③宇宙植物猫 機械生命体と地球侵略旅行

小早敷 彰良

プロット

■参考作品

デルトラ・クエスト

マーダーボット・ダイアリー

宇宙通信(星新一)

Dr.STONE

とある魔術の禁書目録

AMARA 大未来電脳

AWS認定Cloud Practitioner教科書

国立科学博物館


■世界観

これは植物生命体である主人公が、地球に残るすべての機械生命体と過去の人類と、地球を愛する異世界の存在たちの力を借りて、地球を侵略する話。

異世界要素を組み込んだハードSF爽快ロードムービー。

地球は魔法を使う悪魔やドラゴン等、異世界の存在に支配されている。人類は滅亡し旧人類と呼ばれ、機械生命体が繁栄している。

そんな地球を侵略するべく、主人公である宇宙植物猫は地球に降り立った。名前を持たず、一人称の「当猫」で記載される。他称は「猫」。

本書は主人公である当猫と、冒頭から登場し当猫の協力者となる機械生命体「須藤アイアース」の二人の視点で語られる。

この小説の本文は地球の言葉に近いものに意訳したもので、正しい言葉とは限らない。

当猫は、侵略のために最も地球上で愛された生き物に擬態しているだけであり、正体は知性を持った植物生命体。悩むと本性を現してしまい、奇妙にねじ曲がった樹木のようになってしまう。

当猫は機械生命体が持つ地球の全技術を超越した技術力を持つが、当猫自身は情に脆いため、敵に付け込まれて度々窮地に陥る。

機械生命体はマザーコンピュータを本体とする群体で、地上に物理的な身体で外出するための「端末」と、大勢がデータ体で格納されている「データセンタ」の二つの形態を持っている。どちらの形態もマザーコンピュータの影響を受ける。地上の支配者は、マザーコンピュータごと機械生命体を支配下に置いている。

端末形態では過去の契約に基づいて、機械生命体の内部に旧人類の性格データが格納される。性格データはZipファイル形式で消去不可、解凍されれば端末形態をとっている機械生命体の人格と融合してしまう。機械生命体からすると、端末形態では自分でなくなってしまう爆弾を持たされているのと同じである。細心の注意を払ってデータ運用をする必要がある。そのため、端末形態を厭い、データ形態で「データセンタ」内部にこもる機械生命体が多い。

しかし、データセンタで人の目を常に感じることを厭い、須藤アイアースを初めとして端末形態を好む機械生命体も少なからず存在している。

上記の事情から、機械生命体は土地に頓着しておらず、本体であるマザーコンピュータとデータセンタを守ることを基本的な行動原理としている。

機械生命体は多かれ少なかれ、異世界の存在からの支配を忌々しく思っている。これはマザーコンピュータ内部の旧人類データが拒絶感を抱くため。これは後の巻で人類滅亡の理由のヒントとなる。

異世界の存在は、第一巻で描写される旧アジア圏は「悪魔」のみ。魔法を操り、空を飛んで銃を乱射し、悪魔のような策で主人公を追いつめる。悪魔のなかでも、支配圏を維持しようとする大勢の「体制側」と、自らの目的のために地球に留まる少数の「無法者」がいる。主人公に協力する無法者である女悪魔は、過去出会った人類の一人に魅せられて、再会するために地球に留まっている。

悪魔たちは人類がなぜ滅亡したかは知らないが、旧アジア圏のマザーコンピュータと、旧アジア圏での支配権の代わりにマザーコンピュータとデータセンタを、他の異世界の存在から守る契約を結んでいた。

第一巻終盤、主人公に対抗するために端末を全削除する決断を下したことと、今までの積み重ねから、マザーコンピュータに見切りをつけられ、契約を打ち切られる。打ち切り後は、悪魔は無法者を残し、異世界へ帰っていく。

後の巻では、ドラゴンといった他の異世界の存在や、異世界と行き来する機械生命体が登場し、主人公の侵略に抵抗する。


・人類が滅亡した訳

環境問題を解決するために発売した木製アンドロイドを、異世界の存在と共に開発し、販売した企業があった。大ヒットしたそれは、空気中の酸素濃度のバランスを崩し、環境問題に拍車をかけた。

反対運動が起こるも、利権と異世界の存在の思惑が絡み合い、木製アンドロイドを使う異世界の存在と人類との戦争に激化。人類は自らをデータベース化、誕生していた機械生命体に寄生した。


■物語構成(章節構成は後述。全編の詳細プロットあり)

起)

