星を抱く少年 星神楽番外編 九州芸術祭文学賞次席受賞。

詩歩子

第1話 北辰、地上の星座、神への祈り


 もし、星に哀しみがあるのならばこんな残酷な世界にいる僕は死んでもいいだろう。


 星には哀しみもない。星には想い出もない。星には苦悶もない。


 ただ夜空に向かって光っているだけだ。


 星に罪はあるだろうか。


 星空の下で舞う僕に何か残っているだろうか。


 意味もなく続きを告げる映画のように歳月は否応なしに過ぎていく。


 ざらついたココアの味を苦く感じるように歳月は唐突に憂鬱と握手する。


 


 星は死を抱いている。


 星は死を誘い、死者を悼み、死の淵にいつもさまよっている。


 星と死は付き物なんだよ、と意味もなく僕は嘯く。


 こんな星空の下、僕は神楽を舞うしかない。


 神への祈りか、夜の淵への祈りか、それとも我が身の境遇を鑑みての舞か。


 己と闘え、この身が粉塵と化すまで独りきりで。


 己の心の清冽な刃を振りかざしてただひたすらに舞え、舞い狂え、と。


 


 まだ星は僕を嗤っているんだろうか。


 いや、星はただひたすらに運命を守って輝いているだけだ。


 漆黒の底でただ瞬くだけ。


 


 星のように感情もなく、未練もなくそこにただあるだけならばどんなに楽だろう。


 星には哀しみはない。何度も続く映画のワンシーンのようにあの星を掴んだら死んでしまうんだろうか。


 たとえ、この身が朽ち果てても地球は永遠に回り続ける。


 あんなに大切だった想い出も綺麗さっぱり消えてしまった。


 こんなに空を見上げても何も変わらない。


 


 星に舞え、星と舞え、心を鬼にして舞え。


 星への祈りは神への祈り。


 

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