第14話 年下の彼

彼の婚活データは、かなり条件が良かった。

私より二つ年下で、まだ結婚対象として女性からの対象年齢内にあったはずで、高身長、理系の院卒、高収入。

引くて数多あまたのはずなのに、どうして残ってんの……?と思っていた。


言うなれば、人見知りのぶっきらぼうと職業柄のディベート口調、私服が個性的、ちょっと身綺麗さが足りない——あたりが素敵な女性陣の心に引っ掛からなかったのかもしれない、な〜んて思ったのだけど。


でも一番の理由はね、なんと言っても入会して間もなかったんだよね!!!


なんでも私と会う前に、3人しか会ってなかったんだって。

入会して、1ヶ月しか経ってなかったそうだ。


1ヶ月間に歳上ふたりと、同年齢ひとりの計3人とマッチングして、実際に会ったと聞いた。

年齢にしては、高確率で会えてたことになる。(先方から断られたらしいけど)


ここ、重要でね。

活動期間が長くなっていた自分の言い分としてはあんまり説得力がないかもしれないんだけど。


けっこう会ってきた経験から言わせて貰えば、入会直後の人のほうが圧倒的に印象がいいし、まとまる可能性が高い(オーネット発行の雑誌に載っていた成婚者の体験談を見ても、大抵入会して一年以内に婚約した人が多かった)んですよ。

いい意味で、まだスレてない。


『ずっと活動してますけど、なかなかいい人に出会えなくて』なんて、まず一言目に愚痴を漏らさないからね。

これを言ってしまうとね、「アナタもそのひとりですよ」って特大ブーメランが戻って来ちゃう。



結婚相談所での経験値が上がるとね……、理想が迷走するっていうか、せっかくよさそうな人と出会えても、ちょっとした欠点が目に突き出すともっといい人がいるんじゃないか、と思って「チェンジ!」の決断を下してしまう。


これ、とってもよろしくない。


慣れすぎてしまって、相手を深掘りする努力を怠ってしまうのね。

そういえば、破談になった人も入会して一年経ってないって言ってたっけ。

つまり、何年もいい人探しの継続をしている人より、入りたてのほうが真剣に探そうと言う気力が失せてなかった。

(じゃあ自分自身はどうなんだ、とツッコミ待ちをしつつ)


「自分がここにいるんだから、同じようにこの会に自分と合う相性の人が必ずいる」と過信、いや盲信くらいしてないと気持ちがくじけてしまってうまくいかないんじゃないかな。


結婚相談所って、自分が『商品と同じ』なのね。

相手に、いいと思ってもらえる長所がないと、手に取ってすらもらえない。

正直なところ、自分は特に容姿がよくもないし、図体もデカいし、手も足もデカいし、口も悪いし、百歩譲っても普通中の普通。そこそこきちんと親に育ててもらったけども、自分自身に取り立てて優秀な条件があるわけでもなかった。

ほかと同じように、きびしい世界に置かれていたはずなんだよね。



本当に、運とタイミングが良かった。




彼はやたらと、自分の友人に私を会わせたがった。

びっくりするくらい、次から次へと紹介された。


一年つきあった人とでも、そんなことは一度もなかったから意外に思えた。


最初に連れて行かれたのは大学の同部員だった人で、しかも弓道部内で知り合って、卒業したら夫婦になったという友人のお宅だった。

もう、子どもさんもふたりいる。


上の女の子と、一緒に遊んだ。


何故、子守り?と内心で思いつつも、彼が席を外した隙にこっそり旦那さんがやってきて、


「どこで結婚式挙げたい? 俺が言っといてやる」


って言われた。





えっ




え…………?





エエェ————————ッツ?!!???




そういうこと???????!!!

いや、どういうこと?!!?!???



私はなんて答えったっけな。

いやまだ付き合い始めて3ヶ月なんで、そこまで考えてないです、なんて色気もなく、すっとぼけた返答をしたかもしれない。



ダメじゃん!!!!!



畳み掛けるように、どんどん別の友だちにも紹介された。

大学の友人複数、海外ドラマのオフ会で仲良くなった複数など、バラエティに富んだ人たちだったけれど、皆彼のことをいいやつだと褒める。


今考えると、外堀から埋められてない???


策士?????




続く。

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