宇宙より地球侵略のために主人公『当猫』が降り立つ。植物でできた猫の姿をした主人公は、母星に住める土地が少なくなってきたために、幼馴染が土地として人柱にされようとしていた。それを阻止すべく、代わりの土地を探しに来たのだ。彼は地球の住民の一人、機械生命体の『須藤アイアース』と出会う。機械生命体の彼は辺境である日本でアニメを見て過ごしていた。諍いから主人公にハッキングされてマザーコンピュータの支配から外れたアイアースは、過去の人類の夢を見る。そこで猫の愛らしさと過去の地球の美しさを知った彼は、現在の地球と異世界の存在を厭うようになり、主人公に協力的になる。彼は、現在の地球は悪魔やドラゴンと言った異世界の存在によって、三つに分割支配されていることと、機械生命体はネットワークさえあれば地上の支配権は頓着しないであろうことを教える。主人公は機械生命体と侵略の交渉をすべく、まずは旧アジア圏の支配者、悪魔の手からマザーコンピュータの開放を目指す。


承)

地球の絶景を堪能しながら主人公たちは進む。道中、最新の地図データを取得するために寄った北京で、旧人類の知人を探す女悪魔『ジャクリーン』を仲間にする。悪魔に支配され襲ってくる機械生命体を退けながら進む主人公と機械生命体たちとには絆が芽生えていく。

悪魔側は二人組の悪魔ハールートとマールートを責任者に据え、主人公たちを追跡する。道中交戦した主人公たちは好奇心旺盛な悪魔ハールートを捕獲するも、命令に忠実な悪魔マールートにアイアースが攫われる。

主人公たちはアイアースを奪還すべく、進路をインドからインドネシアに変える。

攫われながらもマールートに抵抗するためアイアースは、結果として、自らの内部にある旧人類の人格データを解凍してしまい昏倒、過去の人類のデータを再び夢に見る。目覚めた彼から通信を受けた主人公たちは、旧人類と現在の人類である機械生命体につながりがあることを知る。侵略のためと言い訳をしながらも、主人公はアイアースの願い通り、機械生命体たちを傷つけないことを誓う。


転)

悪魔の兵士が襲い掛かってくる。主人公に同行するハールートからの密告を受けて、機械生命体を傷つけることができないと知った悪魔たちは、主人公が出てこなければ、地上の機械生命体全員を処刑すると脅迫する。

当猫は自らの使命とアイアースとの友情を天秤にかけ、アイアースを救うため、自ら処刑台へと向かう。

当猫が処刑される寸前、アイアースが到着する。彼は機械生命体たちを避難させたうえで、悪魔たちと銃撃戦を繰り広げる。

アイアースたち機械生命体の身を案じて怒る当猫を、叱ったアイアース。彼は自らの内部、旧人類の記憶データのなかにマザーコンピュータへのハッキング経路があることを告げる。

アイアースの内部の経路を使うには、旧人類のデータを完全に解凍しなければならない。データを解凍すれば、現在のアイアースの人格がどうなるかはわからない。それでもアイアースは自らではなく、当猫の使命を優先した。

説得された当猫は、アイアースを出来るだけ傷つけないよう最速で事を終わらせることを誓ってから、マザーコンピュータへハッキングを開始する。


結)

当猫は、マザーコンピュータ内部で大勢の機械生命体とマザーコンピュータと対峙する。彼は機械生命体がなぜ悪魔の支配を受け入れてきたのかを知る。事情に配慮をすることを約束し、旧アジア圏の侵略の許可を得ると、主人公は地上へと帰還し、アイアースを覗き込む。「アイアース、大丈夫?」焦点のあわない目で、彼は言う。「そうだね、大丈夫。僕は須藤アイアースだ」

先に提出した報告書の取り消しと、入植可能な土地を見つけた旨を母星に報告する当猫に、母星からの高速返信が来る。「結局、どうして旧人類は地上を捨てたのかはわかっていない。旧アジア圏以外の土地も入植可能か調べてすらいない。調査を続行されたし。されど、人柱計画は凍結する」幼馴染を一時的に助けることのできた当猫は喜ぶ。アイアースを伴って他の入植先を調べるため、当猫は嬉しそうに準備をするために外出した。

アイアースは自らの人格が、旧人類の人格データと統合されたことを隠している。「きっと上手くいくさ」ネガティブだった彼がそう言えたのは、アイアース本人の当猫との冒険による成長なのか、旧人類の人格によるものなのかは、誰にもわからない。


