第3話 留美香よ血迷ったか! 

「玄関狭いんだから早く入いりなよ」

洋子は留美香を押しのけ先に上がると、スーパーの袋を留美香から取り上げてキッチン台に置いた。

「どうした? ほら上がりって」

「……れた」

ハッキリとは聞こえなをかったが

あれだ!と確信した洋子は、振り返るとわざとらしく、

「えっ? 聞こえない! なに? はっきり……あっ!」

ムッとした目つきでパンプスを床に投げつけ、こちらに突進して来る。ちょっとなになに! なに!

イノシシか? 洋子は辛うじて留美香を抱き止めると、そのまま床に尻餅を付いてしまった。

「痛いなぁ……危ないでしょ!  それにパンプス! 馬鹿るみ」

噓っ顔面蒼白だ。

「とにかく着替えるよ!」

洋子は留美香を抱えて立ち上がりそのまま寝室へ。部屋着を渡し、さっさと着替えを済ませた洋子は、ローテーブルに留美香が買ってきたお弁当やサラダ、おつまみを並べた。寝室からて出来て、その様子をぼっーと見ている留美香を座らせてると、

「ワイン?」

「うん……とりあえず」

そう、とりあえず飲もう。

バンバン飲もう。明日が休みで本当よかった。さぁさ今夜は飲んだくれるぞ!

「ではぁ、お疲れさん! カンパ! でっ? 振られたか?」

こういう時はサクサク話しを進めるに限る

「……うん」

「いつ? 理由は?」

「一昨日言われた。男が出来たって」

あららきついね、取られたのかぁ男に!留美香的にはそりゃ辛いわ。

「どっちもいけたんだっけ」

「うん、私の前は男だったから」

「まあ 行っちゃたもん仕方ない! 次は留美香命! って言う子と出逢う事を祈るよ」

さぁサバサバ行こ! サバサバとね。

「洋子さぁ、やけにバッサリ言ってくれるじゃない。それじゃ泣きたくても泣けない!」

「ほぅ泣きたいの? なら泣いてええよ。どんと来なさい。慰める準備出来てるし」

「泣けって言われて泣けたら苦労し無い!」

何を今更言ってるなか? 初めての失恋じゃないでしょうに。

はぁ、仕方ない痂剥ぐか。

「留美香さん。私も二週間ぐらい前に振られました。あなたの仰る通り最低男でした。なんと! 二股やられました。情けないの通り越し笑いましたわ。アハハ」

黙って聞いていた留美香は、

「無理するなよ。空元気やめな。痂毟ってさ」

洋子はワインを一気に飲み干すと

「でもね、今更号泣なんて年でもないからさ」

と言いつつ鼻の奥がツンとするのを誤魔化して笑ってみせた。

 留美香は洋子のグラスにワインを注ぐと、

「ったく! 男なんて地球上から消えろ! ろくでもない生き物よだよ。男は!」

 確かに今のふたりには男は禁止ワードだ。

「いらない~いらない~男なんて

女がいれば充分だ!」

酔いが廻る。口も廻る。頭は廻らない。

「洋子ヒックトイレ行きまーす」

「イットイレ」

「さむ~それさむ~」

洋子がフラフラしながら鼻歌交じりでトイレから出ると、留美香が立っていた。

「あららお待たせしました~」

洋子がふざけて留美香のほっぺたを摘まんだ瞬間、その手を掴まれ

開きぱなしのトイレの扉に

押し付けられた。

「痛っ! 留美ゥツ……イャゥツ」

唇を塞がれてしまった。

突然のことと、酔いがまわっているためか、反応が鈍く止める事が出来ない。それにしても留美香の唇がやけに柔らかくて気持ちいい。マズいと判っていても自分から唇を開いてしまった。

どうした? 私……寂しい? 

留美香は寂しいんだ。

そしてきっと私も。

洋子は唇を離すと、驚きを隠して

にゃっと笑い、

「それで? 次如何するの?」

「うふふ、さあ? 如何したい?」

洋子は立ち上がると、

「馬鹿ねぇ。何をするにしてもまずは腹ごしらえ!」

いやいや、如何したいって、この先待っている事なんてたった一つでしょうが!









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