天使な彼女は夢見がち〜どうやら俺の周りにはヘンな高校生しかいないらしい〜

りあ

第1話 キスしようとすると爆睡し始める彼女

 キスって、どんな味がするんだろう。

 青春の味とか、甘酸っぱいとか、抽象的なものもあれば、レモンやトマトなんていう、具体的な例えもある。


 キスって、どんな味がするんだろう。

 好きな人に、恋した人に、私はそれを求められている。

 時刻は午後五時を回ったあたり。二人で作ったデートの思い出に相応しい、黄昏のベンチで。

 彼は私の肩に手を添えて、優しく、優しく、その唇を近づける。


 キスって、どんな味がするんだろう。

 こんな、ドキドキして、恥ずかしくて、でも嬉しい時間がやってきても。

 そんな事をぼんやり考えてしまう私には、きっとそれを知る機会は来ることがないんだろう。


 そんなことを思いながら、私は瞼を閉じた。

 そして……。



「だあああ!!!!!!!!!」


「なんで!?どうしてなんですか!?!?」


「俺のことが嫌いですか?嫌いならフれよ。フッてくださいよマジで!」


「……やっぱ俺、あなたに遊ばれてるんですかね。はあ、仕方ないよな……」


「あなたは学年一の美少女で、友達も多くて、明るくて勉強もできて!」


「どうせ俺は中の中ですよ……そうだよな、俺なんかがあなたと付き合えたのがなんかの間違いですよね」


「なんとか言ってくださいよお」


「……はあ。何とも言ってくれる状況にないから、困ってるんだった」



 そして、瞼を閉じたまま、私は眠りの園に落ちた。

 困惑する恋人に、自分を卑下する先輩に、否定の言葉を届けることも出来ずに。


 だって、だって。好きな人にキスされそうになると、私。

 眠くて眠くて、どうしようもなくなってしまうんだもん……。

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