②星々をまたぐ嫉妬 ~痴話げんかは、神さえ食わない~

御咲花 すゆ花

プロット

《あらすじ》

 魔法という文明が、十分に発達した星「クシナ」。そこで暮らすヨキとマリアは、将来を誓いあった仲だった。

 しかし、魔法の濫用は、瘴気の乱造を招き、ついに、地上は人の住めない環境へと、変わってしまう。

 生きるため、地下へと移り住む人類。

 だが、やがて、魔法の源である魔力にも、異変が起こる。星に貯蔵されている量が、残りわずかしか、なくなってしまったのだ。

 ここに来て、人類は、魔力の研究を決意する。魔力という超常のエネルギーが、何に由来するものなのか、その解明に乗りだしたのだ。

 ために、古代文明の遺産「宇宙船」を用い、魔力の潤沢な天体を目指して、航行を開始する。その重要なメンバーの1人に選ばれたのは、主人公であるヨキだった。

 必ず魔力の秘密を解き明かし、マリアのもとに戻ると約束したヨキは、宇宙船へと乗りこむ。目的地となった場所は、太陽系に位置する、地球にほかならなかった。






《世界観》

 物語の舞台は、地球とクシナに分かれる。地球については、未知のエネルギーである魔力が、存在しているという点を除き、実在するものと、大きな差異はない。したがって、この項では、主に、クシナについて解説していく。

 クシナの地上は、瘴気という、生物に有害な物質で、溢れかえっているため、人類は、はるか昔に地下へと逃れた。これは、魔法の発動に際して、必然的に、瘴気が発生してしまうためであるが、このことを、クシナの住人たちは知らない。

 魔力は、あらゆる物事に使用されており、それこそ、食料の生産にも関わっている。しかしながら、クシナに残された魔力は、有限であり、発達した魔法文明とは対照的に、その使用については、極めて限られた範囲のみに、留まっている。ために、地下の文明は、あまり近代的とは呼べず、後述するバケムクロを避けるため、少数の集団が、放浪しながら生活している、という状態にある。

 クシナには、神が実在しており、これが、この世界の住人たちにおける、行動の指針となる。神の意思は、声という形で人類に伝わるが、だれしもが、この声を理解できるわけではない。特定の場所で、照応する儀式を行うことによって、初めて、神の声を聞くことができるようになる。このとき、この場所のことを聖域、儀式を執り行う者のことを、上閲じょうえつと呼ぶ。クシナの住人たちは、上閲じょうえつから、神の意思をまた聞きすることで、己の行動指針を決定している。したがって、住人たちの団結力は、非常に強く、また、神の意思を絶対としているため、その命令に背くことはない。

 なお、聖域を中心とした生活が、人間の基本にはなるものの、クシナには、人類のほかにも、その敵となるバケムクロが、そこかしこに生息しているため、戦闘と無縁ではいられない。バケムクロは、膨大な量の瘴気が、生物の死骸に、付着することで生まれる、異形のことである。ただし、瘴気という概念を、全く知らないクシナの住人は、当然ながら、バケムクロの正体について、理解してはいない。その体を破壊すれば、バケムクロの活動を停止させられる、という点についてだけ、経験的にわかっているだけである。

 本作では、クシナの日常を描きつつ、神から、魔力の調査をするよう、指示されるところを、プロローグとしている。






《主な登場人物》

〇クシナの人間

蟻他祖ありたそ ヨキ

 性別:男

 年齢:17歳(地球では高2)

 紹介:本作の主人公。マリアと将来を誓っている


寒子さむいこ マリア

 性別:女

 年齢:16歳

 紹介:本作のヒロイン。ヨキと将来を誓っている


日亜知ひあち ウスク

 性別:男

 年齢:26歳

 紹介:日亜知ひあち隊のリーダー。地球へと出発する直前、隊員をかばって、バケムクロから重傷を負い、クシナでの待機を余儀なくされた。

 性格:冷静




〇地球の人間

*2年生

市野いちの 永海えみ

 性別:女

 年齢:17歳(高2)

 紹介:地球でのサブヒロイン。勝手のわからぬヨキに、色々と世話をしてやった。

 性格:健気

 部活:総合スポーツ部(陸上)


大賀おおが 多伍たくみ

 性別:男

 年齢:16歳(高2)

 紹介:みらいが好き。突っ込み役

 部活:吹奏楽部



*1年生

貝柄かいがら 禌穏しおん

 性別:女

 年齢:16歳(高1)

 紹介:地球でのメインヒロイン。見た目が、マリアに酷似している。

 性格:大人しい

 部活:美術部


北上きたかみ みらい

 性別:女

 年齢:15歳(高1)

 紹介:告白イベントにて、ヨキたちが暗躍することになる相手。努力家

 部活:バドミントン部






《構成》

〇第1幕――状況設定、3万字

 ヨキたちの日常。ある日、神から魔力を調査するよう、指示を受ける。クシナを立ち、地球へと向かう。




〇第2幕――葛藤、6万字

 魔力の調査は難航。より、地球になじむため、現地の高校に通いはじめる。そこで、地球人と親しくなるため、告白イベントに協力。多伍たくみによる、みらいへの告白を手伝う。このとき、禌穏しおんに出会う。マリアに酷似する禌穏しおんの存在が、かえって、マリアの不在を痛感させた。ヨキは、自分でも思わないほど、禌穏しおんに接近していく。ために、マリアとの関係が、ぎくしゃくしはじめる。

 告白イベントは成功。初デートを見守ってほしいと、多伍たくみから再び協力の要請。都会に遊びに行く二人を、見守っている最中に、唐突に魔力の調査が進行する。地球での目的を果たした。




〇第3幕――解決、3万字

 クシナとの連絡が取れない。そのことに不安を隠せないまま、地球からの帰還を決めるヨキたち。バケムクロの活発化により、ばらばらに避難したようで、ヨキは、ウスクにしか会えなかった。調査結果を聞いた石勠いしあわせが、思いもよらぬ感想を漏らす。それは、クシナの地に、神がいないかもしれないという、恐るべきものだった。ただちに、ヨキたちは、地球へと引き返す。

⇒2巻へ

 以降、ヨキに会えない寂しさから来る、マリアの浮気と、それによる危機的な決裂。その機に乗じてしまう、永海えみのヨキに対する思い。また、神の不在を自覚していた集団と、ヨキたちの対立を描いていく。

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