第14話 先輩を問いただした

「片桐先輩。昨日、女の人と遊んでたって本当ですか?」


 モヤモヤとした気分を放課後まで抱え込み、ようやく放課後がやってきた。

 私は華蓮から聞いた話の真偽を確認するべく、校門の前で片桐先輩を待ち伏せていたのだ。


「……いや、遊んで無いけど?」


 しらを切るつもりのようだが、私が問いかけた瞬間微妙な間があったことからも片桐先輩が嘘をついていることは明白。


 とはいえ、確証はないので私は華蓮から聞いた話を片桐先輩に伝えた。


「片桐先輩が別の女の人と遊んでで、キスまでしてたって話を聞いたんです。女の人と遊んでいないってちうのは本当に嘘じゃないって言いきれますか?」

「……もちろん言い切れるって。むしろ俺じゃなくてその場面を目撃したっていう友達のことを信じんの?」


 確かに私がが片桐先輩のことを信用していないように思われても仕方がないのかもしれない。


 しかし、ここで動揺する私ではない。


 実際問題私は片桐先輩を信用していない。


 私は思い切って本当の気持ちを言ってやった。


「はい。私と付き合ってから、片桐先輩が私のことを大切にしてくれたためしが無いですから」

「濡れ衣だよ。嘘の話を信じて俺にそんなこと言ってくるとかマジ無いわ。言いふらしてやるからな。お前が彼氏のことを信用しないクソ野郎だって」


 この人……。


 本当に最低な男だ。


 仮に先輩が女の人と遊んでいたという情報が嘘だったとしても、報復として私が最低だって言いふらすなんて、そんなことをしようとする人が優しい人なわけがない。


「そう言われても構いません」

「あなた、最低ですね」

「--え、華蓮?」


 私が片桐先輩と口論していると、そこに割り込んできてくれたのは華蓮だった。


「なんだおまえ。他人は引っ込んでろよ」

「他人じゃありません。私はくるみの親友です」

「へぇ。クズの友達はどうせクズなんだろ」

「--か、片桐先輩‼︎ 私のことはどう言っても構いませんが、華蓮の悪口を言うなら許しませんよ‼︎」

「許さないならどうすんの?」

「ぐっ……」

「ありがと。くるみ。……これ、あなたでしょ」

「--な、おまっ、それは⁉︎」


 華蓮が片桐先輩に見せつけたのは、片桐先輩が私以外の別の女子生徒とキスをしている写真だった。


「親友の彼氏が浮気してる場面なんて見たら、見過ごせないですよね」

「くっ……。覚えてろよ」


 そう言って片桐先輩は私たちの前から走り去っていった。


「はぁーよかった逃げ出してくれて。あのまま手でも出されてたら勝ち目ないからね」

「華蓮……。うわぁーん本当にありがとーっ」

「よしよし、良い子良い子」


 彼氏である片桐先輩がクズ人間だったからこそ、親友のありがたみを実感できる。


 とはいえ、片桐先輩に裏切られたことに対するショックは大きい。


 私自身が受けるショックも大きいが、それよりも私は旭日君に対して申し訳なさを感じていた。


 ごめんね旭日君。せっかく相談に乗ってくれてたのに……。


 そう心の中で謝罪するのだった。

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