#5 魔国に燻る火

魔界では、強大な力を持つ者こそが王となる資格があるのだ。


そのため、人族のように血縁で世襲する事はない。

力ある者が前魔王を倒す事で新たな魔王となる。


そして今の魔王は歴代の魔王の中でもずば抜けて魔力が高く、

その座を脅かすものなどいない程絶対的な力を持っていた。


しかし、今の魔王様はどうも平和的過ぎる。。。

一部の好戦的で残虐的な性格の魔族たちは、最近の魔王の言動に苛立ちを覚えていた。


今の魔王も、その座に就いた頃は若く、若さゆえにかなり好戦的であった。

幾度となく天族に戦いを挑み、興味が失せるとふぃっと戦いを止めるのだ。

気ままで自由奔放な魔族の本質がそうさせたのかもしれない。


それは人族に対しても行われた。


直接的に殺戮を行う事こそ無かったが、人間同士がいがみ合い、憎しみ合うように仕向けた。

結果、殺し合いになろうがお構いなしだ。魔族は楽しければ良いのだ。

かと思えば、気紛れで命を救ったりもした。


それも幾千年。。。幾度として繰り返し、現状に飽きた。


長く生き、年を重ねてきたせいか、

性格もだいぶ穏やかになり考え方が少しずつ変わってきたのだ。


そして、かねてから天族より打診のあった不可侵条約を結び、

また、人族を直接手にかける事も禁止した。


(別に平和主義者になった訳ではないのだが。。。)


魔王の耳にも時折、不平不満の声が届いていた。

それを気に留めることもなく、良く思わない者がチラホラ現れてきたな、程度に思っていた。


しかし、実際には不満の声は魔王が思う程少なくはなく、

一部の魔族たちに灯った種火は、魔国にうごめく幾つもの思惑という追い風を受け、

抑えられない程に大きくなっていたのだ。

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