第26話

 本日のオリヴィアお手製デザートはフレンチトースト。

 食パンやバケットなどを用意して。

 卵、砂糖、バター、牛乳を混ぜ合わせたものを容器に入れて、パンを浸して冷やしておく。


 時短のやり方もあるが、睡眠時間を利用する事にした。オリヴィアは寝る前にコレを準備し、

 卵や牛乳が混ざった液体を一晩かけてじっくりパンに吸わせていった。

 そして起きた時にパンを裏返して、残りの液体を再びパンに吸わせて昼過ぎまで待つ。


 後はじっくり焼くだけなので、こうする事で丁度おやつの時間に本格的なフレンチトーストが作れるようになった。





「美味しいっ美味しいっ」

 

 口ばしでフレンチトーストをムシャムシャとガッつくデブ鳥のフェリクス。


「フェリーさん、よかったら私の分も半分食べますか?」

「食べるー!」



 オリヴィアは自称フェニックスのデブ鳥、フェリクスをフェリーさんと呼び、何だかんだで打ちとけていた。



「よく食べるなぁ…あのデブ鳥…」


「まぁ、太ってても鳥や動物だと可愛いよね、健康面の事を考えなければ。太った脂ギッシュな人間と違ってさ」


 クリストファーとミシェルはフェリクスの食べっぷりを見ながら、自分達に出されたフレンチトーストを上品に口に運んでいた。



「そんなに食べてばっかりだと、晩御飯が入らなくなってしまいますわよ?」


 ガツガツと食べ続けるフェリーに、ローズは苦言を零す。


「!!!晩御飯!晩御飯のメニューなにぃ??」


「デザートを食べながら晩御飯に期待膨らますなよ…」


 クリストファーは更に呆れてしまった。


「確か…」


 フェリーの質問に、ローズは考えながら答える。


「確か、鳥腿肉のソテー…だったかしら??」


「ピッ!!!」


 フェリーは短く鳴いて、その場にドサリ倒れた。


「フェリーさん!!」


 オリヴィアは立ち上がり、フェリーに必死で呼びかける。


「フェリーさん!しっかりして下さいっフェリーさん!!」


「まさか鳥が食材にされたショックで…ショック死?」


 少年騎士ミシェルは可愛い顔をして物騒な想像をする。そんな言葉を聞いてオリヴィアは更に心配になってきた。



「フェリーさぁぁぁん!!」


「いや、でもパンケーキとかフレンチトーストって卵が材料だから今更なんじゃ……?」



 鶏肉がダメなら、卵だって産まれる前の鳥ではないのか。しかも散々食べている事にクリストファーは気になってしょうがない。



「待て」


 一言発すると、グレンはフェリーに耳を寄せた。


「寝息が聞こえる、多分寝てる」


「スーッスーッ」


 フェリーから規則正しい寝息が聞こえてきた。


「やっぱり、お腹一杯になって寝てますわ!このデブ鳥!」


「自由だな……」




 結局フェリクスは、晩御飯前に昼寝から目覚めて、晩御飯はきっちり食べた。

 メインの鶏肉以外。


 魚は食べるが、鳥以外でも肉は基本食べないらしい。


 ◇


 果物やパンなどを入れる籠にクッションを入れて、それをフェリクスの寝床にしてあげた。

 たとえ太っていても、フェリクスにとってその籠は充分な広さだった。その籠を寝台の脇に置いてあるサイドテーブルの上に乗せ、そこからフェリクスが話しかけてきた。



「ねぇ、オリヴィア」


 オリヴィアは寝台に腰掛けながらフェリクスの言葉に耳を傾ける。


「羽を使いこなせない聖女なんて見た事ないって言ったけど、実際祝福の羽を授ける事が出来た聖女なんてあまりいないんだよ」


「…そうなのですか?」


「そうだよ。前の聖女も羽があったなんて誰も言ってないでしょ?前回の聖女は僕が会いに行く事すら出来なかったんだ」


「確かに、先代聖女様は私が産まれる前に亡くなられていますが、羽の話なんて聞いたことなかったです」



「オリヴィアはそれくらい素質がある、凄い聖女だから、きっとそのうち羽を使いこなせる様になるよっ。頑張ろうね」


「フェリーさん…ありがとうございますっ!」



 フェリクスの言葉を聞き、安心してとても心穏やかになれた。今夜もぐっすり眠れそうだ。

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