【完結】元ドラゴンは竜騎士をめざす ~無能と呼ばれた男が国で唯一無二になるまでの話

樹結理(きゆり)

第一章《旅立ち~試験》編

第一話 三度目の正直!転生!



 俺は二度死んだ。



 一度目の人生は若いときにあっさりと病死だ。

 日本という国に生まれ、普通の家庭に育っていたが、俺は幼い頃から病弱で、覚えているのはいつも病室だった。

 学校にもほとんど通うことなく、体調を崩せばすぐ入院、そんなことを繰り返し、そして俺は大人にもなれずに死んだ。


 なんなんだよ、俺の人生。こんな早くにあっさりと一生を終えてしまうなんてさ。ついてない。まあ、病室ばかりの人生で友達もほとんどいないし、つまらん人生だったんだけどさ。


 だからもし次に生まれ変われるとしたら、ぜひとも強い身体に生まれたい! そう願った。

 神様お願いだ、強い身体で、ちゃんと人生を全うしたい! 頼むよ!


 そう願った。


 うん、願ったよ? 確かに。えーえー、俺が願いましたよ、でもさ、限度っつーもんがない?




 二度目の人生は……ドラゴンだった。


 うぉぉい!! そりゃ、ドラゴン強いよ!! めちゃくちゃ強い身体ですとも!! そうだけどさ!!


 なんか違う!!


 俺が求めていたのはこんなんじゃなーい!!


 はぁぁ、なんでドラゴン……、とか思いながらも、仕方ないからまあ頑張って生きるよね。

 そう、頑張って生きましたよ。ドラゴン最強よ! なかなか楽しい人生かもしれない! とかも思ったよ!


 しかしそうは問屋が卸さなかったね、アハハ。


 ドラゴンだった俺は戦に巻き込まれた。あまりはっきりと記憶には残ってないのだが、どうやら勇者並みにぶっちぎりで最強の人の相棒だった俺は、その人と一緒に戦っていた。

 俺にはよく分からなかったが、どうやら国を賭けたでっかい戦だったようだ。

 その人を守りたくて必死に戦い、そしてその人を庇い死んだ。


 呆気なかったな。ドラゴン最強! ヤッホー! とか思ってたのに、意外とあっさり死んだよ。

 まあかなり激しい戦だったようだけど。だから仕方ないんだろうな。


 死ぬ直前、その人が涙ながらに俺に語り掛けていたのだけはぼんやりと覚えている。


『すまない、君をここに置いていくことを許してくれ』


『いつか我々はまた巡り合う。必ず。それまでどうか安らかに眠れ……』


 あぁ、顔が見たいのに見えない。俺はその人を心から慕っていた。


 その人が加護を唱えた瞬間、眩い光に包まれ、そして俺の意識は途切れた。






 そして二度あることは三度ある? それとも三度目の正直? まあどっちでも良いんだが、今現在、三度目の人生である。


 ここから俺の物語が始まる!!




 てな、冗談はさておき、まあそういう訳で俺には二度の前世での記憶があるんだよね。家族はそのことを全く知らないんだけど。


 三度目の人生、俺はドラゴンが治める国「ドラヴァルア」に生まれた。

 ドラゴンが治める国って言っても、俺や家族は人間だ。


 大昔、人間がまだこの辺りを支配していたとき、ドラゴンをも支配しようとし、捕獲し、調教し、ドラゴンは人間たちに飼われ一気に数が減っていったらしい。

 圧倒的に人間よりも強いはずのドラゴンが人間なんかに捕獲された理由は定かではないが、どうやら怪しげな魔導具を使っていたのでは、という噂があったらしい。なんせ五百年近く前の話だ。俺たちも昔話で聞くくらいにしか知らない。だから真相は分からない。


 そしてそれに怒り狂ったドラゴンたちはどうやったのかは謎だが、反乱を起こし人間たちと戦ったそうだ。そして人間たちに勝利したドラゴンは王を立て、国を作った。

 それが「ドラヴァルア」。

 だからこの国はドラゴンが支配している。


 しかしこの国には人間のような貴族なんかはなく、竜人か人間か、しかいない。ちなみに竜人とはドラゴンが人型へと転化した者たちのこと。王都には竜人が多いと聞くが、俺たちが住むような村にはほぼ人間しかいない。


 人間だからと迫害されている訳でもない。ただ竜人がやはり国を守るために先陣を切って戦うために王都に集中しているだけで、この国の王は竜人だろうが人間だろうが差別をしない。


 どうしたって竜人のほうが遥かに力が強いため、やはり上に立つのは竜人が多いのだが、しかしこの世界の人間は竜人に負けず劣らずそれなりに力を持っていた。


 竜人はドラゴンの姿か人間の姿でいる。身体は屈強で魔法のような技も使える、らしい。

 人間はというと、ドラゴンほどの屈強さはないが、男も女も身体能力に長けたものが多く、魔法が得意だったり、剣技が得意だったり、体術が得意だったり、と、皆それなりに強いのだ。


 したがってこの国は強さがものを言う国。強ければ誰であろうと王の元に召される。竜騎士なるものはこの国の若者みんなが憧れるほどだった。



 それなのに俺は!! なんでなんだよ!!

 三度目の正直で良い人生じゃないのかよ!!


 見た目はまあまあ良いほうだと思う。めちゃくちゃイケメンとかでもないかもしれないが、それなりに整った顔だし、漆黒の髪は珍しく目立つし、なんせこの金瞳! きらっきらで女の子には好かれると思うんだよ!


 な、なのに…………、はぁぁ。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る