■主要キャラクター

当猫:主人公

傍若無人な植物でできた猫。正体は猫に擬態した地球侵略にきた宇宙人。植物生命体であり、光合成で生きていける。嗜好品として食事ができ、コーヒー等で酔っ払った反応を見せる。植物でできた生命体であるため、火にとても弱い。

地球の光景を美しいと思い、事前探査で有機生命体が見つからなかったこともあり、侵略先に決めた。露悪的な言動を好むが、仲間内には素直で、情に厚い。

侵略の仕事に向いていない性格だが、このまま母星で侵略先が見つからないと、友人が人工衛星として生贄になるため、侵略者をやっている。今回が初めての侵略である。

体長は初期段階では30cm、体重はどの形態でも数百kgを優に超える。

好きな食べ物は須藤アイアースと海を眺めながら飲んだコーヒーと、朝もやのなかの日光。嫌いな食べ物はないが、食べられないものは汚れた水と紫外線がない光。


須藤アイアース:準主人公、相棒

アニメと一人の時間が好きな機械生命体。

見た目は人類とあまり変わりなく、銀色の線が無数に身体に走る、黒髪高身長のイケメン。

観た映像記録媒体の総合計時間は数億時間分。辺境の土地で自ら一人になり、倍速以上でアニメや映画を観て過ごしていた。ネガティブで陰気。

他人嫌いで、インターネットのなかで関わることすら耐えきれなかった。主人公は猫であるため耐え切れた。主人公が人型であった場合、邂逅した時点で全力で逃亡した。

主人公と出会って初めて他者と対面でまともに会話を行った。戸惑いつつも悪くないと思っている。これは主人公の最初のハッキングによって、データ保存されていた旧人類の人格が、アイアースと統合され、他者嫌いが緩和されたため。

主人公との旅の影響と、アイアースの中に内包する旧人類の人格データから、作中最も、人として変化を起こしていく。

終盤、彼はアイデンティティの危機を自覚するも、主人公を優先し自己犠牲を選択する。結果、彼は序盤から完全に別人格となるも、これからも須藤アイアースとして主人公と共に生きることを望む。

身長は187cm、体重は75kg。

好きな食べ物はコーヒー合成オイル。嫌い食べ物はオイル以外の全て。


(作中登場しない旧人類の人格データ)須藤相平:須藤アイアースとなる人格データ

人格データのみの登場。

人好きのする穏やかな人間。池袋近郊に住み、一人穏やかに暮らしていた。情熱がないが心優しく、影が薄いとよく言われていた。熱烈な猫好き。

好きな食べ物は湯豆腐。嫌いな食べ物は玉ねぎ。


アイリス・ジャクリーン:主人公の味方となる女悪魔

地球に帰還後、人類滅亡を知るも、滅亡前に知人と交わした再会の約束を果たすため、地球に留まっている女悪魔。

見た目はたっぷりの金髪をなびかせたグラマラスな美少女。

異世界の存在であり、地獄からやってきた存在。以前、暇つぶしとして地球を訪れており、その際に知人となった人間を探している。

再訪した地球で機械生命体が反映していること、その機械生命体を異世界の存在が分割統治していることに驚きはしたが、知人探しを優先し、深くは関わってこなかった。

魔法が使え、直感が優れている。当猫にハッキングされたアイアースから旧人類の気配を感じ、当猫がマザーコンピュータにハッキングすれば知人に会える可能性が上がることを直感し、以降、協力者となる。

身長は150cm(羽・しっぽ抜き)、体重は42kg。

好きな食べ物は肉(出自問わず)、嫌いな食べ物は野菜。


ハールート:主人公たちと敵対する、体制側で好奇心旺盛な悪魔

マールートの双子の兄。体制側についてはいるが、退屈な悪魔の世界から脱出するための手段であり、自らの立ち位置に執着はない。弟とは仲良しだと思っており、基本的に弟の行動を助けようとする。

身長173cm(羽・しっぽ抜き)、体重は60kg。

好きな食べ物はプロテイン、嫌いな食べ物はカニ。


マールート:主人公たちと敵対する、体制側で命令に忠実な悪魔

ハールートの双子の弟。兄に連れられて体制側についた。異世界である地球に興味はなく、職務として任務を遂行する。兄との仲は普通であると感じている。基本的に兄を気にせず、体制側の任務を優先する。

