第6握利 一門さんは女の人でした。

立宮たてみやぁ、どこに行くんだよぉ」


「お前んだよ!」


 りゅうべえは完全にできあがってしまった椿つばに肩を貸し、夜道を歩いていた。


「あたしん家? ってどっちー?」


「『にぎめし』の二階だろーが!」


 椿佐が経営する『握利飯』は、住宅兼店舗だ。一階が店、二階が自宅となっている。


「二階ー? どこのー?」


「握利飯だよ! あーもう! めんどくせー!」


 龍平は肩を貸していたが、中々進んでくれず歩きづらいので、椿佐の体を離した。そして、彼女が千鳥足で転びそうになると、腰を片手で支え、腿の下に手を入れ持ち上げた。


「おー! お姫様抱っこだー!」


「騒ぐなクソジジイ! 落とすぞ!」





 『握利飯』二階。


「クソジジイ! 鍵はどこだ!?」


「鍵ー? 何だー? それー?」


「だーもー! どうやって開けんだー!」


 龍平は椿佐を抱えながらも、器用に手を伸ばしドアノブを回した。


「あ?」


 ガチャッとドアが開いてしまった。


「……無用心だろーがー!」


 龍平は怒りながら勢いよくドアを開け、そして閉めた。






「……クソジジイの割には、シンプルで女らしい部屋に住んでんだな」


 龍平は高所作業用安全靴を脱ぎ、椿佐の靴も脱がせ揃えて中に入ると、自然を感じられる部屋だった。


 木製脚部のソファー、ガジュマルなどの観葉植物。家具は白とベージュで統一されている。机と椅子は木目の少ない優しげなもの。照明はペンダントライト、ラグはリネン製だ。


「ここどこだー?」


「お前ん家だよ! だぁーもう! ソファーに下ろすぞ!」


 龍平はソファーに椿佐をそっと下ろし、寝かせた。


「っく、あっちいなー」


「半分も飲んでなかっただろーが! めんどくせーな!」


 龍平は自分と同じような感覚で、椿佐のダボシャツを捲り。


「……は?」


 見えたものに思考と手を止めた。


 男なら付けてはいないはずの、女性用下着が目に入ったのだ。


「ブブブ、ブラ!?」


 龍平はどしんっと尻もちをつき、後退りした。


 龍平は今までクソジジイと、男だと思ってきた相手、一門いちもん椿つばが女性だった事に、驚きを隠せない。


 細い体に、白い肌。ノンワイヤーでシンプルデザインの白い下着。自分とは全く違うものに。


「は!? え!? 女!?」


 龍平はしばらく混乱していたのだった。


−−−−−−


 あとがき。


 もう少し二人のやり取りが続きます。


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