第3話 入団試験編 千年裏真流(せんねんりしんりゅう)

「きゃーーー!!!」

ん?なんだ?

近くで女性の叫び声が聞こえた。

声のした方へ急いで駆けていく蒼蒔。

「ひぃ!ひぃ!バケモノ!」

女性の近くには今にも襲いかかろうとしている怪異物がいた。

「大丈夫か!俺がやっつけるから離れてろ!」

「はっ!はい!!」

大きさは10尺(約3m)ぐらい、二足歩行、手に生えた長い爪と全身を覆う体毛、口からは涎がダラダラと滴っていた。

クマみたいな怪異物だな、動きはそんなに早くなさそうだ。

「その女性は喰わせねえよ、熊野郎」

蒼蒔の拳から藍色の怪気が立ち込める。

「ぐるるるるぅ」

蒼蒔に気づいた怪異物は毛を逆立てて爪を振り上げて走ってきた。

「おせえおせえ!そんなんじゃ俺を喰えないぜ」

スパッ!

怪異物の振り下ろした爪が空を斬る。

蒼蒔はヒラリと身を躱して背に回り込んだ。

「後ろだよバーカ!」

「ぐるるぅ!!」

頭にきたのかやたらめっぽうに爪を振り回しだす。

「ハハハハ!当たらないねー」

余裕で避け続ける蒼蒔。

「さーて、そろそろやるかな」

藍色の怪気を出して構えをとる。

千年せんねんしんりゅう

左脚で地面を蹴り、右腕を振りかぶって怪異物の爪の間を通り胸元に入り込む、あまりの速度に怪異物はまったく反応出来ない。

いちの手・末摘花すえつむはな

怪気を纏った右の拳が怪異物の胸を貫き通す。

ズドンッ!、ズパッ!!

怪異物は次の瞬間身体から弾け飛んだ。

「ふ〜ん、けっこう弱かったな」

振り返ると女性は木の影に隠れて震えながらこちらを見ていた。

「やあやあ、もう大丈夫だよ」

女性は安心したように蒼蒔の方に歩いてくる。

「あっありがとうございます!!すっごく強くてかっこよかったです!もしかして御手守師団の隊士さんですか!?」

キラキラした目で見つめられて照れる。

「いやー、まだ違うって言うかー今から隊士になるんだけどね」

「応援しています!絶対なれますよ!」

「ああ!絶対なるよ!」

女性に見送られて再び歩き出す。


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