悪役令嬢の私はこの世界で幸せになる!~溺愛されてますが、何か?~

一ノ瀬 彩音

第1話 壱

「聖羅様、おめでとうございます!」

「ありがとう、マリー」

私の目の前にいる、金髪碧眼の少女、マリー・セレストが、私に祝いの言葉を伝えてくれた。


彼女は、私が幼い頃から仕えてくれているメイドの一人だ。

私は、彼女に笑顔を返す。

今日、私は婚約したの。

相手はルシアス・フレイア殿下。

フレイア王国第一王子にして、王太子、年齢は一つ上の二〇歳、つまり今年成人する男性。


彼の顔を思い出すだけで、心が温かくなる。

ああ、早く彼に会って、直接祝福してもらいたい!

そう思いながら、私は自分の部屋へと戻る。

部屋に戻れば、すぐにマリーが紅茶を用意してくれる。


マリーは、とても優秀な侍女なので、いつも私のことをよく理解してくれていて、欲しい時に必要なものを用意してくれるの。

そして、二人でお茶を飲み始める。

しばらくすると、マリーが少し心配そうな表情をしながら、話しかけてきた。


「聖羅様、大丈夫ですか?」


私は、何のことかわからず、首を傾げる。

すると、マリーはさらに言葉を続けた。


「先ほど、殿下とお会いしてきましたよね? もしかして、何か失礼なことでもしてしまったのではないかと、心配しているのです」

ああ、そういうことね。


私は納得する。

確かにさっき会った時は、緊張していて、何を話したのか覚えていない。

だけど、それは仕方がないことだと思うわ。

だって、初めてお会いしたんですもの。


それに、殿下はとても素敵な方だったから、見惚れてしまったとしても、不思議ではないと思うの。

むしろ、褒められるべきよ!

それなのに、マリーったら、変なことを考えていたみたい。

だから、安心させるために、私は優しく微笑みかけた。


「ふふっ、大丈夫ですよ、マリー。特に何も問題はなかったですから」

すると、マリーはほっとした様子を見せる。


やっぱり、不安だったのね。

これからは、もう少し気を付けないと……。

それから、マリーと他愛もない会話をする。

すると、突然扉の方からノック音が聞こえた。


誰だろうと思い、マリーと一緒に振り返る。

そこには、一人の男性が立っていた。

年齢は私と同じぐらいだろうか。

綺麗な金色の髪に、空のように澄んだ青い瞳をしている。

端正な顔立ちをしており、中性的な印象を受ける。


彼は、私の婚約者であり、将来の夫となる人だ。

名前は、ルシアス・フレイア殿下。


「こんにちは、聖羅」

名前を呼ばれ、私は思わず頬を赤らめる。


まだ、名前で呼ばれることに慣れていなくて、恥ずかしいの。

だけど、殿下の優しい声を聞くと、胸の奥がきゅっと締め付けられ、幸せな気持ちに包まれていくのを感じる。

ああ、これが幸せというものなのかしら……!

私は、殿下の元へ駆け寄っていく。

そして、満面の笑みを浮かべながら、挨拶をした。


「こんにちは、殿下!」

殿下も笑顔を見せ、私の名前を呼んでくれる。

ああ、なんて素敵!

この瞬間が一番幸せ!

その後、私達はソファーに向かい合って座ると、早速本題に入った。


まず、殿下から結婚の申し込みを受けた。

そして、私の答えはもちろん―――。


「はい! 喜んでお受けします!」

私は、元気よく返事をして、了承の意思を伝えた。


すると、殿下は嬉しそうに顔をほころばせる。

そして、殿下からプロポーズの言葉を贈られた後、今度は私の番になった。

正直、殿方に求婚されたことは初めてだったので、どうすればいいのかわからない。

そもそも、私は今まで誰かを愛したことがなく、男性に対して免疫がなかった。


そのため、殿下から好意を寄せられていることを知って、戸惑っていたの。

それでも、殿下のことは嫌いではなく、むしろ、もっと好きになっていたので、断る理由などなかった。

そして、私は意を決して、自分の想いを口に出す。


「はい、殿下の事は愛しておりますし、結婚したいです!」

すると、殿下の顔が一気に赤く染まっていった。


その反応を見て、私もつられて、真っ赤になってしまう。

うぅ、なんだか凄く恥ずかしいわ……。

だけど、殿下は、そんな私に構わず、すぐに私を抱きしめてくれた。

温かい、まるで陽だまりのような心地よさだ。


ずっとこのままでいたいな、と思ってしまう。

殿下は、そのまま私の耳元まで顔を持ってくる。

そして、そっと囁かれた。


「ありがとう、聖羅。君にそこまで想われているとは思わなかった。

俺も同じ気持ちだ。聖羅のことを、心の底から愛している」

その言葉を聞いた途端、私は全身が熱くなり、頭がくらくらしてきた。


ああ、もう駄目、倒れてしまいそう。

だけど、殿下は、さらに言葉を続ける。


「聖羅、好きだ、大好きだ。君のことが、世界で誰よりも一番、愛している」

私は、あまりの衝撃に耐えられず、気絶してしまった。

そして、目を覚ました時、私はベッドの上に寝ていた。

あれ、ここはどこだろう?


確か、自分の部屋にいたはずなのに、どうしてここにいるんだろう。

疑問を抱きながら、ゆっくりと体を起こす。

すると、隣から聞き慣れた声が聞こえてきた。

そちらへ顔を向けると、私の愛しい人が、こちらを見ていた。


私は、彼の名前を呼ぶ。

すると、彼は笑顔を見せて、私の名前を呼び返してくれた。

それだけのことで、私の胸は、どきりと高鳴ってしまう。


「聖羅キスしてもいいか?」

殿下がそう尋ねてくる。


私は、こくりとうなずいて、受け入れ態勢を取った。

すると、殿下は私の唇を塞ぐ。


「んっ……」

突然のことで驚いたけれど、次第に気持ちよくなっていくのを感じたの。


それからしばらくして、唇が離れた。

もう終わりなのかと思ってしまったけど、どうやら違うみたい。

再び、唇を塞がれたの。

しかも、さっきよりも長い口づけだったわ。


しばらくした後、ようやく解放された時には、すっかり息が上がってしまっていたの。

でも、不思議と嫌な感じはしなかったわ。

それどころか、体が熱くなってきちゃったの。

そんな私を見た殿下は、妖しい笑みを浮かべると、私を床上に押し倒してきたの。

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