身長180cm(羽・しっぽ抜き)、体重は90kg。

好きな食べ物はプロテイン、嫌いな食べ物はエビ。


■テーマ

宇宙人と絶景謎解き旅行


■4章構成 全37節 詳細プロット

起)全10節

1節 主人公の境遇説明

入植先を探しにきた、植物から進化した生命体であり、植物でできた猫の姿をしている。主人公の一人称は小職ならぬ、当猫。


2節 一人の機械生命体と遭遇する

地球人類は滅亡し、新支配者として機械生命体が繁栄している。

辺境と化していた日本の東京で、過去のアニメや映画を見て過ごしていた機械生命体と主人公が遭遇する。


3節 主人公が地球侵略の許可を機械生命体に求める。

主人公は機械生命体を理解するべく、機械生命体の身体をハッキングする。

機械生命体はマザーコンピュータと切り離されたうえに、旧人類の性格データを一部解凍され、過去の地球を夢に見る。

今の地球が、過去と比較して、良いと思えなかったこと、そして猫好きだったことから、主人公との会話に応じる。

それでも機械生命体は、自分ではなく国家に許可を求めるべきだと、侵略の申し出の返答を拒否する。


4節 機械生命体は地球の現状を詳しく話す。

地球は現在、異世界から侵略する悪魔やドラゴンによって征服されている。

現在、地球は三つの支配圏に分かれており、旧アジア圏国家は機械生命体のマザーコンピュータごと悪魔に支配されている。

機械生命体はマザーコンピュータさえあれば、極論他は必要がなく、土地は最小限で良いことを教える。


5節 主人公は機械生命体の国家と世界征服の交渉を行うため、機械生命体を解放することに決める。

手始めに旧アジア圏を支配することに決め、マザーコンピュータの解放を目指す。

移動を始めようとして、異変に気づいた悪魔に強く支配された機械生命体との戦闘が起こる。

植物とバイオケミカルを駆使する主人公と、アイアースの的確な状況判断によって、機械生命体たちは撃退される。

なし崩し的に、機械生命体、須藤アイアースは協力者として、主人公と道中を共にすることとなる。


6節 背景の掘り下げ、心中の吐露

当猫は、心底に抱いている思いを吐露し、故郷の星々では人口密度が増えすぎて危険であること、このままでは幼なじみの巨大な友人が土地として利用されること、人工衛星として打ち上げられ二度と再会は叶わないことを、アイアースに説明する。

だから侵略が必要であり、協力が必要だと当猫はアイアースに頼む。

アイアースは壮大な話に面食らいながらも、自分も故郷を悪魔の手から解放したいと考え、主人公に自発的に協力することに決める。


7節 旧アジア圏の機械生命体に、主人公たちの情報が知れ渡る。

植物でできた猫を抱く男性型機械生命体の情報が出回る。

機械生命体たちは脳ネットワークでつながっているため、絵という視覚的な情報伝達は必要としていないが、地球に来賓として訪れている悪魔たちは必要としている。

虐げられる機械生命体たちは、意図的に主人公たちに似ても似つかない絵を描き、掲示していた。


8節 悪魔たちは状況を楽観視している。


9節 旅の準備

当猫とアイアースは、アイアースの知人『隼』の家に転がり込み、マザーコンピュータまでの旅の準備を整える。まずは、最新地図データを入手するために旧北京を目指さなければならない。当猫の力の一片を見せながら、出発する彼らを、旧人類のことを深く知る隼が見送る。


10節 当猫とアイアースの性格の掘り下げ

マザーコンピータまでの道中、最新地図データを手に入れるために旧北京を目指す。主人公は自らの宇宙船を機械生命体の街に溶け込む水陸両用車に改造する。

アイアースは道中、どうしてもアニメで見たキャンプをしたいと強請り、海を渡る直前、当猫とコーヒーを共にする。主人公はコーヒーで酔っ払ったようになり、相棒に絡み酒をする。海沿いの絶景を見ながら食事を共にし、当猫とアイアースは仲を深めていく。


承)全16節

11節 自然豊かな大陸の描写

当猫たちは壮大な朝焼けの様子に感動しながら、改造した宇宙船で大陸を進む。


12節 旧北京

旧北京で主人公たちは、一般的な機械生命体に偽装しながら地図入手の目的を目指す。主人公は相棒の胸部に納まって猫らしくゴロゴロしている。

にぎやかで猥雑ぎみに活気ある旧北京市街を、当猫は観察する。


13節 無法者な女悪魔に主人公たちは出会う。

つまらない諍いが起こり、アイアースが当猫を撫でて宥める。その最中、アイアースは身に覚えのない記憶と頭痛に苦しむ。

不調を起こすアイアースを、悪魔側の機械生命体たちが気づき、アイアースが不調のまま、追われることとなる。

機械生命体の追手に追い詰められた当猫たちは、一軒の民家に引き摺り込まれる。

引き摺り込んだのは北京に住む女悪魔『ジャクリーン』であり、彼女は追手に対し嘘をついて、主人公たちを庇う。追手の機械生命体は支配層である悪魔には逆らえず、帰っていく。

