第22話 ケイと俺と佐田さん

 屋台で美味しいうまもんを堪能した後、勇気を振り絞り帰宅した。


「ケイちゃん、後ろに隠れて」


 ケイにそう指示を出すと、耳を倒して俺を見上げる……かわいぬぅ!


 部屋には明かりがついていない。


 午後11時過ぎだ。


 佐田さんは寝ているのだろうか……?


 エントランスのオートロックを通過し、エレベーターに乗る。そして三階の自室前に立ち、玄関を開けた。


 ……。


 いない?


 靴を脱ぎ、玄関の靴箱の上においてあるケイの足拭き用クリーナーペーパーを手にして、ケイのあんよを拭きふきしてから中に入る。


 いない……。


「佐田さん?」


 返事がない。


 よかった!


 いつの間にか出て行ってくれたみたいだ!


 やったー!


「ケイちゃん、平和がかえってきたよ!」

「ワン! あおーお!」


 ケイも思わず叫んじゃうほどの喜びよう!


 それからお風呂に入り、歯磨きをして、ケイと一緒におふとんに入った。


……。


…………。


「おい、山田、起きろ。六時だぞ」

「……むにゃ」

「起きぬか。番犬の散歩があろうが」

「は!」


 飛び起きると、エプロンをつけている佐田さんが俺を見下ろしている……。


「佐田さん?」

「早く番犬を散歩につれていけ。帰ったら朝ごはんを食べて仕事に行くのだぞ」

「……あれ? どういう?」

「番犬、起きろ」

「きゅん」


 耳を倒して、のそのそと俺の後ろに隠れるケイ。


「つけ麺をつくってみたのだ。散歩から帰ったら食べてみて、感想を教えろ」

「……」

「わかったか?」

「はい」


 俺はもう、いろいろと考えるのをやめたのである。


 ケイがいてくれたら、それでいいいぬぅうううううう!


 泣きたい……。


 朝からつけ麺……。

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