第11話 水希と共に歩むために

一日しか経っていないのにすでに7000PVを超えていました。


どうか、この物語が誰かの心に少しでも届きますように………



前書きを読んでいただきありがとうございます!



では本編をどうぞ!



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俺が、退院して1週間が経つ。


家族が、俺が生活しやすくなるために家の中を改築してくれ、廊下やトイレ、玄関などあらゆるところに手すりをつけてくれたり、少しの段差もスロープの形で埋めてくれたり、とバリアフリーを奨めてくれた。



そのおかげもあって、俺はなんとか、みんなの手を借りつつであるが、不自由なく生活することができている。


特に、朝から水希が家に来てくれ、仕事と学校で両親と妹が居ない時は俺の介助をしてくれている。



ーーなんでも、あの事故の後俺がいつ目を覚ましてもいいように、水希の両親が俺の家の隣に引っ越すことにしたらしく、いつの間にかお隣さんになっていた………


母さんも水希にならと合鍵を渡し、実質家族みたいな感じになっている。ーーー




そんなこんなで、1週間過ごしていたわけだが、しっかりとリハビリにも勤しんでいる。


最近、ようやく自分の力だけで車椅子に乗ることができるようになり、それを家族や水希と喜びを分かち合ったところだ。






そして、今日から例の新たな挑戦が始まる。




〜遡ること2時間前〜


いつものように水希の手を借りつつ、上半身を動かすリハビリをしていた時、病院から電話がきた。


「1週間ぶりだね。その後身体はどうかな?」


入院中ずっと俺の面倒を見てくれていた医者の声だった。


「そうですね、この前ようやく自力で車椅子に移ることができるようになりましたよ。」


「そうかそうか!それは良かった。本当に君の回復力には驚かされてばかりだね。」


「……ありがとうございます。

それで、電話してきたのってこれを聞くためですか?」



「あー、とここまではあくまで個人的な話さ。本題はこれからだよ。」


そう言うと、先程までのどこかおちゃらけな雰囲気がなくなり、一人の医者として話始める。


「前に言っていた、最新式の義足覚えてる?」


「……えーと、あの試験段階っていう」


「そうそう。それのね使用許可がでたから、よかったらこれから試してみないか?」


思ってもみなかった提案に俺は即答する。


「行きます。」



ーーーーー


というわけで、電話を貰った俺は、ちょうど仕事が休みだった和樹さんの車で再び病院に向かっているのだった。



「そういえば、うちもだけど、和樹さんの家の車も車椅子対応型のやつなんですね。」


車で移動中ふと、思ったことを和樹さんになげかける。


「まぁ、これは龍星くんのお父さん、健さんと相談してこうしたんだよ。」


「父と相談?」


予想外のことに驚き、俺は思わずそう言う。


「そうそう。こうして、龍星くんが目覚めた時、絶対に君に不自由な思いはさせないって。だから、水希と私たちの家も可能な限りバリアフリーにしているよ。」


なんでもないように和樹は言う。


「………俺なんかの……ために……」


何気なくでた言葉に、和樹は鋭くミラー越しにこちらを見る。


「龍星くん、君は自分のことを軽く見すぎだ。少なくとも、私たち家族は君にできることなら何でもするくらいの気持ちを持っているんだよ。こんな些細なことなんて気に止めれないくらいね。

