第7話 プレゼント
家に着くと時刻は八時を過ぎていた。
「ただいま」
「お帰りお兄ちゃん。ご飯の用意出来てるよ」
可愛い妹のお出迎えである。まだ誰も晩御飯を食べずに、僕を待っていてくれたようだ。
「先に食べててもらえば良かったのに」
「まあ折角だから皆で揃って食べた方が美味しいでしょ」
嬉しい限りである。高校を卒業してからは、ほとんど一人たまに正輝と二人での外食だった。
今日はお魚を中心にした和食で、メインは鮎の塩焼き、この時期は特別美味いんだよね。副菜にきんぴらごぼう、ピリッと鷹の爪が効いていていくらでも食べられる。あとは冷や奴とおみそ汁、そしてご飯は当然大盛りだ。皆揃っていただきます。
「お兄ちゃんどうだった、Cランクダンジョンは?」
「いやー、滅茶苦茶面白かったよ。買取りのお姉さんが笑わせてくるんだ。最後には支部長と二人がかりでのお笑い攻撃に、もう完全にギブアップだ。腹筋がかなりダメージを負ってしまったよ」
「ダンジョンのことを聞いてるんだよ、私は!」
「いやー、でもインパクトが凄いんだよ。綺麗なお姉さんの変顔を後で見せてやるよ。滅茶苦茶笑えるからな」
「見せてくれるって盗撮でもしたの?」
「僕のダンジョン装備にはカメラが付いているものがあるんだ。だから装備を脱ぐまでは全部録画されてるんだよ。まあ一流メーカーの装備だから盗撮にはならないと思うけど、変なことに使うつもりも無いしな」
「じゃあお兄ちゃんの攻略の様子が全部撮ってあるの?是非見たい!お姉さんはどうでもいいけどね」
二人の会話を聞きながら両親も笑いながら食事を進める。
「ごちそうさま。いつも美味いねうちのご飯」
「麟瞳も口が上手くなったね、そんなことを言ってもなんにも出ないよ。さっさと風呂に入りな。今日は全員が先にお風呂入っているからね」
「お兄ちゃん、お風呂に入る前にさっき言ってた映像見せてよ」
「全部見たら滅茶苦茶長いぞ。お姉さんの所だけ見てみるか?」
「そんなのいらない。リビングのテレビで見られるようにして欲しいんだけど」
「分かったよ。ちょっと用意するから待ってな」
いつもやっている作業だから簡単にセット出来た。さてと、ゆっくりと風呂に浸かって疲れを取りましょう。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
風呂から出るとリビングに全員集合して攻略映像を見ている。
「お兄ちゃん、これ凄いね。私も欲しいんだけど」
「カメラのことか?それべらぼうに高いからな。ダンジョン装備で七年間の貯金全部使ったから」
まだほとんど進んでいない。この調子だと全部見てたらいつまで経っても眠れないぞ。早送りしながら重要なところだけをピックアップしていこう。最初の見せ場は三階層の宝箱だな。
「ええー、なんでこんな所に宝箱があるのよ」
「へー、宝箱って銀色をしてるんだな」
「父さん宝箱にはランクがあってね。木、鉄、銅、銀、金そして虹があるらしいんだ。僕は金色までしか見たこと無いけどね」
「じゃあ銀色は真ん中ちょい上だな」
「いやいやお父さん、私は木の宝箱しか開けたこと無いから、銀なんて滅多に出てこないと思うよ」
「協会の職員の人もこんな低階層で銀色が出たからビックリしてたよ。今日はツイてたよ」
「腕輪かしら。今麟瞳がつけてる奴でしょ」
「鑑定結果は最後に言うね。次に行くよ」
まだまだ見所満載である。早送りを全力で行い、どんどん進めよう。
「もう、もっとゆっくり見せてよ」
「今日のは永久保存版にするから、見たければ後でコピーを取っとくからそれを見ろ」
次は五階層のボス部屋だ。
「さっきの女性は誰なの?とても親しそうだね」
「ボス部屋の待ち時間に知り合った大学生だよ。名前も覚えてないわそういえば。まあ、そんなことより良く見ててね」
「ええー、また銀の宝箱だよ。お兄ちゃんおかしいよ、絶対!」
「今度は宝箱の中に沢山の物が入っているね~」
「靴と袋と瓶が何本か見えるな」
「これも後で説明するね」
よし、早送りだ。
「またさっきの女性が出てきたよ。お兄ちゃん怪しくない」
「だから関係ないって、この後一階層からボス部屋までもう一度攻略するって言ってただけだから」
そんなことはどうでもいい、次は十階層のボス部屋だ。
「今度は銅の宝箱だね。羨ましくないんだからね」
「今度は瓶が何本かと、小さくてよくわからないが銀色の何かが見えるね」
「というわけで、説明していくよ。先ずはこの靴から」
「お兄ちゃん何処から出したの?」
「それも後でな。これは買取り価格が五万円の素早さの効果が付いている靴で、父さんへのプレゼント!」
「いやー、父さんが素早く動いても誰得なのよ。麟瞳が使えばいいじゃないか?」
「僕は今履いている靴がお気に入りだし、性能もいいしね。折角だから父さんが使ってよ」
「ありがとうな麟瞳、大切に使うよ」
「次はこのイヤリング、買取り価格は十五万円で、なんと健康の効果が付いてます。これは母さんへのプレゼントだよ。いつまでも元気でいてね」
「こんなに良いもの貰っていいのかね。ありがとね麟瞳」
「では次にいくよ。今度はこのウエストポーチ、買取り価格は五百万円で、時間経過はあるけど容量が三十立方メートルあるマジックバッグだね。これは綾芽へのプレゼントだ。これで京都土産はチャラにしてくれ」
「五百万円って貰っていいの?お兄ちゃんもマジックバッグがあった方が便利でしょ」
「綾芽も卒業したらプロの探索者になるんだろ?絶対役立つから遠慮せず貰っとけ」
「お兄ちゃんありがとう。とっても嬉しいよ」
「で、最後にこの腕輪です。なんと買取り価格は驚きの三億円!」
三人とも金額を聞いて驚いている。もう目が飛び出しそうだよ。
「因みにオークションだとどれくらいの値段になるのか想像も出来ないらしいよ。これも収納道具で、容量はドーム球場ぐらいあるそうだ。しかも時間経過が無いらしい、これは自分へのプレゼント」
「お兄ちゃん、もう凄すぎて何にも言えないよ」
「ということで、一番良いものは自分で取ったので、遠慮せず貰って下さい。ついでに所有者登録もしちゃおう」
低級ポーションを用意して一人ずつ血液登録をしていった。綾芽にはおまけで中級ポーションを二本渡したよ。これでゆっくり眠れるね。おやすみなさい。
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