから、今はこのまま。
私は操作盤をぺたぺた触った。
ボタンらしきものはない。
「タブレット、タブレット」
タブレット端末をいじって、操作盤の使用方法を探す。
ふむふむ、タッチタイプか。
どうして反応しなかったんだろう?
じっと指先を見る。
あられの粉がついていた。
なるほど……。
私はぺろりとあられを舐めた。
そして、操作盤を改めて触る。
反応があった。
このあられ、静電気防止効果とかあったりするのでは……?
光る操作盤をペタペタしていると、地面が揺れ始めた。
「うわーっ、動き出しましたよ! 一旦離れましょうアメンボ!」
『スイスイ』
「ウグワーッ! 僕の頭を挟んで飛び上がったー!」
外ではなんだか面白そうなことをやっているなあ……。
興味はそそられるけど、私はこっちに集中!
魔王が戻ってくるかも知れないし!
『ええい、やっと戻ってきたわよ!! なーにをやっているのかしらーっ!!』
「ほんとに戻ってきたあ! 早く動いて遺跡! 早く早く!」
操作盤をペチペチする。
魔王は、壁の中で作業をしている私を見つけ、
『いたわね! 自ら逃げ場をなくすとはいい度胸だわ! うへへ、あたしが今から存分にあんたを分からせて……』
そこで、遺跡の展開が間に合った!
山の頂上が、半開きになった辺りで、地下のエネルギーラインと接続されたのだ。
溢れ出す、赤い輝き。
これが魔王と衝突して、彼女をまた吹き飛ばした。
『ウグワーッ!? ま、またなのーっ!?』
赤い光がそびえ立ち、吸い寄せられるようにもう一つの太陽がやって来た。
太陽は赤い光を浴びると、一回り大きくなり、輝きを強める。
これで、世界の太陽二つが本来の力を取り戻したことになる……のかな?
降り注ぐ赤い太陽の光。
あられが変化し、瓦礫に変わっていった。
それはゴロゴロと山の斜面を転げ落ちていく。
山だったものは、金属製の山形をした建物に。
これも塔か何かの一種なのかな? それともピラミッド?
赤く輝く太陽はゆっくりと動き出す。
そして、銀に輝く太陽と交差する。
そもそも、この太陽ってなんなんだろう?
コロニーを照らし出す照明か何か?
意思を持たない、コロニーの設備なのかもしれないけど、銀の太陽と重なり合う赤い太陽は、なんだか嬉しそうに見えた。
あれも案外、大きなリビングドールみたいなものなのかもしれない。
私を囲んでいた、あられウォールも崩れ落ちる。
瓦礫になってしまった。
これはもともと、赤い太陽の設備の周囲にあった建物や何かなのかだったりするんだろうか?
長い年月で壊れて、崩れてしまって、それがあられになったとか。
真実は分からないけれど、今やっと、この辺りも本当の姿を取り戻したのだ。
「ナリさーん!」
『スイスイー!』
トムとアメンボが降りてきた。
飛び立った途端に魔王がやってきて、二人で慌てて空をぐるぐる回っていたらしい。
無事で何より。
「さ、二人とも! 残る遺跡はあとひとつ! これで、この世界、アルケイディアを助けられるよ!」
「おおーっ!! ナリさんと旅立った時は、正直どうなるかと思ってましたが……。本当にナリさんは世界の救い主だったんですねえ」
トムが感慨深く、うんうん頷くのだ。
「よしてよ照れくさい。じゃ、最後のとこに行こうか!」
うへへ、と笑った私は、照れ隠しでアメンボマシーンに飛び乗った。
「ムギューッ! ナリさん、そこは僕の上ですー! ウグワーッ! 大きいお尻に押しつぶされるー!」
「失敬な! そんなに大きくありませんけど!!」
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遺跡巡りもラストですぞ!
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