第3話 放課後、屋上で。


 瑞葉に誘われたので、屋上に行く。彼女のクラスを見に行ったけど、既に瑞葉はいなかった。


 緊張しながら、階段を上る。バクバクと心臓が煩い。


 屋上のドアを開くと、髪を靡かせながら、垂直に立つ瑞葉の姿があった。何で屋上の鍵、開いているのだろう。フェンス近くに立つ瑞葉。相変わらず美しい。


「あ、お待たせ」


 凛翔は瑞葉に手を振る。


「うん。大丈夫。こっち来て」


 凛翔は歩みを進める。


「……それで何?」


「ああ。大事な話があるの。でも、今はそれは置いといて」


 瑞葉は両手を空気を受け止めるかのように、目一杯広げたのち、凛翔の手を引いて、フェンスのふちに近づいた。


「ここに凛翔と来たかったの。人と二人きりで学校の屋上って最高じゃない?」


「……好き!?」


 凛翔は肩をはねさせ、慌てふためく。


「ああ、こっちの話。それは早かったね」


 瑞葉の謎発言にきょとんとする凛翔。


「ほら、見て。部活の子たちかな。頑張ってるね」


 屋上から下を見下ろす二人。校庭ではサッカー部とバドミントン部の子たちが楽しそうに部活にいそしんでいた。


「ほんとだ」


 まだ凛翔たちは入学したばかりなので、部活には入れない。何部に入るかも決めてなかった。


「あたしは凛翔と同じ部活に入りたいな」


「俺も」


「何部に入るつもりなの?」


「んー。文芸部かパソコン部か茶道部かな。漫画研究部もいいかも」


「何でそんな地味な……ごめん。凛翔って文化系なんだね」


「うん、まあ」


 凛翔は運動があんまり出来ない。かといって、勉強が出来るわけでもない。そんな凛翔にも一つだけ他人より優れた特技があった。でも、それはまだ内緒。


「じゃああたしも茶道部入ろうかな」


「え、意外。卓球部入らないの?」


 瑞葉は卓球が好きで、小学生の頃は卓球部に入っていた。だから、てっきり凛翔は、卓球部に入るのかと思っていた。だけど、違った。


「え、何で? どうして卓球……あ!」


 彼女もに気づいた。


「小学校の頃、卓球好きだったじゃん」


「そ、覚えててくれたの!? 嬉しい……!」


 嬉しすぎて達しそうだった。


 一息吐いて、彼女は彼に迫った。

 ただならぬ空気が流れる。


「あのさ、昨日の許さないの意味だけど。あたし、怒ってるよ?」


 幸せな時間をもっと味わいたかったけれど、瑞葉には伝えなければならない思いがあった。


「ねえ、何で一緒の中学校に行ってくれなかったの? あたし、凄く悲しくて傷ついてたんだよ? あたしのこと、嫌いになったの? ねえ、ねえ?」


「それは……行きたい中学校があったから。瑞葉のことが嫌いなわけじゃない」


「あたしは凛翔と同じ中学に行きたかった!」


 それは逆ギレであり、ただの八つ当たりだ。


「もっと凛翔を見てたい。ずっとそばにいたい。24時間凛翔と一緒じゃないと死んじゃう。なのに、別の中学に行くなんて、あたしを殺す気なの??」


「ごめん……あ、やば」


「うっ、ううっ」


(やっぱり)


「落ち着いて」


「落ち着けないよ!」


「それに……」


「まだあるのか?」


「集合写真の時も、偶然撮れた私とのツーショットの時も笑ってくれなかった! 何で笑ってくれないの? あたしが隣にいるのに!!」


「…………」


「何か言ってよ!」


「じゃあ、あたしとツーショット撮ろ? そしたら、許してあげる。その代わり、笑ってね」


「うん。分かった」


 そうして、瑞葉とスマホでツーショットを撮る事になった。もう日が暮れている。早く帰らないと。


 部活の子たちも気づけばいなくなっていた。


 彼女は時間を気にする様子はなかった。それよりも凛翔に夢中だ。





*あとがき【重要なお知らせ】

本作をお読み下さり、ありがとうございます。で、更新頻度は2日に一回更新にしたいと思います。頑張ります。でも、更新出来ない日がある事もご了承下さい。いつも19:00頃に更新するので、把握お願いします。

それと今の時期はカクヨムコンですが、私は今年はどの作品も不参加の予定です。把握お願いします。

追記:性描写を中高生でも読めるよう、一部修正しました。

あとがきは以上です。Fin


 

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