聖夜の直前、ふと気づくとあなたの体は靴下になって小悪魔系後輩カノジョの枕元にいた

雨蕗空何(あまぶき・くうか)

靴下になっていたあなたを後輩カノジョがいじり倒す

ちょっとちょっと先輩〜! なーにやってんですかぁ〜?

ふと気がついたら? 体が靴下になってて? あたしの枕元にいた?


……ぷっ。あはははは、あはははは!

えぇ〜なーんでそんなんなるんですか〜? 普通なりますぅ〜靴下に〜?

あははははっ……! あぁ〜、ウケる〜、お腹痛い。


まーぁー、なっちゃったもんは仕方ないですけどねぇ〜。

クリスマス前だからって、先輩が靴下にならなくたっていいじゃないですかぁ〜。

そんなにあたしの枕元にいたかったんですか〜?

……んもぅ、靴下にならなくたって、一緒にいさせてあげたのに……


ん、んんっ(咳払い)

でもあれですよねー、そんな格好じゃ先輩、あたしに何されたって、文字通り手も足も出ないですよね〜。

いや、足は出るのかな? 出ちゃダメか。靴下から足が出ちゃったら、穴開いてるってことだし。

きゃはははっ!


ちなみにー、今の先輩はぁー……うん、穴は開いてないですねー……

未使用のー……まだだぁーれもその中に通してない……新品の靴下……って感じですねー……きゃはっ。


ん〜? てことはぁ〜。

これからあたしが、先輩の中に何か入れたらぁ〜……それが先輩の、は・じ・め・て、になるんですねぇ〜。

くふふっ!


ねぇ、先輩……? 初めては、何を入れて、ほしいですか……?

枕元にいたんですし、クリスマスらしく……クリスマスプレゼント、詰め込んであげましょうか……?

それとも……あたしの……かわいいかわいい年下のカノジョの……あ・し。入れてあげましょうか……?


くふふっ……!

ああ、ドキドキしちゃいますねぇ……!

先輩の中に、プレゼントが? それともあたしの生足が?

どっちが入っちゃうんでしょう?

ねぇ、想像してみました? どっちがよかったです? どっちがいいって思いました?

きゃはははっ!


でもでもぉ〜……今の先輩を、靴下として履くのは、ちょーっとないかなぁ〜……

だってー……ほら。あたしが普段履いてるの、五本指ソックスなんですよ。

今の先輩は……ほら、ここ……あたしが指でなでてるの、分かります……?

この、爪先のとこ……今これ、縫い目に沿って指を滑らせてますけど……先輩のここ、つながっちゃってますよ……?

足の指がぁー……ぜーんぶ、ひとつになって、つながってるんです。

あたし、ここに足入れたらぁ、五本の指がぁ、ひとまとめにされちゃうんです。


知ってます? 先輩。五本指ソックスのいいところ。

あれだと、足の指、一本一本、バラバラに包み込んでくれるんです。

こう、ぴったりとですねぇ。隙間なく、密着してくれるんです。

そうするとですねぇ、冷え性対策にもなりますしー、汗もしっかり吸ってくれて蒸れにくいんです。

先輩のこの形だとー……あたしにぴったり密着してくれなくてー……汗をちゃんと吸ってくれないんです。

足の指の間の、汗。


うん? あれぇ、先輩?

なんか、興奮しちゃってます?

えー、何を想像してたんですかー?

あたしの足にー、ぴったりと密着するところですかー?

それともー……あたしの、汗を。足の指の間に溜まった汗を、吸い取るところ……ですかぁー?


うわー。くすくす。

せぇんぱーい、それはちょっとー、やらしいですよー。

それにぃ、あたしだって……ちょっとは、恥じらいってもの、あるんですからね?


……んもう。

かわいいカノジョを恥ずかしくさせた罰です。先輩も恥ずかしい思いしてもらいますよー。

先輩のー、普通は人には見せない、恥ずかしいところ。見せてもらいますねぇ。


んしょ……足首の、ゴムのところにー、両手の親指を引っかけてー。

他の指でー、かかと……爪先……順々に、たぐり寄せていってー。

うふふ、せんぱーい、何してるか分かりますー?

そうですそうです……今から先輩のこと、裏返しちゃいます。

きゃははっ。


ほらほら……先輩。見えてきましたよ。

もうすぐ、見えちゃいますよ。かわいいかわいい年下のカノジョに、大公開しちゃいますよ。

先輩のー、う・ら・じ。裏地、です。


……きゃははっ! 出た出たー! 先輩の裏地ー!

へぇぇぇ……先輩のって、こんな感じなんですねー!

うふふっ、爪先の縫い目のとこ、爪でカリカリしちゃおーっと……カリ、カリ、カリ。


ねぇ、先輩……分かります? 縫い目をカリカリしても、あんまり、引っかからないですよね?

これ……リンキングっていって、上等な縫製なんですよ。

爪先の縫い方は、リンキングとロッソっていう、ふたつの縫い方があるんです。

機械縫いのロッソの方だと、縫い目のところがぼっこり出っぱっちゃって、爪先に当たっちゃうから、履き心地が悪くなるんです。

今の先輩、とーっても、上質な靴下なんですよ?


