第3話 「二番目」から家に誘われた

「いつまで落ち込んでんだよ」


 放課後、授業が終わってもしばらく机に突っ伏していた僕の元にやってきて声をかけてきたのは若月だ。


 俺が失恋してから一週間が経過したものの、僕の心の傷は癒えずこうして毎日のように机に突っ伏している。


「そりゃ落ち込むだろ……。好きな人に彼氏ができたんだから」

「僕は旭日が本気を出せば三鼓とも付き合えたと思うけどな」

「あり得ないだろ。俺と三鼓が付き合うなんて」

「実際色んな生徒の恋を実らせてるじゃないか。僕も然りだしな」

「知ってるだろ? 俺が他人にアドバイスはできても自分の恋愛だけはヘタクソなの」


 若月の言う通り、俺は多くの恋を実らせている。

 しかし、自分の恋愛だけはなぜか上手く行かせることができないのだ。


「いつまでもウジウジしてないで早く次の恋愛にいけよ。それじゃ、僕は先に帰らせてもらうから」


 若月が教室を出て行った後も僕は机に突っ伏して三鼓が付き合ったことに対するショックを隠せないでいた。


 三鼓が僕に告白成功報告にきて一週間が経過したが、あれ以来僕と三鼓の間に会話は無い。


 本当にあれが最後の会話になってしまうのかもな……。


 そんなネガティブな思考回路で頭の中をいっぱいにしていると、廊下の外側から足音が聞こえて来て、その足音が教室に入ってくるのに気が付き俺は顔を上げた。


「……蓮見? なんでこんな時間に教室に?」


 教室に入って来たのは「二番目」の女、蓮見だった。


 三鼓のことで頭がいっぱいで忘れていたがそういえば僕、蓮見から恋愛相談受けてたんだよな。


 あれ以来一度も相談されてないが、大丈夫なのか?


「教科書忘れちゃってね〜。宿題もあるし取りに戻って来たの。旭日君こそ何してたの?」

「お、俺はちょっと帰るのが面倒くさくて……」

「ははっ。なにそれ。その理屈だといつまでも家に帰れないんじゃない?」

「まあそう言われてみればそうだな」

「旭日君、なんか元気無い?」


 蓮見からそう尋ねられた僕はシンプルに驚き目を丸くした。

 俺とはあまり関わりが無いのに、少しの表情の変化で僕の感情が読み取れるのか。


「あ、ああ……。まあな」

「そうなんだ。そんな時はお腹いっぱいにするといいと思うよ?」

「確かに、やけ食いって言葉があるぐらいだしな」

「あ、そうだ。じゃあ今からウチ来なよ。ご飯ご馳走してあげる」

「え、いいのか? ……ってハイ?」


 流れ的に違和感があったわけではないが、あまり関わりのない男子を急に家にあげようとする女子がいるか?


 しかもご飯ご馳走するってまさか手料理?


 いや、流石にそれはないよな……。


 蓮見の思惑が分からない俺は困惑していた。

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