第5話措置入院

僕は初めて、精神科の病棟に入院した。措置入院は家族の了解が得られないと退院出来ない。許可が下りれば、任意入院となり患者の意思と主治医の判断で退院出来る。

閉鎖病棟は、名の通り外界へ繋がるドアには鍵がかかっている。

だから、運動不足にならない為に、患者は病棟内を歩き回るのだ。

許可が下りれば、タバコ、お菓子を買うために了解と主治医の許可で、売店に行ける。

それは、比較的に症状が落ち着いた患者のみだ。

閉鎖病棟の中の中でも、更に部屋と病棟内とのドアに施錠される部屋がある。

そこには、トイレがあり、食事は看護師が運んでくる。

監視カメラが付いており、異常があれば即看護師軍団が対応する。

僕の場合は、そこまで酷くなかったので、前者の閉鎖病棟内で、比較的快適に過ごせた。

許可が下りれば、病院敷地内を散歩出来る。


僕は落胆した。罪を犯した訳ではないのに閉鎖病棟に押し込められるとは。刑務所ではないか?

タバコは1日1箱までと決まっていた。

風呂は、順番に1日おきに入れる。

中には、刺青のある人もいた。

僕はその人と仲良くなり、暇潰しに将棋を指したり、お菓子を交換したりした。

入院から1ヵ月後、任意入院になり退院した。

これから、後、2回、閉鎖病棟に入院する羽目になるが、僕の30代はうつ病に苦しんだ思い出しかない。

退院後、A型作業所で働き、また、障害年金で何とか生活してきたが、安定はしていない。

精神障がい者と健常者。

見た目は変わらないのに、社会的地位はどん底。

僕の人生は、終わった。そう考えていた時期であった。

しかし、微かにチンダル現象の様に光の筋が見え始めた。

それは、闘病9年目の38歳の時であった。

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