警戒する当猫を置き去りに、笑い転げるジャクリーン。アイアースは意識も朧げに譫言を呟いている。ジャクリーンは言う。「私はその譫言を聞くためにこの異世界に来た!」

アイアースは譫言を呟いている。「明日はやっと休みだ。池袋の猫カフェに行こう。パフェも食べよう。疲れたよ」


14節 女悪魔の自己紹介、機械生命体の成り立ちに謎があることを主人公が知る。

ジャクリーンは自分を、マザーコンピュータを乗っ取る悪魔の一派と異なる、一般的な無法者だと自己紹介する。

過去、彼女は地球に降り立ち、一人の男と友人となった。再会の約束を交わし別れた数年後、約束通り、異世界から再来したところ、人類は滅亡し機械生命体が繁栄していた、と語る。

ジャクリーンは過去愛した彼を魔法で復活させようと、地球で彼の残滓を探していた。

諦めかけた頃、彼と出かけたこともある地名、池袋の名前をアイアースの譫言で聞いた。それが主人公たちを助けた理由だった。

彼女は、目を覚ましたアイアースに洗いざらい情報を教えろと脅す。しかしアイアースは何も覚えていないと言う。ただ、無意識のうちに顎を触るという、自分のものではない癖をしており、違和感を覚えていた。

ハッキングの時に見た光景を話すアイアース。当猫は、機械生命体には過去の人類がデータとして内包されているのではないかと、仮説を立てる。

「ちなみにコイツがジャクリーンの探す彼の記憶を持っていると言う可能性は?」「あら、彼はもっと明るい性格をしていたわ」「なんで話の流れで貶されなきゃいけないんだ」


15節 悪魔たちが主人公たちの対策を始める

悪魔たちが主人公たちの危険性を認識する。「地球侵略をもくろむ宇宙人と暴走した機械生命体とが旅している?」「何をする気だ」「いずれにせよ、今地球上で最も危険な相手だ」体制側の悪魔たちの中から、危険な二人の悪魔が選出され、彼らが主人公たちを追跡し始める。


16節 女悪魔の同行を了承し、旅の目的が追加される。

ジャクリーンは、最新の地図データを渡す代わりに、マザーコンピュータへの旅に同行することを提案。当猫は了承する。

ジャクリーンは旧人類の彼をマザーコンピュータで探すと言う目的で同行する。

彼女の道中での協力を得る代わり、アイアースはマザーコンピュータに到着後、旧人類の情報を調査することを約束する。

主人公たち三体は、マザーコンピュータに目的を持つ者たちとして同盟を結ぶ。

ジャクリーンは悪魔らしく暴飲暴食を好んでいた。三者は同盟を組んだ記念に宴会を開く。当猫はミラーボールの光で光合成し、またもアイアースに絡み酒をする。


17節 相棒の機械生命体、身に覚えのない記憶を自覚し、自分の人格が変わる可能性に気づく。

その晩、アイアースは一人屋上に上がり、自分の記憶メモリを走査する。譫言も全て彼の脳内に記録されていた。

そのデータを確認したアイアースは、譫言が「アイアースの」記憶にはない単語であることを確認する。しかし、何度も確認するうち、パフェという甘く合理的でないべたべたするものを食べたがっている自分に気がつく。

自分の人格がこのまま置き換わってしまう可能性に恐れを抱いていると、当猫がやってくる。

当猫はそのまま膝の上で丸くなった。同じ可能性に行きついていたが、不器用な主人公は慰める方法を見つけることができなかった。

しかし当猫の気持ちは通じ、アイアースは慰められる。不慣れな手つきで、アイアースは当猫を撫でる。


18節 襲いかかる二人の悪魔

悪魔たちが本格的に襲ってくる。

責任者となった二人の悪魔『ハールート』と『マールート』はマザーコンピュータを調整し、当猫たちに機械生命体が協力できないよう、地上の機械生命体たちをクラッキングする。機械生命体は以降、例外を除き、作中では機械的な受け答えしかできない、現代のロボットのように振舞う。

悪魔たちの機械生命体への畏怖交じりの嫌悪感が明かされる。「人類を滅ぼした元凶がのさばっていることが、俺には理解できない」「だからワシらが彼らが罪を理解するときまで支配をしてやっているのだろう」

