青のポラロイド

缶津メメ

第1話 


数年ぶりに友人と会う。


電車に乗って三十分、バスに乗って五分後に到着した駅は、私にはすべてが新鮮な都会だった。集合時間までまだ時間があったので、目的もなくふらふらと駅の近くを歩き回っているうちに―――――ふと、視界の端に小さな路地を見た。なんだか不思議と気になってしまい、路地に足を踏み入れる。数メートルほど歩いたところで、古い看板に「ストリップ劇場」と書かれた建物に辿り着いた。好奇心と怖いもの見たさでふらっと近寄れば、看板の下のポスターには数人の美女の写真が印刷されている。扉はぴっちりと施錠されていて、中の様子を伺い知ることはできない。

美女の写真の下には金額表がある。女性料金は四千円だそうだ。………時間があるわけでもない、それに高い。行かない理由しかないのだが、どうにも気になる。

「……………と、そろそろ行かないと」

わざとらしく口に出してから、もう一度景観を見る。看板は電飾で彩られていて、きっと夜になったらとってもきれいなのだと思う。そんな風に思いながら踵を返す――――――私の胸はなんだかどきどきしていた。まるでキラキラした、何が入っているのかわからない宝石箱を、自分ひとりだけが発見してしまったような気持ちになった。こんなきれいでおもしろそうなものは自分ひとりの胸にしまっておきたい―――――なんてことはなく。むしろ、誰かと共有することでその輝きを広げたいタイプだった。


「(早紀、こういうの好きそうだもんなあ)」


これから会う友人―――――早紀は高校からの友人だ。誰もわかってくれないようなマニアックな話や面白いものなど、彼女は楽しそうに聞いてくれたし、彼女もまた同じように変なものや奇妙奇天烈なものに出会っては私に話してくれた。ストリップ劇場があったよ!なんて言ったらきっと、彼女はすぐ興味を持って「お昼食べたら一緒に行かない!?」と言ってくれるはずだ。私は彼女の喜ぶ顔を頭に思い浮かべながら、待ち合わせの場所まで軽やかに駆けた。




「…………あれ?早紀、なんか服の好み変わった?」

「あー、うん」

早紀は苦笑いしながら答える。高校の頃は細身のズボンをかっちりと履きこなしていたので、なんだか最初に見た時別の人かと思った。ゆるいシルエットのニットワンピの彼女は「…………そろそろきつくなってくるしさ」と呟いた。

「なに?もしかして太った?」

「違うよ。………赤ちゃんが出来たの」

「え」


後頭部をハンマーで、思い切り殴られたような感覚になった。


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