第25話 ケイと狭いお部屋
『ま~よえ~るこひつじちゃんたちぃ♪ ボクたちがハグしてあげるぅ~♪ だから君らの愛をおくれよ~♪ ラブ! ラブ! ラブ! ラーブ!』
今、女の子たちに大人気だという男性アイドル4人組の【エンジェルーん】というグループのネットライブを偶然、見ている。
なぜか、ユーチューブのホームに、あなたへのオススメでたくさん動画がでてきて、ライヴ中というのがあったので開いてしまったのだ。
歌とダンスの良さはわからないけど、同時に一万人もの人たちが見ているのはそれだけ人気なんだと思う……そのグループに、先日の朝、頭おかしい系だなと思っていたホスト風の男がいた……。
ミカエルって、おかしな名前だと思っていたけど、つまりグループ内での名前だったのか……。
『き~みたち~の愛をとどけて~! ボクたちにとどけてよ~!』
ミカエルが叫ぶと、ものすごい勢いでスーパーチャットがぁ!
1000円!? 5000円!? 10000円!? 50001000100001000010000100010000500030003000200040005000700020000……すげー……馬鹿なことになってる。
つまり、彼らがいう愛とは、投げ銭のこと……えげつねぇ……。
ていうか、なんでこれをすすめた? アルゴリズムも狂ってんな……。
「おい、山田。早く食べろ」
「あ、すみません」
「麺がのびたら台無しだぞ」
「いただきます」
佐田さんが作ったというラーメンを頂く……俺の隣では、麺だけを上手にちゅるちゅるとすするケイがいて、その仕草がとってもかわいぬぅうううう!
ケイになら、いくらでもスーパーチャットしちゃうよ!
「どうだ?」
佐田さん……めちゃくちぇ美味しいんですけどぉおおおおお!
「佐田さん、すっごく美味しいです!」
「だろう!? そうだろう!? グワーハッハッハッハ!」
高らかに笑った佐田さん!
スープは豚骨ベースの醤油系なんだけど、くどくなくスルスルと飲める。だけど細麺によくからまって、とっても美味しい! 煮卵は中が半熟……チャーシューはトロトロだけど、噛みごたえがあって……ほうれん草もうまい!
プラっと帰ってきては、朝っぱらからラーメンを食べさせてきやがってと思っていたけど、その腕は確実にあがっているぅ!
「山田、だがね……そろそろ限界だ。キッチンが狭い」
……お前は! 居候みたいなもんのくせに文句を言うんじゃねぇ! という本音をグっと我慢して、麺をおねだりするケイの頭をナデナデ…かわいぬぅ! してから不満げな佐田さんを見ると、佐田さんは俺の隣にスンっと座る。
な……なんでしょう?
「広いところに移ろう」
……この人は馬鹿なんかな?
「あの……あなたが出ていけばいいのでは?」
佐田さんは、目を大きく見開いた。
驚いた! て顔だ……。
「山田……お前、我のシモベであろう!? よくもそんなひどいことを……」
「シモベじゃないですから!」
「番犬、お前も広いほうがいいだろう!?」
ケイが、しっぽをピコンとたてて左右にふると、俺を見つめる。
……ケイ……そうだよね。
ケイ、大きな身体だもの……この前、花京院さんところに預かってもらっていたけど、あそこまでとはいわないにしても広いところで暮らしたいのか……。
「山田、引っ越そう?」
佐田さんは別にいなくてもいいんだけど……。
「ですが、お金がありません。俺の給料だと、キッチン広い部屋なんて……分譲賃貸とか家賃がとても高いし、ペット飼育も細則があってケイちゃんみたいな大きなコは難しいんですよ」
「お前は馬鹿か?」
あんたに言われたくない!
「買えばいいではないか。広い土地を買って、建物を建てればいいではないか。我のために地下神殿を造り、そこに広いキッチンを所望だ」
あんたはやっぱり馬鹿だ!
「いくらすると思っているんですか!?」
「金ならいくらでもある。いくらほしい?」
「え?」
この人……そういえば、金持ちだったっけか……。
いや、いくらと言われても、まずは土地や建物をみないと。
「いくらとは今、言えないので調べておきます」
「わかった。とりあえずいくらかお前にくれてやろう。口座情報を教えろ」
……俺はスマホのネットバンクアプリを開いて、佐田さんに見せた。
すると、彼女は目を閉じて「ニャムニャムにゃん!」と言った……。
どういう……?
「山田、送った。足りなかったら言え」
佐田さん……いや、彼女はこれまでおかしなことが多々あった。
もしかして、本当に?
ネットバンクの残高確認をすると、残高が突然、5億円超えてた……。
超えてたんだ……。
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