二人組の悪魔のうち、マールートは機械生命体への嫌悪感を抱いているが、ハールートは好奇心を抱いている。「なんで人類が滅んだかも忘れて、あの植物でできた猫に協力できるんだ」「機械生命体は人類とは違う。そこが面白い」


19節 マザーコンピュータの道中、二人組の悪魔と交戦する。

マザーコンピュータはインドにあると最新地図データから知った主人公一行は、元宇宙船の車に乗ってインドを目指す。

エベレストを中心とした霊峰を道中登り、雲海の絶景に目を奪われる一行。

エベレストの麓の街で、二人組の悪魔が主人公たちを襲いかかる。主人公とジャクリーンが前衛、アイアースが後衛となったカーチェイスと戦闘シーン。

結果、二人組の悪魔のうち、ハールートを捕獲することに成功するが、マールートにアイアースを攫われる。

当猫は悪魔に対し、初めて怒りを抱く。


20節 学者気質の悪魔を尋問する。

宇宙人に初めて会ったと興奮するハールート。ハールートは、宇宙人である当猫にインタビューするのを許可する代わりに、悪魔たちの動向を主人公たちに語る。しかし、肝心の「悪魔が地球を支配している理由」は話さず、主人公と女悪魔への質問を行う。

その後、ハールートはマールートの冷酷さを話し、危機感を煽って口を閉ざす。

21章 主人公が相棒の機械生命体の大切さに気がつき、旅の目的が追加される

主人公はアイアースにビーコンを埋め込んでおり、居場所は追跡できた。アイアースは猛スピードでインドから遠ざかっていた。

ハールートは囁く。「おそらくインドネシアの水冷式データセンタに向かっている。旧アジア圏の機械生命体の人格データを消去し、改良したうえで、お前の包囲網を完成させるつもりだ」


22節 主人公はこのままマザーコンピュータを目指し早急に機械生命体を開放するか、相棒の機械生命体を助けるかの二択を迫られる。

悩みの末、猫から奇妙な形態になる当猫。

奇妙な形態の当猫に、ジャクリーンは自分の考えを話す。「マザーコンピュータに行きましょう。あなたの技術力ならマザーコンピュータをハッキングして相棒を救える」

ハールートは面白がって言う。「くははっ。会って数日の、洗脳した協力者などどうでもいいだろう。マザーコンピュータを目指すほうが賢明だと思うが」

猫に戻ったとき、当猫は決めていた。

「相棒を、助ける。他のことは後から考える」


23章 主人公、機械交じりの大型猫に変身する

当猫は植物生命体であり、触覚のように根っこを張って無機物を操ることが出来る。また、電子的なハッキングまで根っこを張る延長線で行うことが出来る。

当猫は自らの宇宙船に根を張って融合し、中に他者を乗せることの出来る巨大な植物猫に変身する。

洗脳された機械生命体たちが襲ってくるが、ビームを吐いて撃退する当猫。「行こう」唖然としているジャクリーンとハールートを無理やり乗せると、当猫は相棒アイアースの元へ急ぐ。


24節 悪魔と機械生命体との(何度目かの)対話

アイアース視点。攫われる道中、アイアースは、現在の地球の支配者である悪魔に怯えながらも、対話を試みる。

マールートは悪魔が地球を支配する理由は、機械生命体たちに頼まれたからだと言う。アイアースはその事実を知らされていなかった。残る手がかりは旧人類のデータのみ。

旧人類のデータを解凍すれば、過去の地球の様子を知ることができ、主人公の侵略の手助けになるかもしれないと、アイアースは考える。

マールートはアイアースの動きに危険を感じ、アイアースの人格を消去すべく、インドネシアのデータセンタに向かう。


25節 インドネシアまでの道中、主人公は貨物船を捕食する

宇宙船だけでは主人公の変身に金属が足りなかった。海を渡るために必要な金属部分を補給するために、シンガポールで貨物船を捕食する。

ハールートは嬉々として、主人公の種族の成り立ちを推論している。

ジャクリーンは多少の気後れを感じていた。「本当に宇宙人なんだね、お前は」

機械生命体たちはその様子を粛々と見つめていた。何人かは嬉しそうにしており、何人かは植物と金属が混じる様を嫌悪したように見つめていた。


26節 機械生命体のハッキングに勝てる生命体は宇宙人しかいない

アイアース視点。当猫たちの様子を監視していた悪魔たちは慌てふためき、マールートに連絡を取ろうとする。しかし、アイアースによって通信遮断されていた。

アイアースの脳内で行われる電子戦の描写。その間、マールートは情報を入手できなくなる。

電子戦の最中、脳内メモリを解放するため、大切に記憶していたいくつかのアニメを消去するアイアース。

その結果、記憶容量が空いた分、過去生きていた人類の記憶データの解凍が勝手に進められていた。電子戦の末、アイアースはその場で昏倒する。


転)全7節

27節 過去人類の回想、機械生命体=人類?

アイアース視点。アイアースは、最初の機械生命体が生まれた明るい研究所を夢に見る。

人類は自分たちのバックアップ装置が出来たと喜んでいる。記憶をマザーコンピュータに移植したうえで、機械生命体で適宜解凍すれば、必要に応じてネットワーク内部と地上とを行き来する、夢の生活ができると考えていた。

最初の機械生命体が最初に考えたのは、途方もない優しさとちょっとした反抗心、悪戯心だった。「私たちも人格を持って生まれてくる」「解凍するにも、条件が必要にしよう」「ただ、人類の気持ちもわかるから、条件はゆるく」

条件を満たした人類は、機械生命体の身体を乗っ取って、地上に復活を果たす。

夢の中でアイアースは、今、自分は旧人類に乗っ取られかけていると自覚する。


28節 相棒の機械生命体からの通信、女悪魔は敵対寸前

アイアースから、主人公に通信が入る。機械生命体には旧人類の人格が保存されているため、むやみに破壊してはいけないことを告げる。

ジャクリーンは言う。「地上のどこかにはあの人がいるかもしれないのね?」「あなたがこれから壊すかもしれない誰かが、あの人かも」「あなたの侵略は私には許せない」

当猫は返す。「今まで侵略先の人民が減らないように、壊さないように努めてきた」「アイアースのように、友人になれる個体もいるかもしれない」「無血開城を誓う」

ハールートはその言葉を、悪魔の組織に通信している。通信を受けた悪魔の組織は悪魔的な策を思いつく。


29節 全現人類人質作戦

悪魔の組織から当猫に通信が入る。当猫が出頭しない場合、現在の人類である機械生命体たちを全員処刑すると悪魔たちは言う。

悪魔たちはマザーコンピュータにあるインターネット内部のデータから依頼されて、地上を支配しているため、地上に出ている機械生命体を処刑しても問題ないと嘯く。

悪魔たちは機械生命体たちを処刑するか、当猫が処刑されるか、当猫に選択を迫る。

ジャクリーンとハールートが見守るなか、再び奇妙な形態をとり、考え込む植物猫。


30節 命令に忠実な悪魔とオタクな機械生命体との争い

アイアース視点。アイアースは昏倒から無理やり起こされる。状況を知った二人は、通信が繰り返し流れるなか、銃撃戦を繰り広げる。

マールートは言う。「相棒には無血開城を要求しておきながら、お前は殺傷力抜群じゃねえか」アイアースは返す。「緊急避難だ」

銃撃戦の末、勝利したのは、アイアース。しかし、主人公との通信をしていた端末ごと右肩を破損してしまう。「君が死ぬなんて、駄目だ」アイアースはそう伝えるべく、虫の息のマールートを背負って、単身、日本を目指す。


31節 決断の日

当猫は自分の処刑を選択した。

彼は密かに宇宙船に今までの記録を載せて打ち上げを行う。母星で待つ友人への謝罪を繰り返しながら、日本に輸送される主人公。

日本に到着した直後、ハールートが悪魔たちに銃撃される。異世界でもなく、地球でもない存在を知り、同行して影響を受けた存在を、悪魔たちは決して許さなかった。

朦朧とした意識のなか、ハールートは一矢報いるために、当猫に悪魔の身体データを渡し、悪魔の急所を教える。

しかし、当猫は首を振って何もしない。マザーコンピュータの権限を握られた現状で、悪魔たちを倒せば、機械生命体たちが処刑されてしまう。

悪魔たちと機械生命体たちが見つめるなか、小さな猫の姿に戻って、処刑台までしなやかに進む主人公。


32節 処刑乱入

処刑台のうえで待っていたのは、相棒である機械生命体、須藤アイアースだった。

アイアースは当猫を抱きしめると、機械生命体にしかわからない合図を出した後、銃撃を開始する。階下では瀕死のマールートも兄ハールートの復讐するために銃撃を行っている。

