金髪ギャルを助けたら、津軽弁でデレて正妻ムーブ全開なのだが。ギャルなのにオタク、しかもヤンデレでやれやれだぜ。ところでギャルをヤリ捨てした医大生、お前は絶対に許さない。

水間ノボル🐳@書籍化決定!

プロローグ

渋谷でギャルを助ける

深夜1時。ハロウィンの渋谷。

パリピたちがスクランブル交差点で盛り上がっている。

同じ日本、同じ渋谷にいるはずなのに、俺には奴らが異世界の住人に思えた。

ブラック企業での残業地獄からやっと脱出し、俺は渋谷の街を歩いていた。


終電はとっくに逃していた。

歩いて帰るしかないな……

安月給の俺はタクシーを使いたくなかった。

 

渋谷から家まで歩いて2時間くらいか……

かなり疲れるが、仕方ない。

どうせ帰っても、ただ部屋で寝るだけ。

俺はパリピたちを避けて、人気のない渋谷のガード下を歩いた。

 

道端に、女性が倒れていた。

 

……助けないとマズイかな?

周りに人はいない。人が多い場所から少し距離がある。

俺が助けないと、誰も助けに来ないかも……


金髪のギャルだ。

陰キャ社会人の俺と、真逆の存在。


しかし……女の子が倒れているんだ。

俺はギャルに駆け寄り、声をかけた。


「大丈夫ですか?」

「……」


返事がない。ただのしかばね……じゃないようだ。

寝息がする。どうやら寝ているらしい。


「こんなところで寝ていると、風邪引きますよ」

「ふあ……わをばなげで!」


ギャルはいきなり起き上がり……俺に抱きついた!

うお……胸が当たりまくる!


「まいね!まいね!まいね!」


まいね……って何だ?

「うまいね」って意味か?

かなり訛っているから、地方出身の子みたいだ。


「……わを好きだっちゃ?」


ギャルは泣きながら、強く俺を抱きしめた。

……たぶん、俺を彼氏と勘違いしているのかな?


猫のように大きな丸い目に、小さな唇。

透き通るような白い肌が、赤く染まっている。

かなり酔っているようだ。


「わを好きだっちゃ?」


ギャルは。ぎゅうっと強く俺を抱きしめる。

無理やり引き剥がすわけにもいかず、俺はただ抱きしめられていた。


「わを好きだっちゃ?」


好き……という言葉だけがわかった。

「私を好きか?」っていう感じ?

……俺が「好きだ」と返せば、離れてくれるかも。


「好きだよ」

「わ!本当だっちゃ?」

「本当だよ」

「わった好き♡」


ギャルは俺に……キスをした。


「おうわ!ちょ……」


柔らかい唇。

甘ったるい味がする……


「はわ!私は何して……」


どうやら正気に戻ったらしい。


「きゃあ!」


ギャルは俺を突き飛ばした。


「……変なことした?」

「倒れていたから助けようと思って……」

「ひどい……倒れている女の子を襲うなんて、最低!」


やっぱり、勘違いされたか。

俺みたいな冴えない陰キャが女の子を助けようとしたなんて、誰も信じないよな。


「うわ!」


ギャルは立ち上がろうとしたが、転びそうになった。

俺はとっさに、ギャルを抱きとめた。


「……まだ休んでいたほうがいいですよ。かなり酔っていましたから」


俺は近くの自販機で、水を買ってきた。


「これ、飲んでください」

「どうも……」

「じゃあ……俺はこれで。気をつけて」


俺は逃げるように立ち去った。


――この時、このギャルが俺の家に来るなんて、夢にも思ってなかった。





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