第7話 明日のお誘い
僕はすぐに自転車置き場に自転車を置いて、静子さんとエレベーターに向かった。
「知らなかったです。まさか静子さんがこのアパートに住んでたなんて」
抑えきれない喜びを隠しながら、エレベーターに乗る。静子さんは
「私もだよ」
と、僕の後に続いてエレベーターに乗った。
「静子さん、何階ですか?」
「6階」
「えっ」
僕の声に、静子さんが不思議そうに僕を見ている。
「あ、いえ、なんでもないですっ!」
僕は静子さんにそう返して、閉じる、のボタンを押した。エレベーターはずんずん、と上に上がっていく。2階、3階、と上がっていって、すぐに6階に着いた。扉が開くと、静子さんは大きく一歩を踏み出して、エレベーターを降りた。その後を、僕も降りる。
「え、」
静子さんが零した声を無視して、エレベーターは静かに1階へと降りていく。静子さんは不思議そうに僕を見ていた。僕は静子さんを見上げて、ふっと笑った。
「僕も6階なんです!」
静子さんはしばらく目をまん丸くしていたが、僕の言葉を理解して、
「凄い偶然」
と、言った。僕もその言葉にこくり、と頷いた。まさか静子さんと住んでいるところまで一緒だとは思わかなかったからだ。僕は静子さんとアパートの廊下を歩き始めた。10時30分を回っているだろう夜の外は静かで、僕と静子さんの足音だけがコツコツ、と響いていた。
「あの、静子さん」
僕は隣の静子さんに声をかける。静子さんは立ち止まって、
「ん?」
と、僕の顔を見た。僕は学ランの裾をいっぱいに握って、静子さんを見上げた。
「あ、明日も、図書館、来ますか?」
勇気を振り絞ってそう尋ねると、静子さんはこくり、と頷いた。僕はまた息を吐いて、涼しい空気を胸いっぱいに吸い込んで、口を開いた。
「あの、明日も、良かったら一緒にかえりませんか?」
きっと今、僕の顔は赤いに違いない、と思った。それぐらい、緊張している。静子さんは何も言わずにただ、僕を見ていた。僕は付け足すように言葉を紡いだ。
「あの、僕。静子さんが、僕の隣に座ってくれた日からずっと、静子さんに興味があって、いつか話したいなって、ずっと思ってて!だから今日、話せて色々共通点があったの、すごく嬉しかったんです」
静子さんは黙って聞いてくれている。
「静子さんのこと、絶対退屈させないんで、なので、明日も一緒に帰ってくれませんか?」
そう言い終わって、荒い息のまま静子さんを見ると、静子さんは目をまん丸くして、僕を見ていた。そうしてしばらくしたあとに、こくり、と頷いて見せた。
「私は明日も図書館行くから。待ってるね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます