第11話

▫︎◇▫︎


 ずっと目障りだった女を婚約者の席から引き摺り下ろすことに成功したディアン王国王太子のクロードとその新たな婚約者ライミーはとても気分がよかった。アイーシャが最後まで穏やかに微笑んだまま余裕綽々の表情だったのは気に食わなかったが、この国から追い出すことに成功したのだから問題ない。


「ねぇクロード、次はどうするの?」


 アイーシャを追い出したことによりドンチャン騒ぎが起こっているパーティー会場でライミーは聞いた。


「アイツが作った物を全て燃やそう」

「あら、それはいいアイデアね」


 満面の笑みを浮かべたライミーは家の中を漁ってアイーシャの刺した刺繍をかき集めた。

 クロードは王命という名の元にアイーシャの刺した刺繍を国中からかき集めた。

 たったの半日でアイーシャの多くの作品はほとんど全て集められた。

 アイーシャの刺した刺繍が燃やされる際、多くの人が下卑た笑みを浮かべてそれを見守っていた。王都の街のど真ん中で行われたこともあり、そのイベントには多くの平民達も参加していた。


「アイーシャっつー姫さんは魔力が全くなかったんだろう?」

「あぁ、そうらしいぜ」

「追い出されてよかったなぁー!無能を王妃にいただくなんて耐えられなかったよ!!」


 誰もがアイーシャの悪口を言っていた。この国では誰もが魔力を持っている。そして稀にいる魔力を持っていない人間は、と判断される。この国では魔力なしに人権は存在していないのだ。


 そういうことから、人々は嬉々とした表情でアイーシャの私物が燃やされていくことを見守っていた。


 ーーーそれが、国を守っている特別な祝福の品物であるということも知らずに。ーーー

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