だから、どうか水希を幸せにするんならまず自分が幸せになる努力をしなさい。

幸せじゃない人に他人を幸せにすることなんてできはしないのだから。」



それは、お説教なんかではなく、

ただ俺に向かって必要なメッセージを送るようにそう言った。



(あぁ、まだ俺は自分のことが見えてないのかな。)と心で思いながら、


「はい。水希の隣に立つために、自分が幸せと思えるように、頑張ります。」


その言葉を聞き、水希と和樹さんは満足そうに笑みを浮かべながら頷く。



そうしていると…………病院に着いた。


受付に向かうと、看護師の女性が俺たちのことを待っていたかのように、


「お待ちしていました。どうぞこちらに、」


と言うと、入院中幾度となく訪れたリハビリするための部屋に連れられた。



そこで待っていたのは、担当医の先生、香川さん、そして馴染みのない女性だった。



その女性が、俺たちが入ってくると同時に


「君が、九条龍星くんだね。

私は八乙女 幸(やおとめ さち)と言います。国の研究所の研究員をしてます。

よろしくね。」


と、緑の髪が特徴できっちりとした目に整った顔立ちをした、美人な女性が言う。


すると、香川さんと医者の先生もこちらに挨拶をしてくれたので、俺も


「よろしくお願いします。」


と軽く返す。後ろに立つ水希と和樹さんも順番に会釈をすると、



八乙女さんが本題を切り出す。

「では、早速で悪いが義足をつけてもらおうか。」

と言い、部屋の隅に置かれていた成人女性くらいある金属のケースを開け始める。



開けながら、八乙女さんは説明を続ける。


「この義足はこれまでのタイプとは全く別物でね。たとえ、脊椎がやられた人でも再び歩けるようにするために発明されたものなんだ。」


そう言うと、細かな機械がいくつも巡らせている、義足をケースから取り出す。


「この義足はね、まだ生きている神経を使って、足を動かすものなんだ。

九条くんの場合、上半身を司る部分の脊椎がほぼ無事みたいなので、それを利用して動かせるように調整した。」


淡々とした説明に俺はどうにか頷く。


水希と和樹さんは何を言っているのかさっぱりのようで、ただ黙って聞いていた。


そんな俺に、八乙女さんは鋭い視線を向けながら、


「……九条龍星くん、君は再び歩きたいか」


それはまるで、試されているような感覚だった。


俺はその問に真っ直ぐに答える。

「はい。もう一度立って自分の足で歩きたい。」


その返事に、八乙女さんは頷く。

「さっきも言ったが、これは別の神経を利用して動かすものだ。つまり、本来人間が用途が異なる神経を使って全く別の部位に信号を送るということだ。」


状況が読めない俺は呆然としていると、


八乙女さんは続ける。

「簡単に言えば、1つの神経の負荷が倍以上になるということだ。

それは、想像を絶する感覚を有する。」



「ということは、、、。」



「あぁ、おそらく、この義足を装着して、動かそうと意識するだけで、今までに味わったことのないくらい強い衝撃、つまり痛みが君を襲うだろう。」


それを聞いた和樹さんは

「龍星、それなら、別にやらなくてもいいだろ。君はこれ以上痛みを味わうことなんてないよ。」


と、必死に俺をとめる。

水希はただ、俺の口から言葉が発するのを必死で我慢しているようだった。


「……………俺は、もう一度歩きたい。

そうじゃないと、俺は自分を認めることができない気がする。

それに、俺は水希と誓いました。必ず幸せになると。

そのために俺は…………………







やります。」


それを聞いた水希は歯を食いしばり、


「私は、龍星くんの意思を尊重します。

あなたが選んだ道を私も歩みたいから。」



その言葉を聞き俺は思わず頬を緩める。



それを聞いた和樹さんも、君たちがそう言うなら、と賛成してくれた。



八乙女さんはそれを聞き、


「とても、強く素晴らしい言葉だ。


その言葉に応えて、断言する。


この苦しみを1ヶ月耐えたら、君は再び自分の足で地を立ち、自分の意思で歩めると。




では、始めるぞ。」



そうして、ここから本当の地獄が始まったのである…………


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


いかがでしたか?


次回で『復帰に向けて』が終わりになる予定です。


本当にみんな、龍星のことが好きなんですね。


と書いていながら思ってしまう作者でした。



面白い!続きが気になる!と思ってくれた方は、応援、フォロー、☆☆☆等々よろしくお願いします!


とても、素敵なコメントも沢山頂きました。ぜひ、この物語を読んでのあなたの感想を教えて下さると、とても嬉しいです。



では、次回お楽しみに!

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