『ピアスホール』 詩

 小さな穴ひとつ

 たったそれだけで


 大人になれると思った

 変われると思った


 小さな穴ひとつ

 たったそれだけで


 見え方が変わると思った

 世界が変わると思った



 突き刺さった音は思ったより大きくて

 少し怖くなった


 突き刺さった針は思ったより痛くて

 少し涙が出た



 そのことに瞑目した

 自分はやはり子供だと気づいた 


 そのことに項垂うなだれた

 自分の浅はかさを嘲笑わらった



 この程度で大人になれるわけがない

 こんなことを考えているうちは


 この程度で世界が変わるわけがない

 心に触れる小さな痛みに嘆くうちは



 それでも私は

 馬鹿のひとつ覚えみたいに


 だからこそ私は

 いつか変わる日を求めて



 耐えるようにそっと

 銀針で 耳朶じだを穿つ

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