第38話

 とうとうしてしまった。


 もう戻れないところまで来てしまったのは自分でも自覚している。


 すやすやと眠る先輩の横顔を見ながらいつもとは違う天井を何となくぼんやりと眺めていた。


 今頃幸人はどうしているころだろうか。きっと雪奈と仲良くくっついて眠っていたりするのだろうか?それともまだ愛し合っているのだろうか?


 ..........私がギュッと無意識に腕を抱いて何かから己を守るようにする。


 だけれど、それでも体が異常に寒かったので毛布を深く被りベッドの中で蹲った。


 何も考えたくなかった。エッチをしていた時はどうにか心のどうしようもないヘドロのようなものを誤魔化せていたがやはり一時的な物でしかなかった。


 私はきっとこれからもずっとこのヘドロを背負って生きていかなければならない。


 これは私に課せられた義務であり、贖罪なんだと思う。


 雪奈が幸人の家にお泊りをするという本当に幸せそうな声を毎日壁越しに聞き続けた私の精神は擦り切れており、ちょうどその日は先輩に服を買いに行こうと言われていたためフラフラと言われられるがままについていってしまった。


 家にいても、お母さんに私がしたことを知られているため物凄く気まずいしベッドの中で幸人と雪奈がどうしているのだろうとかこれからの事を考えて憂鬱になりたくなかったからなのかもしれない。


 ..............結局はこうしてやはり幸人が今どうしているか考えてしまっているから意味はないのだけれど。


「ん..............あ、おはよう、幸奈ちゃん」

「.......おはようございます、先輩」


 どうやら先輩が起きたみたいだ。


 先輩は眠い目を擦りながら、大きくあくびをしてから伸びをした。


「......幸奈ちゃん、やっぱり浮かない顔をしているよね。俺としたこと、後悔してる?」

「..........いえ」


 本当を言えば後悔しているし、あなたと関係を少しでも持ったこと..........いやそもそもバイトなんてし始めなければよかったと思っているが、判断したのは私だし、意地を張って幸人に劣等感を感じていることを話さなかった私のせいだから、本当の事なんて言えるわけがなかった。


 私が何とも言えない態度をしているからか、先輩は私の体をギュッと抱きしめて側に寄せた。


 私は何とも自分が情けなさ過ぎて涙を流してしまった。


「幸奈ちゃん、どうしたの、大丈夫?」

「い、いや、何でもなくて」


 やっぱり..............私じゃ幸人の隣にいれるような人じゃなかったんだなと改めて自分でそう思ってしまったから、それとも私より子供だと思っていた先輩に慰められていることによる自尊心が傷つけられたからなのかも分からない。


 私はそのまま涙を流し続けた。


 





 








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