それに、爪先だけじゃなくて……素材も、保温性と吸湿性に優れたウールに、洗濯縮みを防ぐための化学繊維を適度に配合した、取り扱いやすい素材ですし……

足首の、ゴムのところも……ダブルゴム構造ですよ、これ。

シングルゴムだと、足の太い人なんかは特に、ふくらはぎにゴムの跡が残りやすいんですけど……ダブルゴムだと、跡が残りにくいんです。

……先輩になら、ちょっとくらい跡をつけられても……ん、んんっ。


うふふっ。さすがにずっと裏返しなのはかわいそうですし、元に戻しますねー……んしょ。

それにしてもせんぱーい、やられ放題ですよー?

年下のカノジョにー、裏返されたりー、カリカリされたりー、やられたい放題ですねぇー?

そんなんでいいんですかー? 何かやり返したりしないんですかー?

無理ですよねー。だって先輩、靴下ですし。

きゃははっ!


……んー、さすがに、いじめすぎですかねー。

かわいそうになってきましたし……これから、入れたげましょうか。

何をって、さっき言ってたじゃないですか。

クリスマスプレゼントかー……あたしの、な・ま・あ・し。


きゃはははっ! どっちがいいです? どっちがいいです?

まぁでも、さんざんいじっちゃいましたし、ここは奮発しちゃいましょうかー。

うふふっ。そうです。入れちゃいますよ。

先輩のー、中にー、かわいいかわいい年下のカノジョのー、大事な大事な……

心を込めた、プレゼントをっ!


ん、あれぇ? 足だと思いましたぁ?

きゃはははっ! 無理無理無理ですってぇ!

生足なんて入れてあげませーん。

さすがにそれは、あたしでも……その、本気で恥ずかしいので……


……んもう! 入れますよ!

ほら、プレゼントの箱が……先輩の、ゴムを広げて、ちょっとずつ、入っていきますよ……

ちゃんと靴下に入るくらいのサイズですけど……箱のカドが、先輩を、押し広げて……

んしょ……先輩に、穴開けちゃったりしないように、慎重に……んしょ、んしょ……


……ぃやったー! ぜーんぶ、入りましたよー!

先輩のー中にー、あたしのクリスマスプレゼント、すっぽり、入っちゃいました!

えへへー、ジャストサイズですよー。


ふふふーん……ねぇ先輩、この箱の中、なんだと思います?

あたしがー、先輩にー、用意したげたー、クリスマスプレゼント、なんだと思います?

せっかくだしー、ちょーっと早いですけど、開けちゃいましょうか。


……はいっ、じゃーん! 腕時計でーす!

えへへ、先輩の手首に似合うように考えて、選んだんですよー!

あたし正直言うと手フェチでー、先輩のーちょーっと骨ばった感じの手首がー超お気に入りでー!


……なのに先輩、なんで……なんで靴下になんかなっちゃったんですか。

手首ないじゃないですか! 足首しかないじゃないですか!

足首に腕時計巻いたらいいんですか!? あたし足フェチに改宗したらいいんですか!?

やですよ足首あっても骨ないじゃないですか!

やわらかふんわりへにょへにょで全然骨ばってないじゃないですか!


ぐすん……そうですよぅ、こう見えてあたし、いろいろ楽しみにしてたんですよ……

そりゃクリスマスですもん……カップルになったんですもん……

もっとこう、手をつないで、身を寄せ合って……先輩のぬくもりを感じたりとか! したかったんですよぅ!

なんなんですか靴下って! あたしがほしいのは人肌のぬくもりでウールのぬくもりじゃないんですよ!


ぐすっ、ぐすっ……せんぱぁい……人間に戻れますか……? 戻れますよね……?

戻れなかったらやですよぅ……あたし靴下のカノジョとかやですよぅ……

戻れなかったら見捨てますよぅ……うそです見捨てたくないですよぅ……ぐすん。


……こういうの、キスしたら治りますかね? 治りませんか?

おとぎ話でそういうの、よくあるじゃないですか。あたしがキスしたら先輩、人間に戻れませんか?

試してみましょうよ。てか、試します。先輩がずっと靴下なの、やですもん。


じゃあ……あの……しますね。

えっと……くちびるに……くち……今の先輩、くちびるって、どこですか?

分かんないですよね……じゃあ、この、足入れるとこ、ここが口ってことに、しちゃいますね。

じゃあ、あの……します、よ?




……ん……ちゅっ……




……どう、です? 戻りそうですか?


……戻らないですかー。そうですかー。

そうですよね。そんな簡単じゃないですよねー。

……ぐすん。


もう、遅いですし……寝ますね。

明日になったら、戻ってるかもしれないですし。

今日は特別に、あたしの枕元で寝ることを許可します。


……明日、戻っててくださいよ。

戻ってほしいですよ。あたし、人間の先輩がいいです。

人間の先輩が……好きです。


……もうっ、何言わせてんですか。

かわいいかわいい年下のカノジョにここまで言わせたんだから、本当に、戻ってくださいよね!


……おやすみなさい。先輩。




……ちゅっ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る