『どうか見ないで』 詩

 どうか私を見ないで

 その目に その心に 私を映さないで


 からかいの様な一時いっときの視線で

 火照る様に期待して

 あなたを想ってしまうから


 戯れの様な一片ひとひらの言葉で

 私はどうしてか

 あなたに愛されると思ってしまうから



 どうか私を嫌いと言って

 その口で その仕草で 私を否定して


 ぬるま湯に浸けられた様な状態で

 いつかを夢見て待つだけの

 長い長い時が怖いから


 真綿で優しくくびられて

 私はどうしてか

 手放せない期待に瞑目してしまうから



 自分の間違いは分かっている

 あなたとの決別の日こそ

 この泥濘ぬかるみからの解放の日


 その覚悟が足りないことを知っている

 あなたに背を向けることこそ

 この苦しみから抜け出す最善策



 どうか私に答えて

 その声で その言葉で そっと一言で


 躊躇いなく鋭利な言葉で

 甘やかな嘘を吐くことなく

 そうでなきゃまた間違うから



 どうしても信じられないときがある

 それでも捨てられないのだから

 奇妙で変な話よね

 


 どうか私を見ないで

 その目が その心が 私を苛むの


 きっと死んでしまうわ

 空を舞ったいつかの手紙の様に

 伝えられなかったことを胸に抱いて



 どうか私を見ないで

 その目も その心も 傷つくの


 きっととても汚いわ

 踏みにじられたいつかの想いの様に

 土にまみれて消えるだけ



 どうか私を見ないで

 その目に その心に 私を映さないで


 視線の色が変わる日に

 私への失望に満たされて

 きっと去りゆくあなたの背


 きっと殺してしまうから

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