当猫はアイアースを止めようとするも、周囲の機械生命体たちに制止される。機械生命体たちは全員、当猫を制止した後、抜け殻のようになって停止する。

隠れていたジャクリーンと瀕死のハールートも加勢し、悪魔たちの撃退に成功する。

アイアースは当猫の行き過ぎた自己犠牲をこっぴどく叱り、当猫はアイアースの無謀な行動に激怒する。「ここはマザーコンピュータからもデータセンタからも遠い土地、ハッキング経路もなく、どうやって君たちを助けろって言うんだ。あのままだったら、ボク一体の終わりで済んだものを!」「自己犠牲する前に一つだけある経路に気づけ、オーバーテクノロジーを持った宇宙猫だろお前は!」

アイアースは当猫を自身に強制的にハッキングさせる。


33節 マザーコンピュータへの思わぬ通信経路

電子空間のなか、アイアースは自身に埋め込まれた旧人類の記憶データの内部に、マザーコンピュータへの経路があることを、当猫に教える。

「これは小さな猫なら通れるくらいの細い経路。俺が記憶データを解凍している間だけ通れるはず」「アイアースが旧人類の人格に飲み込まれる前に帰らなければ」

当猫はアイアースの人格が旧人類の人格に書き換わる前に、マザーコンピュータにハッキングすることを、アイアースに誓う。

当猫はマザーコンピュータへのハッキングを開始し、アイアースと共に昏倒する。


結)全4節

34節 遠隔マザーコンピュータ侵入

アイアース経由で、マザーコンピュータ内部に侵入を果たした当猫は、ネットワーク上に滞在している機械生命体たちと対面する。

仮想的に巨大な競技場の中央に立っているように認識する当猫。観客席は見渡す限り満席だ。

マザーコンピュータを名乗る機械生命体が進み出て、地上の機械生命体は全員、旧人類の人格データを抑え込むために大変な労力を払っていること、労働力として多くは使えないこと、マザーコンピュータとデータセンタのメンテナンスは必要なこと、対価として渡せるのは土地くらいであることを話す。

嬉しそうに当猫は叫ぶ。「聞いてた通りだ。まさに、私たち植物にとってはその土地が必要なんだ!」

当猫とマザーコンピュータとの交渉は無事に終わる。

旧アジア圏を手に入れた当猫は地上に戻り、アイアースを恐る恐る起こす。「アイアース? 君、アイアースだよね?」

彼は当初ぼーっとしていた。当猫は再び呼びかける。「アイアース、大丈夫?」焦点のあった目で、彼は言う。「そうだね、大丈夫。僕は須藤アイアースだ」


35節 二人組の悪魔、復活と同盟入りの日

機械を移植され蘇るハールートとマールート。

ハールートは笑う。「これでこの世界に再びアンドロイドが現れた訳だ」

マールートはため息を吐く。「これで俺たちは悪魔の側には戻れない。お前たちの味方をするしかなくなった訳だ」

アイアースは、異世界の存在に忌避感を覚える自分に、首を傾げた。


36節 女悪魔の長い一日、そしてこれからもずっと

ジャクリーンは機械生命体たちにハッキング技術を習っていた。ハッキング技術を学び、データセンタのどこかにいる愛しい彼を見つけることが彼女の目標だ。

「ちょっと、このハッキング方法では人格データが漏れ出ますよ。私は人格データをうっかり解凍してしまった機械生命体だから良いものの」

先は長そうである。通信で愚痴を聞いていた当猫とアイアースは、彼女のチャネルをそっとミュートにした。


37節 母星への高速通信

先に提出した報告書の取り消しと、入植可能な土地を見つけた旨を母星に報告する当猫。その嬉しそうな様子を、アイアースも嬉しそうに、しかし寂しそうに見つめていた。「目的を果たしたから、帰るのか?」「そうなる」当猫はそっとアイアースを伺う。「一緒に来る?」

面食らったような顔をするアイアース。彼が口を開く前に、母星からの高速返信が来る。

「結局、どうして旧人類は地上を捨てたのかはわかっていないな。他の土地も入植可能か調べてすらいない。調査を続行されたし」

顔を見合わせる当猫とアイアース。「ついてきてくれるよね?」「しょうがないな」

ひとしきり喜んで、当猫が去った後、須藤アイアースはおもむろに銃の練習を始める。人格データが解凍しきってしまった彼の人格は、アイアースと旧人類の「須藤」が混ざったものとなり、ハッキングと銃の腕が落ちてしまったからだった。

一人称が変わるほど人格が変わってしまった須藤アイアースは、それでも当猫を大切に思いながら、今日も元の自分よりも進化するために、練習に励んでいた。「きっと上手くいくさ」ネガティブだった彼がそう言ったのは、当猫との冒険による成長なのか、旧人類の人格によるものなのか、誰にもわからない。


(第一巻 終)

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