前置き:皇帝と悪魔の対話

 陛下、地方叛乱の鎮圧、お疲れ様です。

 次から次へと……まあ、そう仰せになりたい気持ちも分かりますが、こればかりは致し方ありませんな。

 滅んだ国がいかに圧政を敷いて民を苦しめていようと、新興勢力というのは警戒されるものですからな。旧主に義理立てるやからをはじめ、自身の既得権を守るために武器を取る者はかならずおります。

 なおかつ、陛下の直属の民は騎馬民族で、人口が少ない。対するこの国の母体は農耕民族で占められており、人口は多い。ここでひっくり返せばこの国のすべてが自分のもの、なとど考える者はおりましょう。自分の実力を示しておけば、陛下の配下となるにせよ、有利に事が運ぶのではと考える愚か者もおりましょう。

 どんなに前の王朝が愚昧ぐまいでも、「いらっしゃいませ」とはいきますまいよ。

 面倒ではありますが、ひとつずつ潰して行くことでございますよ。よいように考えれば、新しい国の軍隊を受け入れるのに抵抗のある地方に、大規模な兵力を堂々と投入できるのです。無論、叛乱を鎮圧した後になりますが、その地方の豪族たちの収入源も解明できるでしょう。その地の有力者の健在なときは、そちらにおもねって口の堅い現地の民も、有力者が叩かれたあとでは新しい支配者の歓心を得ようと、こぞって情報を開示するものです。

 有望な換金作物のほか、塩、酒、茶、煙草、絹、染色に必要な素材、場合によっては麻薬などを生産し、資金源としている場合があります。徹底的に調べ上げて、その換金ルートを含めて、すべて握っておくことですよ。

 

 で、【課税の悪魔】であるところの私は、今回はどんな税の話をするのかと?

 このたびは物品にかける税についてお話ししようと思っております。

 なかには叛乱鎮圧の手段になるような税制もあります。

 これもまた、陛下の役に立つ税でございますよ。

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